見出し画像

VRChat用に3Dモデルを配布・販売する際にやっておくと良いアレコレ

手塩にかけてBlenderやMayaなどで3Dモデルを作成…
Unityに入れて動作確認・マテリアルなどの設定作業…
そしてエクスポートパッケージし…リリース!!

これらの作業はとても辛く、大変です。
めっちゃ 大変です。

しかし、ひとたびミスが発生すると「正常に動かない~~!!」「誰かなんとかしてくれ~~!!」という悲鳴が飛び交い、(知らないところで)ショップとしての評判が落ち込むこともありえます。

ここではそんな悲しい事態を避けるために出来ることを紹介していこうと思います。


まえがき

決してマナー講師的なアレではありません。
あくまで今までサポートしてきた事例を参考に「こうした方が利用者側が分かりやすいのかな?」「ここはこの方が良いかな?」と思ったものを並べたような感じです。

また、内容はいきなり追加されることもあるかもしれません。
製品の販売前に参考程度に呼んで頂ければ幸いです。

共通編(アバター・服など問わず)

利用規約をつくろう

これくらいざっくりでもいいから…あった方がよい…

絶対にこれはやりましょう。

利用規約は販売(配布)者側から利用者にお願いできるルールになります。
「ルールを設けるつもりはないよ、だから好きに使っていいよ」とやるのであれば利用規約を作らなくても良いのですが、その場合

他人への嫌がらせ用アイテムとして利用されたり

改変の結果、凄まじい姿にされた状態で利用されたり

と、なんとなく「(制作側としては)面白くないな…??」と思いたくなるような使用方法をされた場合でも何も言えなくなります

「(これはやってもOKだと)書かれてないことはやらないようにしよう」より、「(禁止と)書かれてなければやっても大丈夫だよね」と、解釈されることのほうが世の中多いのです。

説明についてもっとシンプルにお伝えすると
やられたくないことはちゃんと利用規約に書いておけの一言に尽きます。
『書いてないけど実はやられたくなかった』ではなく、『嫌だから止めてくれ』としっかり書いておくのが大事です。
これを徹底するか否かでショップの評判にも関わってきます。

「作者の中にだけ存在する基準で文句を言われるより
明文化したルールで絞られる方が納得できます」

過去に「利用規約で禁止されていない使い方」をした利用者に対して「そういう使い方するなんて販売側に失礼じゃ…」と呟いた販売者が炎上してしまったことがあります。
売買契約を結んでいるので、ルールはしっかり前面に押し出しましょう。
「販売側の気持ちを汲み取って利用しなければならない」と利用者に思わせてしまうのは、強烈なマイナスイメージを付けることになります。

「いわゆる首挿げ替え改変とかも一時期話題になったね。
これも利用規約としてしっかり載せないと大変だよ」

幸い、現在では下記リンクのような「利用規約自動生成ツール」もあったりするので、こちらを利用すると見やすく分かりやすい利用規約が作れます。

商品一つ一つに利用規約を作るのは無理だ!更新もしんどい!!!
という場合は共通となる利用規約を作ると良いかもしれません。

ただし、利用規約を改定する際に注意するべき点として

利用規約の変更が利用者の利益に適合する場合

「利用者にとって損しか出ない変更はダメだよ」

利用規約の変更が、契約目的に反する内容ではなく、かつ変更内容の相当性や変更を行う可能性についての定めの有無、変更に関わる事情などに照らし合わせ、合理的である場合

「納得のいく形での変更じゃないとだめだよ」

という条件がある点には注意です。

どうしても変更したい場合は『XXXX年◯月△日以降に購入した場合、こちらの利用規約のもとご利用ください』という感じで分けて管理したりする方法もあるようです。

「管理する側も煩雑になるから、初めから厳し目に設定しておくのが良いよ」

「なんでこんな面倒な…」と思われるかもしれませんが、同人活動に近いものとはいえ、やっていることは商品を販売しているという行為なので法律に基づいてこういった活動を行う必要があります。

その他、利用規約は必ず購入する前
販売ページから閲覧できるようにする(あるいは無料ダウンロード枠としてダウンロードさせる)ことも念頭に置いておきましょう。

有料の製品にてまれに、販売ページ内に利用規約が見当たらず購入してZIPファイルを展開したら中に利用規約が入っていたという事があります。
これで利用者側にとって「これじゃ使いたくない…」という利用規約だった場合、不当な契約となるので要注意です。

「表現として過激になりやすい性的・暴力的表現の可否は
VRChat外で使用のため購入する時に確認されやすいようです」

商品の詳細はできるだけちゃんと書こう

こういうのもない時はない。本当にない。

「この商品はこういうもので、こんな感じの内容になっています」という記述はこれまたとっても大事です。
たまに「VRChat用のアクセサリーです」とだけ書いてあり、購入した結果としてすごいポリゴン数(20万ポリゴン)だったり、そこそこのメッシュ数(12個)ということもあったりします。

