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その歌声は、まるでシャーマンか巫女のような ~ 女性歌手に魅せられて

ある女性歌手に感じる「何か」

国内外を問わず、男性歌手と女性歌手とを聞き比べた場合、男性には絶対に感じられない「何か」を感じさせる女性歌手がいます( 私が男性であるからそう感じるだけで、女性同士では違うのかもしれませんが・・) 。
それは、本人に自覚は無くても聴く相手に感じさせてしまう体質のようなもの、ズバリ言えば、シャーマンか、巫女のような「何か」を感じさせる女性歌手がいると思うのです。
その「何か」とは、歌唱力や人気度などの世間一般的な尺度を超えており、今でも「聴くに堪え、魂に響く」歌声を放っている女性歌手だけが持っているものです。

補足
シャーマンとは:
霊能力を使い、病気や人々の悩み、自然の問題を解消する能力を持つ人のことを指す。シャーマニズムという信仰の象徴のひとつとして古来より今日まで世界の広範囲の地域にそのような役割の男女が存在してきた。

巫女とは:
ここ日本では、体に神や神霊を憑依させ人々に神託を伝える「口寄せ」を行ったり、神社で祭祀の補助を行ったりする女性たちを「巫女」と称してきた。 (wikipedia より)

以上をまとめて、

シャーマンと巫女の共通点は:

神や精霊の声を聞き、人々の心と体、そして魂を癒やす存在になっている女性、ということになります。
さらに私個人の考えも加えるなら、場合によっては、その声、コトバによって、相手を滅ぼす呪術も操る女性でもあります。

さて、本題です、

その歌声と存在が、「シャーマンあるいは巫女」なのでは、と感じさせる女性歌手が国内外にいます。
以下に、2016年までに私が知りえた、きわめて私的な選択にすぎませんが、何人か紹介します;

1960年代:狂ったアメリカの叫び 

「女ロッカーの教祖」と言うべきなのでしょうか、ジャニス・ジョプリン: Janis Joplin の「サマータイム」を10代の頃にラジオで初めて聞いて、それまで聴いたことの無かった、叫び狂うような、その独特の声と歌い方に衝撃を受けました。

summer time 1969年当時の live 映像です。

https://www.youtube.com/watch?v=bn5TNqjuHiU  4分44秒 CM skip


1960 ~ 70年代: 昭和時代の日本 

この時期の日本のポップスやロックは、まだ私が幼かったのでほとんど知らないのですが、後年、特異な存在感で異彩を放っていた女性たちがいたことをメディアを通して知りました。

その代表的な歌手たちを、年代別に以下に紹介します;

私は風よ ~マキ

寺山修司作詞・田中未知作曲の「時には母のない子のように」でセンセーショナルなデビューをし、その後はロックバンドを組んで「私は風」などのヒット曲も出して活動しているカルメン・マキ

1969年当時のTV番組に歌う姿が映っています。

https://www.youtube.com/watch?v=Iyf3Qy9Ro5I  2分22秒


日本の恨み節 ~ケイコ

「圭子の夢は夜ひらく」を歌う藤圭子をTV画面を通して聴いたとき、魂の底にまでグッと響いてくる彼女独特の「節回しと声」に驚きました。その特異な魔力のDNAは、間違いなく、娘の宇多田ヒカルに受け継がれています。

二十歳ぐらい、日本歌謡大賞受賞パーティーでの映像です(後にのどを痛めて独特の声質が変わったらしいです)。

https://www.youtube.com/watch?v=NL-56s8r_IU  1分58秒


サングラスの囁き ~モリタ

いつもサングラスをして、実体が不明なままの故森田童子。1993年のテレビドラマ「高校教師」の主題歌として彼女の曲「ぼくたちの失敗」が挿入され、100万枚以上のリバイバル大ヒットとなっていました。どこか儚げで頼りない、どこか恥ずかしげで控えめ、でも、心のすき間にスッと入り込んで慰めてくれるような、そんな不思議なやさしさの声であり、歌詞でした。

この映像に映っているのは、彼女本人だったのでしょうか・・155万視聴

https://www.youtube.com/watch?v=iER-NZ7GoM8   3分20秒 CM skip


1980年代:二人のシャーマン:ケイトとニーナ

この時期は、ケイト・ブッシュ: Kate Bush が群を抜いて輝いていました。巷にあふれるヒットチャート入りの売れ筋シングルとは全く別次元、アルバムコンセプト最優先で、スタジオ内で緻密に作られた独創的な音楽性と、彼女の高音域の歌声の豊かさと繊細さ、見た目の華やかな美しさも手伝って、この世とは別の時空から降臨し、まさにシャーマンのような存在感がありました。

