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平和の祭典(オリ・パラ)の美名に隠れていませんか?

戦前・戦後の衆議院議員に斎藤隆夫という人がいる。今は知る人ぞ知る存在となっているが、彼は反軍演説と呼ばれる歴史に残る演説を行った。

これは、昭和15年2月2日に帝国議会衆議院本会議で行ったもの。日付を見ればお分かりのように、当時は日中戦争が泥沼化しており、この後2年も経たずに太平洋戦争に突入する、まさに緊迫した時期に行われたものである。

1時間半に及ぶ大演説だったそうだが、その一節に、以下の文言がある。

「唯徒(いたずら)に聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く道義外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和、斯くの如き雲を掴むような文字を列(なら)べ立てて、そうして千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことかありましたならば、現在の政治家は死しても其の罪を滅ぼすことは出来ない」

私が申し上げるまでもなく、この頃は軍の力がものすごく大きかった。その時期に、このような演説をぶったのである。その胆力には恐れ入るばかり。

公然と軍を批判したことから、斎藤は衆議院議員を除名になった。しかし、その次の選挙で軍部などからの選挙妨害をはねのけ、翼賛選挙で非推薦ながら兵庫県5区から最高点で再当選を果たし衆議院議員に返り咲く。

余談となるが斎藤は、戦争直後の1945年11月28日の帝国議会衆議院本会議において、軍国主義が発達した理由についての見解を最後の陸軍大臣・下村定に問うた人でもある。

戦争前に気骨を示した政治家は他にも濱田國松議員が挙げられるが、ここでは割愛する(ごめんなさい)。

私が言いたいことは一つ。先に引用した反軍演説の一節を書き換えてみる。

「唯徒にオリ・パラの美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く新型コロナウイルス克服、曰く国際社会との約束履行、曰く感染予防徹底、曰く平和の祭典、斯くの如き雲を掴むような文字を列べ立てて、そうして感染封じ込めの千載一遇の機会を逸し、有観客で国民の生命身体を危険に晒すようなことかありましたならば、現在の政治家は死しても其の罪を滅ぼすことは出来ない」

換骨奪胎はお詫びする。しかし原文が素晴らしいので、なお意が伝わるのがありがたくもあり、こんなことを言いたくなるのが悲しくもあり。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。