「ポリゴン数そのものは負荷としては~~」という意見もありますがここでは「そもそも商品内容の説明が一切されてない」というのが問題なので見逃して頂ければと思います。

「そんな人おらんやろ…と思われるかもしれませんが、たまにいらっしゃいます」

また、これはギミック系商品向けの諸注意ですが
デフォルトでギミックがオンなのかオフなのか』、そのうえで『EXメニューなどで切り替えないと機能しないのか』についてはしっかり明記しておくことをオススメします。

意外とここらへん、ちゃんと書いてない事もあったりします。
そして結果としてどうやって使うか分からないので使わない事も…。
商品を正しく使ってほしいのであれば、とりあえずでも説明書は作るのが良いです…ホント。

「説明書を作るのが面倒なのは分かる…けどね…」

また、アバターによって正常に動かない場合は、正常に動く(作者環境で確認できた)アバターを載せておくのもリスク回避のために良いかもしれません。
このアバターであれば正常に動く、というのが分かれば購入者側も『今はこのアバター使ってるから大丈夫かな?』と安心します。

使用しているテクスチャの「Streaming Mip maps」にチェックを入れよう

地味だけどチェック入れてないとエラーになるのです

こちらの設定は使用しているテクスチャ全てにおいてチェックを入れておきましょう。
チェックが入ってないとアップロード時に以下のようなエラーが出ます。

「このアバターに使われているテクスチャで
"Streaming MIp Maps"がオンになってないものがあるよ!」
というエラーですが…利用者側は『赤!』でパニックになるので…

具体的には以下のようなテクスチャ全てでチェックを入れる必要があります。

・普通のテクスチャ:お洋服とお肌とか…
・ノーマルマップ:法線をいじるテクスチャ…詳細は調べて…
・マットキャップ:テクスチャの上に更に光沢を出したりするためのもの…
・マスク用テクスチャ:エミッション用マスクとか、色々…

たまにシェーダーにサンプルとして付いてくる使用例を改変して使用している場合、思わぬテクスチャが使われている事もあるので要注意です!

MipMaps(ミップマップ)というのはざっくり言えば「距離に応じてテクスチャの解像度を変えます」という処理になります。
Unityの方でこの設定をすることで「遠ければ低画質」「近ければ高画質」で表示するようになるため、結果的に最適化に繋がるのです。

「4Kテクスチャな画像も、遠く離れればサイズが小さく…ありがたいね」

パッケージの内容は分かりやすくしよう

こういう並びだとインポート後が見やすい

これはどちらかというと購入者への配慮になります。
ぶっちゃけパッケージの内容は適当でもOKです。

が、インポートしたは良いものの、どこにインポートされたかが分からないという状態はこれまた利用者にとってマイナスイメージを植え付けかねません。

ここで作者名・サークル名とかでフォルダ分けを予め行っておくと「この中にデータがある」と分かりやすくなるので利用者も助かります。

ただし、Unity上ではGUIDというものでファイル・フォルダが管理されているため、製品ごとにプロジェクトを分けて作成→設定→出力するのは色々危険かもしれません(たぶん)。

Unityは多重起動している場合、プロジェクトからプロジェクトへとドラッグアンドドロップでデータを移行できるので、サークル名・作者名のフォルダだけでも移行したうえで作業すると良いかもしれません。

「場合によってはインポート後に『同じ作者のフォルダ(1)・(2)』とか
爆誕する恐れがあるので気をつけて…」

シェーダーは極力、製品パッケージとは分けよう

もちろん、利用規約が「再配布OK」のシェーダーじゃないとダメですよ?

アバターを購入した時に「どうして?」と思ったことも多いと思います。

「なぜ、URLからシェーダーを別途DLしなくてはいけないのか?」
「アバターのユニティパッケージに含めちゃえば楽なのに」

と。

これには様々な理由があります。

◯Boothのファイル容量上限

Boothに(配布・販売のために)置けるファイルの容量は1ファイルにつき1GB、ショップ全体の合計では10GBが上限となっております。

合計の容量はBOOTH Appsの容量アップサービスで月550円の課金により100GBまで増やすことは可能です。

「容量だけの問題というよりは更新時の管理の負担を軽減する策ですね」

シェーダーを商品毎に同梱しているとその分容量も増えてしまうため、可能な範囲で容量を減らすための策となります。

◯シェーダーを上書きしてしまう可能性がある

シェーダーは物によってはバージョンが都度更新されることがあり、更新された結果として新機能が実装されることが数多くあります。
が、シェーダーを商品パッケージに同梱した場合、操作がよく分からないユーザーの場合だと

