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俺はエイリアン

衝撃を受けた。
それはまるで自分の血で殴り書かれたような、命の詩だった。
中学3年生の頃、今日もいつものようにゲームに明け暮れていた。
リビングに戻るのは与えられた飯を食べる時だけ。
午前4時でやっとスマホのASMRと共に床についた。
学校のため7時に起き、回復しきっていない脳を無理矢理起こしながら惰性で食パンを物足りなそうに食べ、支度を済ませ家を出る。
3時間というショートスリーパーさながらの睡眠時間では到底授業なんてのは耳に入ってこなかったので、寝ても注意をされない先生を見極めながら睡眠時間を賄った。
そんな堕落した生活だった。
就寝前にいつもYouTubeで音楽を聴くのが好きで、その当時はdaokoという女性のラッパーにどっぷりハマっていたのでとにかく聴いていた。
YouTubeでは動画を再生した際に下の欄におすすめの動画をいくつか割り振ってくれるのでいいアーティストがいないか嬉々としながら下へスワイプしていく、あるサムネイルが目に留まった。
青年が苦しそうな険しい表情で胸に手を当て、なにか叫んでいるようだった。
ひとには言えない何かを叫んでいるような。迷う余地もなかった。
そのサムネイルに吸い込まれるように僕は再生ボタンを押した。
イントロの海外の洒落た喫茶店で流れるようなトラックに耳も心も奪われた。
だがそんなのは束の間、あっという間に彼の色に染められる。
この哀愁に塗れているが節々に美しさが散りばめられているような感傷的なトラック。(是非皆さんに聞いてみてほしい)
まるで彼と二人でいるような、対話しているような状態に思わず身構えた。なんの身構えかは自分でも分からないが絶対に目を背けてはいけない、そう感じた。
彼のリリックを見るとそこには「もう一人の自分の人格」が綴られている。
人格障害やパニック障害の事だろうと分かった。
彼の悲痛な叫びが羅列されていてあまりにリアルで。
皮肉なことにこのポエトリーリーディングを聴き、活力が湧いた。自分は特に障害を持って生まれたわけでもいないし家もそれなりに裕福ではあった。恐らくGOMESSとは全く対極にいるし、恵まれている。
だがラップという形で自分のリアルを綴っている姿に感銘を受けた。HIPHOPはどうしてもアンダーグラウンドなイメージがあるがこういう詩的なジャンルもあるということを少しでも知っていただけたらなと思う。

GOMESS「LIFE」

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