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おそらのうえでかくれんぼ。

幼かった君と一度お別れした時の事を、今でも思ってしまう。

「君まで僕を置いていってしまうのか。」
そんな気持ちを必死になって堪えながら
君の問いに答えた
青空と雲のコントラストに彩られた
夏空の日の事を・・・


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「おそらのうえって、なにがあるのかな?」

君はベットの上でそう言ってたね。



「わたあめがいっぱいあるから
おなかいっぱいたべられるかな。」

うん、きっといっぱい食べれるよ。
ここで食べられなかった分、
思い切り食べておいで。


「オレンジ、まんまるのオレンジだ。
くらくなったらにげちゃうけど
おそらにいったらつかまえられるよね。」

うん、逃げちゃうかもしれないけど、あんまり逃げちゃわないように
お願いしておくね。


「まっくらになっちゃった。
キラキラさんっておそらにいるの?
ともだちになれるかな。」

キラキラさんは恥ずかしがり屋さんだから
あまりお空の上から出てきてくれないけど
君はやさしいからきっとお友だちになれるよ。」


「もちつきのうさぎさん。
きょうはきてくれたんだ。
いっしょにぴょんぴょんしたいな。」

きっといっしょにぴょんぴょんしてくれるよ。
君に会いにきてくれたんだから。



「おそらにいったら、ママに会える?」

・・・もちろんさ。
でもママは泣いちゃうかもしれないかな。


「パパ・・・ボクね・・・
パパもいないとイヤ。」


パパは・・・

今すぐ君とお出かけ出来ないんだ。
少しお留守番しなくちゃいけないんだ・・・ 


「イヤだ。パパもいっしょ!」

・・・そうだ。
パパとかくれんぼしようか。
お空の上でゆっくり
イーチ、ニー、サーンって数えてたら
すぐパパが見つかるかもしれないよ。
ママといっしょにつかまえてごらん。


「・・・パパ・・・やくそく。
ゆびきりげんまん。」

・・・約束するよ、
いつかぜったい君に見つかるまで。

ゆーびきーりげーんまーん
ウソついたら・・・



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君があの空に遊びにいってしまってから
どれだけ多くの時間が経っただろう。


わたあめをいっぱい食べれただろうか。

オレンジ色の夕日を捕まえられただろうか。

星空と友達になれただろうか。

月でうさぎと遊べただろうか。


私は今、
あの時の君と同じベットにいる。

きっと君はもう
数えるのが飽きたんだろうな。

妻もきっと呆れているだろう。
いい加減見つかってあげなさい、と。


約束、そろそろ守りにいかなきゃな。

目が見えなくなってきた。
随分長い間隠れてしまった・・・


君のいる空まで出かけるか・・・



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「パパ!みーつけた!」

「あんなに隠れてたのに、見つかっちゃったな。」



「ねえねえパパ、こんどはなにしてあそぶ?」



※この創作はフィクションです。



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