誤って(製品に同梱されている)古いバージョンのシェーダーをインポート→別の製品が正常に表示されなくなる

という悲劇を生むことがあります。

同梱しないことにより「そもそも誤って上書きしにくいようにする」という配慮の一環…なのかもしれません(たぶん)。

「シェーダーが設定当時より新しい事が原因で正常に表示されない、
ということはあんまりないと思うので別々にすることをオススメするよ」

◯(単純に)使用しているシェーダーの利用規約上の関係

シェーダーも全てが再配布可能というわけではなく、中には再配布がNGなものがあったりします(特に有料のシェーダー)。
ですが再配布NGだけどこのシェーダーで設定しました!という製品も僅かにあり、そういう時のために『同梱はしないがこちらから取得できるので取得して欲しい』と指定しているケースもあります。

海外の方がBoothで出している製品だとPoiyomi Pro(有料)を指定しているケースがたまにあります。

「もちろん、再配布NGのシェーダーを同梱してしまうと規約違反だから、気をつけてね」

これらの理由により、シェーダーは大体商品パッケージとは別にURLを記載し、DLしてもらうようにお願いをしている状態です。
容量上限もそうですが、シェーダーによって色々あるので気をつけて準備を行いましょう。

FBXファイルの設定を変更しておこう

前述のテクスチャの「Streaming Mipmap」以外にも、製品としてリリースするにはこんなエラーへの対応が必要になります。

「アップロード予定のアバターに含まれているメッシュに
"Read/Write Enabled"にチェックがついてないものがあるよ」
「アップロード予定のアバターに含まれているメッシュに"BlendShape Normal"が"Calculate"になっている、または"Legacy BlendShape Normals"にチェックがついてないものがあるよ」

◯Read/Write Enabledのエラーについて…

赤枠にチェックを入れてApplyボタンを押せばOKです。

こちらのエラーは、VRCSDKが「FBXのデータを読み取ってこのアバターの性能を評価したいのに、読み取れない設定になってるからなんとかして~~!」というエラーになります。
性能上の問題はなくても、読み取れないので評価ができない=NGという流れですね。
なので画像の赤枠にチェックを入れてあげましょう。

◯BlendShape Normalのエラーについて…

赤枠のリストをクリックして"None"を選びましょう。
その後Applyボタンを押せばOKです。

こちらは「このままの設定にしておくとブレンドシェイプ(口の形などを変えたりするやつ)を動かした時に法線(影の作られ方を定めるもの)がUnity上で計算されてしまうせいでアバターの容量が増えてしまう、(それは困るので)なんとかしてくれないか?」というエラーになります。
この場合は"Calculate"をクリックして"None"などに変えてあげればOKです。

仮にVRChat以外の用途で使用するとして、"Calculate"のままの場合、シェイプキーに反応してUnity側で法線を自動で計算してしまうため、例えば"口が「あ」の形になった"だけにも関わらず、顔全体の影の作られ方が変わってしまうという、非常に不自然な挙動を見せることがあるため…よっぽどの事がない限りは"None"が推奨です。

「シェイプキーで形を変える系のアイテムを作った場合にもこの設定は”None”がいいよ」

販売する前にテストはしよう

ユニティパッケージ化してZIP圧縮も出来た、さあリリースしよう…の前に

新規プロジェクトを立ててインポートし、(着用して)アップロードする

などのテストは念のためやっておきましょう。
これを徹底すると少なくとも「なにやらエラーが出てきてアップロードが出来ない」系エラーは極限まで減らせます。
※いわゆるおま環以外でのトラブルはほぼ無くなります

複数製品を出している場合は、別の製品も一緒にインポートした際に想定の場所にインポートされるかどうか確認しておくのも大事です。

選択肢は多いほうが良い

「ハイクォリティ」「ローポリ」「通常版」などなど…
カラーバリエーションなども予め用意しておくと良いです

VRChatをやっているとどうしても周囲が「改変済み」「オリジナルテクスチャ」で色々やっている方が多いのでうっかりしがちですが、『製作者が複数パターン用意する』のは、ユーザー側にとってはありがたいのです…!

