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読んでみた!『ペッパーズ・ゴースト』
伊坂幸太郎の作品にハズレなし。これはもはや定説ですね。どの作品を手に取ってもわくわくするストーリーで読者を楽しませてくれます。
今回は、なんだかタイトルがかっこいい!
さて、どんな伏線回収があるのか。
楽しみです。
伊坂作品でネタバレすることほど興醒めすることもないので、結末には触れないように感想を綴っていきます。
創作と現実が
交錯する物語
最初から奇想天外な設定から始まります。
かつて猫の虐待動画を見ていた人たち(ネコジゴ)を懲らしめる二人組。通称ネコジゴ・ハンターを自称するロシアンブルとアメショー。
復讐を仕事としているハードな職業とは裏腹に、軽妙なキャラクターはまさに伊坂節。これは『グラス・ホッパー』や『マリア・ビートル』などの殺し屋シリーズか!
と思わせておいて、この話は作中の人物が書いている小説というのが早々に明らかにされます。
本当の主人公は中学校教師の壇先生。
壇先生は人の未来が見えるという特殊能力の持っています。1人の生徒の未来を見たことで、事件に巻き込まれていきます。先生の運命を大きく変えていきます。
ネコジゴ・ハンターと壇先生。物語はこの二つが同時進行で進んでいきます。
創作と現実。果たしてこの二つのストーリーがどう絡まっていくのかは、本書の読みどころの一つだと思います。
今を生きるすべての人に!
現代の応援歌!
伊坂さんといえば、小説に文学を持ち込んだと言われています。小説を通じて社会の問題に取り組んでいるように感じています。
社会問題と言うとちょっと大げさですが、社会で起きてるちょっとした疑問に対して真正面から取り組む登場人物やセリフがけっこう多い印象です。
今作もふんだんにその要素が盛り込まれています。
「なんで自分が」と叫びたくなるようなことも多い現実で、自暴自棄になりたくなるときもたくさんあります。
今作で言えば、壇先生はまさに「なんで自分がこんな目に…」という状況ばかりです。なかなかに理不尽で、酷い目に遭います。
それでも諦めず、過去の後悔を原動力に、「誰かを救いたい」一心で立ち向かう姿は、愚直で滑稽さを滲ませながらも、とてもかっこいい。
よし、もう一度と立ち上がる勇気をもらえました。
おわりに
今回もとても面白い物語でした。
登場人物たちは過酷な状況を生きています。正直、自分が同じ立場ならと思うと恐ろしくて、彼らと同じ選択をしないとは言い切れません。
それなのに、物語自体はどこか優しくすべてを包み込むような抱擁感があります。自暴自棄を許容しながら、それでも前を向く力を与えてくれる。
伊坂さんの小説には人生にどう向き合うかという大きな問いに対しての答えが書かれているように思います。
良かったら手に取ってみてください。
それではみなさん、良い読書を!