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Vol.5.34 料理はなんとでもなる。

実家を出ることが決まって、料理はちゃんとできるかと何気なくボロった際に母がこう言った。

「料理はなんとでもなるから大丈夫」

私の母は専業主婦で、自炊が中心の食卓だった。

私が実家暮らしの社会人になっても毎日早起きしてお弁当を作ってくれた。

年末になると台所がたちまちお節の食材で占領される。

昔に比べて具材は減ってきてはいるが、わざわざ戸棚から重箱を出しては、手間のかかる黒豆やカタクチイワシの田作りなどを煮込んでいる。

それを今でもやっているから、大した人である。


そんな料理上手の母から教わった料理はというと、

野菜炒め
肉じゃが
唐揚げ
きんぴらごぼう
ほうれん草のおひたし

このぐらいだろうか。

あとは料理本片手に頑張るしかないと覚悟を決めて、夏真っ盛りの最中にキャリーケースを引きずりながら実家を後にした。


さて、実家を出て働きながら食事を作るというのは想像を超える壁だった。

まず、仕事を終えてクタクタの体で料理をするのが億劫。
そんな中、クックドゥーなどの調味料シリーズには大いに助けられた。

あれがあると、味付けの心配がないから!(もはや確定演出)

それから、スーパーへ買い物に行く日を週一にするなどの工夫をした。

作り置きおかずという技も覚えるようになり、働きながら自炊をするという生活に少しずつなれていった。

実家で少し料理をしていたことが功を奏したのか、新しいレシピにも挑戦することもできるようになった。

職場にはお弁当を持って行っていたので、お弁当のおかず作りも兼用していた。

自炊をするようになって10年は経つが、料理のレパートリーはそんなに増えていない。

大体は生姜焼きなどの野菜炒め、親子丼や副菜の作り置きと簡単なものだ。

もう少し手の込んだ料理を作らないとダメかなと思うと、母の言葉を思い出す。


「料理はなんとでもなるから大丈夫」

お腹がいっぱいになるなら野菜炒めでいいし、調味料を使えばいい。

なんならレトルト食品やスーパーのお惣菜を買ってもいい。

100点じゃなくて、及第点を取れていればそれでいい。


いつも自炊しているとはいっても、私はひとりで外食するのが苦手なだけで、時折りコンビニで済ませることもある。

私の料理に対する意気込みは、「今の自分にできる限りの料理スキルで栄養をとること」こんなものである。

手を抜いていると思われそうな料理のレパートリーでも、これはその人の料理に対するモチベ次第なんだなと改めて実感した。


文句を言う相手がいないのが何よりの救いなのかもしれない。

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