お洋服編

製作者はどうやって着せたかを書こう

「Unityで手動入れ子で動作確認しました」でも良いので書こう、マジで。

結構重要です。

昨今様々なアバターへの衣装着用のためのツールがリリースされていますが、ユーザー側が全部のツールに精通しているとは限りません。
製作者がどのツールを使ったか(使ったら問題なかったか)は可能な限り書いておくと良いです。

素体貫通のアレコレは販売ページにあった方が良い

「たまにあるのです。胸シェイプ0前提であることを
販売ページではなく購入ファイルの中にあるReadmeに書いてあることが。」

胸揺れのあるアバターにおいて必ず突っかかってくる問題、洋服の素体貫通。

対策しようとするとメッシュやウェイト塗り…をとにかく気の遠くなるレベルでこなさないといけません。
ので、「胸(や胴体などの貫通対策)シェイプの値は○○でご利用ください!」と衣装作者側で指定しているケースが稀にあります。

この「胸シェイプは○○でご利用ください!」は、購入前に確認できるようにしておくと良いです。

気に入った衣装を購入したフレンドが何回どれだけ設定をやっても胸揺れで素体の胸が突き出てしまうため確認したところ、販売ページではなく、Readmeに「貫通が気になる場合は素体の胸シェイプキーを0にしてご利用ください」と書いてあるケースがありました。(気になるを通り越してガッツリ貫通してましたが)
状況に応じて胸のシェイプキーをアニメーションで都度コントロールすればいいとはいえ、予め記載しておくとお互いに安心です。

「作ってる側にとっては面倒な告知ですが、
買う側はマジで一生のお願いレベルのお買い物だったりなので気をつけましょう」

商品のサムネイルは気をつけよう

改変しているのであれば
何を使って改変しているのか明記しておくのが良い。

無料で配布時はともかくとして、有料で販売する際は可能な限り「対応アバターのデフォルト状態に着用するとこんな見た目になります」というタイプのサムネイルも用意しておくと良いです。
※意外とこれ、やってるショップは少ないです

もし、デフォルトのアバターがない場合(そんなことないと思いますが)は「こちらのアイテムを使用させて頂きました」とクレジットとして書いておくと丁寧かもです。
使ったアイテムを販売している作者も相互で宣伝しあえて幸せ。

「この衣装を購入してもこの髪型とか付いてこなかったよ…!? この人のショップにもなかったし…どこで売ってるのかな…!?」と困っている人がたまにいるのです…

「ガッツリ自分流に改変したアバターでのサムネは
実装例として置いておくのがいいよ」

番外編

期間限定の人気製品はどうして限定解除して普通に販売されたりしないんですか?

以下のサイトをご確認ください。

分かりやすく言えば

オーナー「期間限定!○○販売中!!」
客「(期間限定か…今月厳しいんだけど…でも二度と買えないだろうし…)買います!!」

オーナー「○○!!期間限定やめました!!!」
客「あの時慌てて買った意味ねぇじゃん…(怒)」

と、このように「期間限定とすることで希少性をアピールしていたにも関わらず」「実はそんなことはない」という誤認を起こすことは法律違反になります。

「有利誤認」「優良誤認」というワードで検索すると過去に色々なソシャゲなどでも問題になっていた模様。
第一人者にならないように気をつけましょうね…

「法律が相手ではどうしようもないので欲しい期間限定っ子は買うしかないね」

特定のファン向けに限定販売って出来ないんですか?

BOOTH Appsの中にシークレット公開という機能があり、これまた月550円を支払うことで「URL」と「合言葉」の2つを組み合わせ、どちらも正しかった場合に販売ページの表示、及び購入が行なえる機能が使えます。

通常のショップページには表示されないので安心!!
ただし、URLや合言葉の公開の仕方には気をつけてね!(流出するとどうしようもないからね)

「古き良き個人サイトの裏ページ入り口的な何かを感じますね…懐かしい…」

とっても熱心なファン層、特定個人向けにモノをリリースする際などに利用できそうですね。

なんかウチの製品を転売(配布)しているショップがあるよう…な…?

製品の利用規約を確認し、違反しているようであればBooth(Pixiv)側に問い合わせ(通報)をして一旦待ちましょう。
注意喚起は必要かもしれませんが、全体公開する前に近しい人にまずは伝えたりしましょう。

ただし、作者にしろその情報を伝えられた近しい人にしろ、以下のようにツイートで全体公開するのはオススメしません

注意喚起としてはいいかもしれないけど
悪いことやってる側としては「反応してる反応してるwwww」と
面白がられるだけなので、冷静にひっそりと対応しましょう。

「ふざけんなよテメー!!!」と規約違反系のショップに物申したくなる(意思表明したくなる)気持ちは分かりますが、冷静に粛々と対応しておくのが無難です。

「」

あとがき

クリエイターとして初めて3Dモデルを作り、リリースするのは良いもののリリースするにあたって何をすれば良いのか(何をやっておいたほうがいいのか)分からない!
という声をたまに聞くためこちらのnoteは作られました。

少しでもクリエイターの皆様の作品の配布・販売の手助けになれれば幸いです。