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古いセーターをほどいて毛糸玉にした時の思い出

暑い日が続いています。あなたが健康を損なうことが無いよう、心から願っています。

さて…

この暑いさなかだというのに、なぜか朝方、タイトルに記載した情景が脳裏にポンと浮かんできた。

自分が本当に暑さにやられてしまったのだろうか? と不安になる。

それは、まだ自分が幼稚園に通っていた頃のこと。だから、ほぼ半世紀近く前のことになる。

母が、古い毛糸のセーターを持ってきて、その端っこの方で何かをした。すると、そこからスルスルと毛糸を引っ張り始めた。

毛糸はドンドン伸びるが、切れることはない。生まれて始めてみる光景に、幼い私は目が釘付けになった。

母が私の反応を見てニヤッとしながら「六ちゃん、ちょっとセーターを押さえていて。あまりギュッと握っちゃダメよ」と言った。それでふわっと軽く握るようにした。

すると母は、おもむろに手で毛糸を巻き始めた。私は最初、力加減が分からず、母の引っぱりに負けてスポッと手から抜けてダメ出しされたりもしたが、段々加減が分かるようになった。

母が、毛糸を手で巻き続ける。これまで編まれていた毛糸は、編み目のクセがついて縮れている。「ラーメンみたいだ」と私は思った。家でよく食べたサッポロ一番を思い浮かべたのだ。

引っ張っても縮れは完全には取れない。それでも母は器用に巻いていく。

やがて、袖部分に差し掛かると、取り付け部があるため一旦手が止まり、それを外して再開。どれくらいの時間が掛かったのかは覚えていないが、大きな毛糸玉が3つでき上がった。

「これで、お姉ちゃんと六ちゃんのマフラーを編んであげるわよ」

母からそう言われて、嬉しかったことを思い出した。それは多分、自分のために編んでくれるということよりも、母と共同作業をして役に立てたことへの達成感の方が大きかったと思う。

何でこんなことが今さら脳裏に思い浮かんできたのかは、やはりわからないままだけど、何とも言えない感慨が胸を満たしている。

お読み頂き、ありがとうございました。


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