CARAVAN TO DEAD HOME

 森田くん、来てくれてありがとう。
 消防士さんも、冷房つけたらありがとうってしてくれて、もういいよって合図してくれて、止めた後こっち来てくれてありがとう。危ないよって言ってくれて嬉しかった。その後お家呼んだら来てくれて、ありがとう。待たせてごめん。去り際、手を振ってくれてありがとう。

 森田くんは、沢山わたしのことを褒めてくれて、本当に嬉しかった。いっぱい聞いちゃってごめん!忘れないよう文章にして残すからって書いてたものは、忘れちゃった。でも、次に書く予定だったこと。「夜の海辺みたいな顔」って言ってくれたことは覚えてるよ。
 あなたが海の近くへ帰っていく時、今度行ってもいいか聞いたよね。いいけど、って注意点も話してくれたのに覚えてなくてごめんね。その時、あなたの後ろに海が広がっているのが見えて、すごく綺麗だった。わたしとあなたの顔が似ているように見えた。烏滸がましいから言わなかったけど、嬉しかった。

 家にいる時、何度か外見が父親みたいになってた。あなたが帰ってから居間に来た父親に、「本物と偽物の父みたい」って感じのことを言ったよ。森田くんが本物で、アレが偽物ね。それまでの時間は楽しくて安心して、すうっとした気持ちだったけど、すぐ終わっちゃった。母は不満をぶつけるためにわたしを責め(わたしに落ち度があるが)、父も「母が怒っているから」という理由で話も碌に聞かずにわたしを責めた。わたしの日常が戻ってきて、悲しい、失望、そんな気持ちになった。

 そこで、現実世界でのスマホの通知音に起こされた。現実の母からの連絡。本当に気分が下がるから、もうコレの相手に時間割くのをやめていきたい。地元の友達から年賀状が来てたって内容。友達のこと、森田くんたちのことを思うのに時間を使うようにする。

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