初期の代表曲のひとつ「嵐が丘: Wuthering Height」1978年制作の古い作りの映像ですが、2184万視聴です! 

https://www.youtube.com/watch?v=Fk-4lXLM34g   4分22秒


強烈なゲルマン魂の狂い咲きロッカー、ニーナ

たまたまCD店で耳にして一気に引き込まれたニーナ・ハーゲン: Nina Hagen。ドイツ語でパンクロック風にエキセントリックに歌ったり、オペラ歌手のように朗々と歌い上げたりと、彼女の強烈な個性と曲の多種多様な面白さで、80年代当時、例外的に印象に残った女性ロッカーです。

彼女の個性が強く出た一曲 naturträne 1979年ライブ映像 802万視聴、8,450件の海外コメント!

https://www.youtube.com/watch?v=9xi4O4RvlnQ  3分54秒 CM skip


そして、現代日本の巫女様 ~ミユキ

中島みゆきと言えば、今や、あらゆる世代の日本人の心に響く歌を創り続けてきた「偉大なる巫女様」といっても誇張ではない存在です。
そもそもこの人の曲を初めて聞いたのは、学生時代に友人の下宿で、「この曲すごいぞ」とレコードで聞かされた「世情」でした。二十歳そこそこで大都会に出てきてまだ何も為していない無力感に焦る若者の心に、この曲は魂の底にまでグサッとくる「凄み」があったのでした・・。

youtube では、著作権侵害になるからでしょう、オリジナル音源の映像は見つけられませんでした。その代わり、老若男女によるカバーが数多く投稿されていて選択に困りましたが、気負いなく素朴でありながらも印象深い「歌声」の動画を選びました;

魚高ミチルというミュージシャンの路上での演奏動画:

https://www.youtube.com/watch?v=Ilcz-HmAPhY  4分22秒


余談:90年代 ~ 令和の現在まで、音楽は変わったのか?

30年に及んだ平成の時代に幕が下ろされ、令和となった現在、音楽シーンは変わったか、と問われるなら、音楽そのものに大きな変化は感じられませんが、音楽の聴き方は大きく変化してしまったことは事実です。
スマホ普及による、動画と合わせた音楽配信という技術的な飛躍がありました。しかしながら、人間が作り出す音楽に、今のところ、歴史をひっくり返すような「音」が聞こえてくる気配は私にはありません。
でもそれは、私が昭和という、カセットテープ・MD・CD世代に属していたからかもしれません。もう新しいものをキャッチする感度が劣化してしまっているのが実情でしょう。


そうは言いながらも、2000年以降、印象に残る女性ミュージシャンが何人かいます。

2000年~2016年まで

弾き語りのジャズ ~チエ

一人目は、「歌うジャズピアニスト」の綾戸智恵。とにかくこの方は、弾き語りが抜群に面白いです。特に、スタンダード曲を日本語で歌ったときの面白さは他に比する者などいない、彼女の独壇場ではないでしょうか。弾き語りで同じ位の大御所を挙げるなら、矢野顕子か、清水ミチコとなるでしょう。

ほんとは、何かのTV番組で、日本語の曲を語るように面白く歌った映像が見たかったのですが、ここでは、J・ジョップリンの名曲 Summertime を、寺井尚子( violin )、 ケイコ・リー( vocal ) との即興競演ライブ 1999年映像で、会場での熱気と笑いが伝わってきます。

https://www.youtube.com/watch?v=LjAOfjmiKFw   9分47秒


ポーランドのグローバル歌姫 ~ ヨペック

日本ではあまり知られていませんが、ポーランド人のアンナ・マリア・ヨペック: Anna Maria Jopek。フュージョン系ギタリストのパット・メセニーとコラボしたアルバム「UPOJENIE」を聞いてとても良かったので、続いて彼女のオリジナルアルバム「ID」も聞き、すっかりファンになりました。

ロシア、ドイツという大国に隣接した地理環境ゆえに歴史的に過酷な運命に晒されてきたポーランドという風土だからでしょうか、重く深く、厳しく美しく、純粋で気高い歌声と、エキゾチックで彩り豊かな音楽が、このミュージシャンの不思議な魅力です。

著名なギタリスト Pat Metheny との共演ライブで彼の代表曲のひとつ 「Are you going with me?」、前半はヨペック、後半はパットのギター中心。海外投稿233万回再生 1,057件のコメント!

