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あーちゃんを仲間はずれにする話し合いの日

あーちゃんは私と同じ保育園出身です。

その小学校に同じ保育園出身者が少ないこともあり、あーちゃんとは当たり前のように友だち関係でした。

あーちゃんは頭が良くて、少し口が達者なところはあるけれど、私は何の疑いも迷いもなく、彼女を友だちと思っていました。そう、普通に友だちだったのです。

小学3年生か4年生の時、何かを境に、あーちゃんが悪口を言われるようになりました。その何かはいまだにわかってなくて、なぜみんながあーちゃんを嫌いだしたのか、サッパリわかりませんでした。

私は変わらず、あーちゃんとしゃべることもあったけど、あーちゃんとしゃべってはいけない空気も感じ取れましたから、自然とあーちゃんとは言葉を交わさなくなっていきました。

ある日の放課後、あーちゃんには内緒で、大きなお家に住むノンちゃんちに集合することになりました。いつものように遊ぶのかと思っていた私はその日の集合理由に驚きます。

「あーちゃんを無視しよう」
「どうやって無視するか考えよう」

(え?!なんで!友だちなのに!)
(私あーちゃんのこと嫌いじゃないのに!)

頭の中が真っ白になりました。
話し合いの内容は全く頭には入ってきません。

(どうしよう… どうしよう…)

心臓がドキドキしだしました。

あーちゃんに対する悪口も、どうやって仲間はずれにしていくかの相談も、私には理解不能でした。

(どうしよう… どうしよう…)

頭の中で気持ち悪いものがグルグルとうごめいていました。

(苦しい…)

ブチっ!
何かが私の中で切れました。

「もう嫌だ!!!!!」

自分の声の大きさにビックリしました。

「わからないよ!!」
「どうしてあーちゃんを無視するの?!」
「私はあーちゃんが好きなのに!!」

涙が止まりませんでした。
みんなの顔は見れませんでした。

心臓はドキドキして口から飛び出しそうだったし、口下手な私がこのセリフの他に何を怒鳴り散らしたか覚えていません。ものすごい早口でわわぁーーっと怒鳴った記憶だけはあります。

大泣きの私はそのままバックを手にし、俯いたまま部屋を飛び出しました。

いつも遊びに来ていたノンちゃんちなので、迷うことなく2階のノンちゃんの部屋から玄関まで駆け降りて、振り返らずに玄関を出ました。

(おばさん変に思ったかな…)
(みんなで私の悪口言ってるかな…)

泣きながら小走りで自宅へ向かいました。
歩き慣れてるはずの道が長く感じました。

自宅で私が泣く場所は押し入れの中、畳んだ布団の上に潜り込み、おいおい泣きました。

お母さんに知られてはいけない…

少し泣いたら心も落ち着きましたが、泣き止んだ後は不安が襲ってきました。

(明日の学校どうしよう…)
(私もあーちゃんと一緒に仲間はずれだ…)

親に相談することなどできなかった私は、ズル休みするか、いつも通り登校するか…寝るまで悩み、朝起きてからも悩みましたが、食欲もある私が具合悪いなんて不自然で、ズル休みはできませんでした。

ランドセルがずっしり肩に食い込み、心もずっしり重いまま登校… 私から誰かに話しかけることはできませんでした。

しかし…

あれ??みんなが話しかけてくる!
抱きついてきたり、私の手をとり、

「いこっ!」

と、校庭へ遊びに向かったり…

(あれ?夢だったのかな…)

今でも仲良くしいる記憶力のいい友人にこの話をしても覚えていないと言います。

やはり夢だったのかな…

いやそんなはずがない…

あの涙がみんなの心を動かしたのだと今でも信じている。

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