『ポジショニング戦略』アル・ライズ、ジャック・トラウト:理想を語る前に現実を直視しろ
企業であれ、個人であれ。
人にこう思って欲しい。こんな風に思われたい。
そんなことを企画したり、考えたりする事があると思う。
ポジショニング。
企業や自分自身がどこにいるのか?どこにいたいのか?
シンプルにこう考えることができる概念だ。
今回紹介する『ポジショニング戦略』は
アル・ライズとジャック・トラウトによる古典的名著であり、
1972年に発表されたとは思えないほど、
現在の私達のビジネスにおいても示唆を与えてくれる。
筆者は本書内で
ポジショニングは逆転の発想だと記している。
自社はどんな企業か、ではなく消費者の頭の中で自社がどんなポジションを築いているかを自問して欲しい。という一文の色あせない鋭さ。
自分たちがこうありたいという理想像を語る前に
ターゲットとなる人々は
自分たちのことをどう思っているのかを起点にしないと、
的はずれな施策を展開してしまう可能性が非常に高い。
そして人々の頭の中で、
自分たちが理想とすべきポジションをすでに他の企業が占めていた場合、それを覆すことは非常に困難だ。
一度刷り込まれた情報は中々覆ることはない(これは『FACT FULNESS』の中で語られていること近しいかもしれない)。
では新興企業や二番手企業はどうすればいいのか?
まだ人々の頭を占めていない別のポジションを発見し、
ライバルに先んじて一刻も早くそのポジションを取りに行く必要がある。
例えばiPhoneを例に考えてみよう。
発売当時、携帯電話というポジションもインターネットに接続できるハードというポジションも
別の企業や商品が占めていたと思う。
そのときにAppleは「インターネットに接続できる携帯電話」というポジションを獲得できる商品を開発し、どの企業よりも早くそれを広めていった。
もちろんAppleの優れた技術やデザイン力は言うに及ばずだが、
人々の顕在化していないポジションを、顕在化させた素晴らしい事例であると思う。
情報が爆発的に増加し、
人間はもはや情報を自己処理することを諦め、
レコメンドされた物の中からなんとなく選択をするようになっている。
それは、ますますポジションを獲得することが困難な時代になっていることを意味する。
そんな時代だからこそ、
人々の頭を占めているものがなんなのかをクリアに見つめ、
自分たちのサービスや商品が
どのポジションを獲得することができるのかを考える。
あるいはその可能性が高いものを開発する。
そしてライバルに負けることなく
真っ先にそのポジションを取りに行く。
今、日本でホットなトピックであるペイメント戦争もまさに同じ構図であるうと思う。
人の頭の中のポジションをどのように獲得するのか?
その答えが本書にはある。
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