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子宮頸がんワクチン「誤報」を見ぬくポイントは? ――フェイクニュース時代を生きる

6月14日で子宮頸がんワクチンの積極的接種勧奨が停止してから丸5年になります。最初にこの記事を出してから現在に至るまでの3か月で、報道は随分改善されていますが、これからもっと色々な報道が出てくると思うので、この記事を実質無料で再公開します。(2018年4月7日)

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「両論あるようで判断できない」「念のため危ないと思っておいた方が安全」という人のために、今日は子宮頸がんワクチン問題報道を読む際に気をつけるべき「フェイクニュース・ワード」を伝授する。政治や経済の問題とは異なり、医学に関するフェイクニュースは時として命に関わる。

厚労省が1月18日に発表した子宮頸がんワクチンのパンフレット改定について正確に報じたのは、「子宮頸がんワクチンの有効性を強調 厚労省が新冊子」の見出しをつけ、本文にも「副反応『疑い』のある症状」と書いた東京新聞のみ。

薬害は起きていないという認識が広がりつつあるなか、この期に及んで「子宮頸がんワクチン 防ぐ効果もまれに呼吸困難」と市販の風邪薬でも起きるアナフィラキシーショックの症状を見出しに書いたNHKや、ワクチンとの因果関係が不明な認知機能低下と”されている”症状を「資料改定「認知機能低下」復活」との見出しで薬害を煽った毎日新聞と差をつけた。

差がついたのは「論調」ではない。報道機関としての「メッセージの正確さ」だ。

最初に断っておくが、子宮頸がんワクチンは、私もかつて勤務し、現在もコンサルタントをつとめる世界保健機関(WHO)をはじめとする国際機関、学会や大学などの学術団体、各国の保健当局が安全性を保証し、推奨しているワクチンである。市場に出て10年以上が経ち、世界130カ国以上で安全に使われている。海外だけでなく、日本の疫学データからも「薬害は起きていない」という科学的な結論は出ている。しかし、日本ではあの激しいけいれんや車いすの印象と、記者の主観を優先した報道が続いていた。

まずは、日本における子宮頸がんワクチン問題の報道が薬害一辺倒からの変換点を迎えた、私のジョン・マドックス賞が発表された2017年11月30日当日の毎日新聞電子版の見出しを見てほしい。

子宮頸がんワクチン 接種後健康被害、7割が変わらず

この中に含まれている、フェイクニュース・ワードが分かるだろうか。

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