同人ゲーム版ひぐらしのなく頃に に関する自分なりの小さな補足



・最初に


ひぐらしのなく頃に業がアニメ開始され、それなりにひぐらしのなく頃にが注目を浴びてる今そろそろひぐらしのなく頃に について少し語ってみようと思う。竜騎士07は何をやりたかったのかなどを。


 最初にお断りを

・盛大なネタバレがある

・主に同人ゲーム版について書かれている

・ゲームの構造などメタ的な話である

・筆者の主観的推測、解釈である


これらを理解した上で読んでほしい


・まず前提としてひぐらしはミステリーなのか


 ミステリー=謎解きと思っている人にはありえないだろうけど当時ミステリーは広義の意味で結構ふわっと使われていた。

 例えば解かれない謎や不思議現象、ホラー系までミステリーをうたっているのがゴロゴロあった。


つまり作品として

「公式の商品がミステリー名乗ってるんだから同人ゲームのワシもミステリー名乗っていいよなぁ?」

という理屈なんだと思う。

ミステリーといってもミステリー成分は多くがミスリードと大義名分のためではあったが。


なので”ひぐらしはミステリーを名乗っていい”と一応いえる、本当に一応ではあるが…。


・アンチミステリーとしてのひぐらし


 そうはいってもひぐらしは、やっちゃいけない事をふんだんにやらかして いる。

 国家的陰謀、未知の病気。これらは普通の人が思うミステリーに致命的に あわない。

 むしろ真正面からアンチミステリーと言い切っていいだろう。


 だが少し待って欲しい。

 じゃあ竜騎士07は何をやりたかったのか。

ここからは推測になるがまずアンチミステリーは、大雑把に二種類ある。


①解決編でジャン!アンチミステリーでしたと明かす。 論外

②最初からアンチミステリーを名乗りその構造で楽しませる。       ディープなミステリーオタ専用

 ひぐらしは①に見えるかもしれないが実はアンチミステリーとしての伏線も一応匂わせてはある。

鬼隠し編では圭一の症状は何かの薬品ではないかそこそこネットで言われていたし

祟り殺し編までよんだガチの本格推理読者ならこれはおそらく本格推理ではないとも読める内容になっている。


②は当然ちがう。では何か。


・竜騎士07がやりたかったこと


アンチミステリーやメタフィクション系など読んだ事ある人ならわかるかもしれないけどこう思った事はないだろうか。

「それがどうした。自分が読みたいのは普通の物語だ」と。


読者の予想を裏切るだけでドヤ顔する作品やアンチミステリーの構造を売りにした身内むけのみの作品。 

竜騎士07はそれらから一歩踏み出して新しい物を作ろうとしたのではないか。

その答えが、アンチミステリーでありながらB級読み物として耐えうる物語だ。

鷹野&東京が出てきたときの肩透かし感はホラー物の正体を知った肩透かし感でもあるし、祭囃子編など完全にB級物のノリといっていい。


つまりはアンチミステリーに対するアンチでもあるわけだ。


 しかしここまで読んだ読者はこう思ったのではないだろうか。

「結局ひぐらしもそれ以前のアンチミステリーと同じで予想を裏切って  ドヤってるだけじゃないのか」と。


 それは少し違う。

ひぐらしを理解するにはもう一つの仕掛けに気づかなければ片手おちなのだ。


・もう一つの仕掛け


それはひぐらしがノベルゲームであるという事が実は重要だったのだ。

ひぐらしはノベルゲームだ。

そしてノベルゲーム的要素を羅列してみると

①ノベルゲームには本格推理はほぼない、つまり需要がないともとれる

②ノベルゲームにはバッドエンドで終わるものよりハッピーエンドで終わる ものがずっと多い

③ノベルゲームはB級といってもよい


こうして見るとひぐらしはノベルゲーム的にストライクど真ん中なのだ、 ミステリーとしては大暴投でも。


つまり読者の期待が

ミステリー→アンチミステリーで(正→負)

になると同時に

ノベルゲーム的需要では

本格推理&悲劇エンド→ハッピーエンド(負→正)

と逆転し読者を導く二重構造になっているわけだ。


物語への期待とジャンルへの需要というこの二つは大きく分類すると期待だが、やはりこの二者は別物だ。

しかしそれらが同時にまざったら?区別できるだろうか。


この二つのの仕掛けこそが作者のひとりよがりでなくするための     仕掛けだ。

まぁこれらの仕掛けでもハードランディングがソフトランディングにかろうじて変わるくらいだろうけど。


 なぜここまで工夫されていても、ああも騒ぎになったのか。

 これらの工夫でも補えない誤算が生まれたからだ。


・ ひぐらしはノベルゲーム


ひぐらしは同人ノベルゲームだ。

ノベルゲームはまずマイナージャンルといえる。そしてそのマイナージャンルのさらに同人ゲームである。


おそらく想定された購買層は生粋のノベルゲーマーだとされていたのだろう。

そう考えるのは自然だ。

しかし大きな誤算が生まれた。あまりにもブレイクしすぎたのだ。

ノベルゲームを普段やらないノベルゲームの文脈をわからない人や

ガチガチの本格推理読者が流れ込んできてしまったのだろう。


私にはひぐらしはミステリーより、ノベルゲーム的構造や文脈を生かした

ノベルゲームであることに、より比重をおいた作品に見える


ノベルゲームをやらない人や本格推理読者はターゲットに入っていないのだ。

当然彼らはカテゴリーエラーなので大声をあげることになる。ご愁傷様だ。


 あえて言うとひぐらしは、ノベルゲーマーによるノベルゲーマーのためのノベルゲームだ。


 ノベルゲームがマイナージャンルなのはきわものが多いからだ。実験場といってもいい。

しかしその実験場で数多くの怪作、名作が生まれてきた。

それらは物語だけでも、メタ的構造だけでもありえなかった。

両方を兼ね備えていたから、その驚きと面白さによってユーザーが根付いていったのだ。

ひぐらしはまさにその通り、ノベルゲームの文脈で生まれた作品だ。


 アニメや漫画はどうなのかって?

申し訳ないがそちらには手をだしてないのでわかりかねる。

ただ言える事はノベルゲーム的スピリッツでノベルゲームというジャンルに合わせた仕掛け。

これらは必須というよりは作品を軟着陸させて受け入れさす目的のためのものだろうという事。

竜騎士07がそれに成功したと思ったからメディア展開に合意したともとれる、としか言えない。


・最後に


最後になるがここまで色々と説明してきたことは、あまり意味がない。

なぜならひぐらしのなく頃には、こんな説明がなくとも多くの人に物語として受け入れられているからだ。


はっきり言えばひぐらしは名作というより怪作よりで、もっと言えば   キワモノだ。

それでもこれだけ受け入れられているのは、ひとえに竜騎士07のやりたいことが成功したからだ。


 誰もやらなかった事をやり受け入れさせる。作り手として本当にうらやましく思う。

 

それでもここまで書いたのは、当時純粋なノベルゲーマーで

ひぐらしの謎解きにがっかりしながら、同時になぜかホッとしたような

不思議な二律背反のような感情におそわれ、うまく言語化できなかった

自分のような人に向けてである。




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