https://www.youtube.com/watch?v=0iSiPjbS8_Q  8分21秒

次は、彼女のオリジナル曲 Mozliwe を自分のバンドで演奏。彼女らしさはこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=KUyXchZt_mc  2分9秒 CM skip


地球からの使者 ~エンヤ

3人目は、世界的に超有名なアーティストであるエンヤ: Enya。母国アイルランドのケルト音楽の影響を受けた曲作りというだけでなく、これほど世界規模のメジャーでありながら、ちっともコマーシャリズムを感じさせない、純粋すぎるくらい高貴で深遠、しかも耳にすぐ馴染んでくる音作りには、敬服と感嘆と賞賛の思いです。

おびただしい数の動画が投稿されていますが、ここでは、再生回数が、なんと1億6千7百万回!! 映像がクリアで美しい only time を選びました。

https://www.youtube.com/watch?v=7wfYIMyS_dI  3分35秒 CM skip


奄美の伝説の歌手 ~ イクエ

NHK番組「新日本風土記」のオープニングテーマ曲として流れている「あはがり」。歌うのは朝崎郁恵さん。全く知らない歌手でしたが、番組内容よりもまずこの曲に、この声に、思わず耳を傾けてしまいます。体の中にDNAとしてある何かが呼び覚まされ、血が騒ぐような感じです。

ここでは、八丈島の美しい景色の映像とともにオリジナルが流される投稿を取り上げています;

https://www.youtube.com/watch?v=pjlBsdbThq8 4分57秒   CM skipできません 


最後に

こうして、時代の移り変わりとともに聞いてきた女性歌手たちすべてに共通して言えるのは、「巫女」、「シャーマン」に例える要素があるだけでなく、やはり、ひとりの女性であり人間である彼女たちの「魂の声」を聞いていた、ということだと思うのです。

もう一つ最後に、番外編

シャーマンや巫女ほどの強烈な存在感はなくても、どこか浮世離れした風情を漂わせながら独特の歌声の女性歌手を4人紹介します;

番外編 1:時代に関係なく佇むフランソワーズ

60~70年代は、映画音楽作曲家フランシス・レイが数々の主題曲を世界的にヒットさせていた時期で、女性歌手による「フレンチポップス」も何かと話題になっていました。そういう中で、一際目立っていたのが、フランソワーズ・アルディ: Francoise Hardy だったのではないでしょうか。
ただ、私が彼女の存在を知ったのは、80年代の学生時代、CD店にて、ジャケットの雰囲気に引かれて衝動買いした彼女のアルバム「時の旅人たちへ」でした。どこかアンニュイで静かに囁くような歌声と曲調に、「大人の女性」の色香を想像していたのでしょう・・・。

このアルバム曲がなぜかリンクできなかったので、初期の名曲「もう森へなんか行かない」を紹介します。この曲は、日本では、故山田太一の名作ドラマ「沿線地図」で使われていました。

https://www.youtube.com/watch?v=UTsOQ1Zor4Q  1分40秒


番外編 2:切なくも静かな祈り 手嶌葵

私が初めて彼女の存在を知ったのは、TV放映のドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で、効果的に流されていた曲「明日への手紙」によってでした。それは、静かに囁くような歌い方なので、ドラマの内容にピッタリで、純粋で切なく儚げな、静謐な祈りのように響いてくるのでした。

動画は、ドラマ仕立てのイメージ映像で、有村架純もちょっと出ているからでしょうか、1857万回視聴!

https://www.youtube.com/watch?v=ytQ3Hs3WjQ4  5分26秒


番外編 3:不思議な旋律と楽器 木村弓とナターシャ

映画「千と千尋の神隠し」の挿入曲「 いつも何度でも」は、今聞いても自然と耳を傾けてしまう、何か特別の趣きを持っている曲です。一度聞いただけでは意味がすぐにわからない謎のような詞と、琴だけの伴奏で歌われる不思議な旋律。木村弓という女性が、ライアーという琴を奏でながらひたむきに歌う姿が次の投稿動画に収めらています。

https://www.youtube.com/watch?v=pvUSry4BxbA  2分48秒


同じ画面で、ウクライナ出身で民族楽器バンドゥーラをかき鳴らして歌う女性ナターシャ・グジー: Nataliya Gudziyの映像: Itsumo Nando Demo (Always With Me) があり、こちらも素晴らしいので紹介します。

何と、325万回視聴、1,025件の国内・海外のコメント!

https://www.youtube.com/watch?v=xQJog0rs7Eg  3分26秒 CM skip