003. 私はあなたが羨ましい

「藤原さんも人生辛いって思うことあるだね。仕事できて、みんなに頼られてて、かっこいいって憧れられてて…私はいつも藤原さん見てていいなー羨ましいなーて思ってるのに。」同僚と飲みに行って『子供が欲しいか』という話題になったとき、「こんな辛い人生を子供に生きさせたくないからいらないかな」なんて答えたら先の反応が返って来た。とくに驚きはしない。私は確かに良い家庭に生まれて、良質な教育を受けて、お金に困ることなく過ごし、学生時代はスポーツに明け暮れ、社会人としては同年代より高い給料をもらって順調にキャリアを積んでいる。側からみたら勝ち組だろう。だけど、私からしたら、家に帰ったらやさしい彼氏が迎えてくれるあなたが羨ましい。私より収入が低くても、最近彼氏と同棲を始めたあの子が羨ましい。家庭環境があまり良くなくても、良い旦那さんを見つけて幸せにしているあの子が羨ましい。どう見てもセフレなのに、彼氏だと言い張って惚気るあの子さえも羨ましい。私は今まで誰かに頼ることをしてこなかったから、一人で何でもできてしまったから、だからもう恋愛の仕方もわからないし、誰かと一緒に生きていく方法もわからない。どれだけキャリアを積もうがひとりぼっちで生きていくしかない私は、誰かと一緒に生きる全ての人が羨ましくてしかたがない。私だってだれかに愛されたい。