十二月のパパ活|#シロクマ文芸部
「十二月」ではじまるお話を書きます。
2作目です。
#シロクマ文芸部 さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
十二月はパパの賞与があるはず。
クリスマスプレゼントは
何を買ってもらおう。
コーチの新作バッグがいいかな。
パパとはマッチングアプリで知り合った。
45歳。妻子あり。
パパのお仕事は大手商社の営業マン。
私と約束する日は『出張』ってことで
家を留守にしても大丈夫。
有名レストランで食事をして、
有名ホテルに泊まる。
『大人あり』の約束だから仕方ない。
5万円もらえる。
フツーは3万円だから、
友だちにはラッキーだったねって
羨ましがられている。
髪の毛は薄いし、でっぷり太っているし、
脂ぎっていて気持ち悪い。
でも5万円のため!がまんがまん!
近いうちに、職場のキャバクラへも呼ぶ。
指名してもらって稼がなきゃ。
◈◈◈
あの娘と会い始めて半年くらいになる。
大手商社で働いていると嘘をついた。
本当は社員20名の小さな商社だ。
営業マンでもない。
経理をひとり任されている。
毎週、ニセ領収書を作成し、
手提げ金庫から10万円くらいは出している。
もちろん一度にではない。
大手商社と違い、監査は入らないし、
バレないだろう。
また今夜も会える。
嬉しくて手汗が止まらない。
◈◈◈
夫はよく出張へ行く。
彼に連絡すると、
すぐに会いたいと言ってくれる。
彼とはマッチングアプリで知り合った。
初めて会ったとき、あまりに顔が好みで
また会いたいとお願いしたら、
僕もって言ってくれた。
3万円は痛いけど、どうせ夫の給料だし、
月2、3回は会っている。
娘は独立しているし、
家計をやりくりすれば、なんとかなる。
今はホストをやっているけれど、
いずれば独立し、一緒に暮らそうねって
言ってくれている。
今度、ホストクラブへも顔ださなきゃ。
私たちの将来のために、成績に貢献しなきゃ。
◈◈◈
ママ活を始めて三年になる。
ホストクラブではまぁまぁの成績だけど、
たまに売掛が飛ぶから油断はできない。
飛べば、全て自分に降りかかってくる。
マッチングアプリでひっかかるのは、
鏡見ろよって女ばかりだけど、
「かわいいよ」って言って、
ちょっとベッドで我慢するだけで
金になるんだから。
でもそれだけじゃ足りない。
次はホストクラブへ連れていくから、
最初は3千円で飲ませて通わせる。
オバサンはちょろい。
◈◈◈
AホストクラブとBキャバクラ
〇〇ビル内、同一経営者。
覚せい剤の売買が行われている。
令状もでた。
今夜は客も入る。
両店同時家宅捜査、決行だ!
◈◈◈
「はい!みんな動かないでね~!」
大勢の警察が入ってきて、
店員も客も逃げられない。
「手を挙げて~!」
「そこ!スマホ持たないでね~」
◈◈◈
2つの店から、ぞろぞろ
店員と客たちが出てくる。
「あ!あなた!!」
「お、おまえ!!」
太った中年男と、太った中年女は、
お互いを見つめたまま
身動きができなくなった。
繁華街のクリスマスイルミネーションは、
パトカーのサイレンで赤く染まっていた。
◈◈◈
(終)
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