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スペリオールズ・ホビー

 駅裏の廃ビルの中。
 埃臭さに顔を顰める。
 この暗い屋内に、生きているモノは俺以外いない。
 だが確実に”いる”はずだ。その証拠に、さっきからうるさいくらいに心臓が早鐘を打っている。
「センサーが反応してるって事は、そろそろか」
 心臓の鼓動がBPM180を超える。俺は懐から能面を取り出し被った。
 途端、能面越しの視界に流れる無数のコメント。

※おつー。
※おつです。
※今夜は屋内マップかな
※目指せトップスコア
※早くリタイアすんの見てーな

「うるせえオーディエンスどもが」
 コメントの嵐を視界の隅に弾き、意識を集中させる。
 前方右上5m。
 ”いた”。
 そいつが実体を持つ瞬間に、俺はチェストホルスターから独鈷杵を取り出し目標へ投擲した。
 それは目標……ハイヒールを履いた足の集合体みたいな奴に突き刺さる。ウニのトゲ一本ずつが女性の生足になったようなグロテスクの塊は、独鈷杵から注入された呪法が効いたのかコンクリの床をゴロゴロのたうち回る。

※おっ当たりー
※タイミング良すぎ。チートかよ
※諢帙@縺ヲ繧
※がんばえー

 自分勝手なコメントを無視し、今度は三鈷杵を構えて敵へ向かう。
 じたばたと暴れる足の群れを避け、倒錯的なフェチズムと悪意をこねた肉塊へ三鈷杵を思い切り突き立てた。
 強力な真言の呪法により、肉塊はボロボロと崩れる。後に残ったのは一足の汚れたハイヒールだった。
 視界の端に表示される【Clear】の文字。それと共に流れるコメント。

※おめー
※あーあクリアしちゃった
※RTAかよ強すぎ
※莉願。後¥縺ュ

「うるせえ上から目線共が」
 悪態とともに能面を外す。
 
 が。

 未だ早鐘を止めない俺の心臓。

 ひやりとする感覚と共に、背中に何かが触った。

「ッ!?」
 咄嗟に飛び退り、能面を被り直す。
 眼前には包帯に包まれた2mを超える人影があった。
 人影が唇を歪める。
「諢帙@縺ヲ繧」

※なにあれ
※マジのチーター?
※ヤバくね

【続く】


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