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バーレスク大阪 ~最後の晩餐~(貸切公演)(2023.09.12)

9/12にバーレスク大阪でとある方の貸切による公演が行われ、縁あってその公演に招いていただいた。これはその時感じたことの記録である。

「貸切をしてしょうこさん中心でショーをしてもらおうと思っているのですが、よかったら来てください」
そのとある方から8月だったかのある日にこういう話をいただいた。とある方のことは仮にA氏とこの先呼ぶことにする。A氏はしょうこさん推しの方である。
A氏は、ここ半年もいかないぐらいの中でお店で会ったら話をするような関係の人になっていた。初めにA氏と話をするきっかけを与えてくれたのもしょうこさんであった。話をする前からもともとそんな気もしていたのだが、日を経るごとに控えめないい人だなと思うようになっていた。
貸切公演の参加の問いに対してはもちろん「行きます」と意思表示をして、その来る日に備えることになった。「3部にします」との話だったので先に日程がいつになりそうなのかを聞いて次の日の仕事を休めるよう万全の準備をした。

そうこうしているうちに当日になった。
バーレスク大阪のあるビルのエレベーターに乗った際に、同様に4Fに向かう方と乗り合わせた。「この方も招待されたのかな」。実は他にどういう方が来られるのかは全くA氏から聞いていなかった。この日とは別の日にバーレスク大阪へ行った際に、ある別のお客さんから「実はA氏に招待されたんですが…」というような話を聞いていたので、とりあえずその方が来ることはわかっていた。けれど、そのお客さんとも「あとどれくらい来るんでしょうね?」という会話で終わってしまい、この場がどういう雰囲気になるのかは全く想像がついていなかった。
フロアへ入ると、まだ誰も来ていなくて一番乗りであった。いつものフロアは椅子とテーブルがここかしこに並んでいるけれど、それも必要な数に整理されていて、広さを感じる空間になっていた。
「ここのお好きな場所へどうぞ」と案内されたのでVIPの席に座った。実はVIPの席に座るのも初めてで、「なるほどここからだとこういう感じに見えるのか」などと思ったりして期待が高まった。
時間が経つにつれ、1人また1人と招待客が到着した。みんな黒い服を着ている。実はこの日の招待には事前に注意事項があった。ショーは撮影禁止であることと、ドレスコードが「黒」であること。しょうこさんのことであるからこの黒も何か意味があるんだろう、とここも期待混じりにあれこれと考えていた。
ほどなくしてしょうこさんから「今日のセトリ、事前に見たい人いる?」という問いかけがあった。セットリストは事前に印刷されたものが用意してあって、ショー前に知りたい人は見ていいし、見てのお楽しみにするとしてもよい、という選択ができるようにしてくれていた。周りのお客さんは「見てからのお楽しみ」を選択する方が多かったが、自分は先に見ることを希望した。面白いものであれば、あらすじを知っていても面白く読めるはず、というのが自身の考え方に従った形である。先にセットリストが書かれたカードをもらって内容を見て「あっ!」と思った。なぜなのかはまた後で記す。

そして照明が落とされてショーが始まった。
序章はしょうこさん中心にAチームのみんなが登場する。衣装は黒と白で統一されている。なるほどここにまず色の要素を入れてくるのかと思う。撮影禁止なので、印象をことあるごとにメモしながら見る。普段真ん中の席で見ることがなかったので横に並んだ時、全員の顔がしっかり見えるのは新鮮だ。ベースになっている曲は「Cinema Italiano」という曲らしい。後で調べると「NINE」というミュージカルの曲なんだそうだ。ミュージカルは全く疎いのだが、フェリーニの映画「8 1/2」を舞台化したものということである。昔わけもわからずゴダールやフェリーニを見るということをそういえばしていた。昔見たものは全く覚えていないが、これを足がかりにすれば、また違った印象が出てくるのかもしれない。
2つ目の演目にさしかかったあたりだったろうか。隣に座っていたのは馴染みの方であったのだが「(お客さんの数を見て)最後の晩餐に出てくるのはこれぐらいの人数じゃなかっただろうか」というようなことをおっしゃった。自分では全く気付いていなかったので、それはありそうな話ですねと深く心の中で納得した。しょうこさんならそれぐらいの仕掛けを入れてきてもおかしくない、というような雰囲気があった。いつもと違う雰囲気が謎をかけてくるような感じもしていた。不思議な緊張感がずっと続いていて、演目が終わった後の拍手も、いつもよりも少し遅れたタイミングで鳴る。1つ1つの終わった後の余韻が長く続いているようにも感じられるし、拍手をしてもいいものなのかタイミングを測りかねているような感じもする。
そうしているうちにいつもとは違うビヨンセが始まる。これは確か去年の「極夜」で見たのではなかったか、と思い出す。A氏によれば、今日の演目は(おそらくここ2年ぐらいで)披露されたものの再演を希望したのだという。自分も言ってみればここ2年ぐらいの客なので、自分自身のしょうこさんの思い出の濃い部分と重なってくる。

時間が経つにつれ、しょうこさん以外の人にもスポットが当たってくる。まずはベティちゃんによる「オペラ座の怪人」。仮面をつけてのパフォーマンスだ。後で聞いたところ「オペラ座の怪人」は依頼主のA氏が好きなのだそうである。そしてほなみさんの「A Call From The Vatican」。この貸切の公演の前にバーレスク大阪へ行った日に、ベティちゃんとほなみさんはこの日に向けて試行錯誤中であることを教えてくれていた。ベティちゃんはクールでスタイリッシュに、ほなみさんはよりコケティッシュに。特にほなみさんのものは、なんとなくいつもはやらないことをやってみようというのがどこか感じられた気がする。
この間にあったのがミモザさんボーカルのアギレラである。これは自分は最近は見ていなかったがバーレスク大阪ではお馴染みのものである。「よく知っているものを間に入れたらほっとするでしょう?」と後でしょうこさんが教えてくれた。そう、常に新しいものが続くとなかなか見るほうも大変なのだ。後で考えると演目の順番もよく考えられていたな、と思う。それにアギレラはやはりバーレスクといえばの演目なのだ。自分もそんなイメージはある。
さて、先にセトリを見てはっとしたと書いた。それはここに「江戸ポルカ」があったからである。前にしょうこさんが一青窈カバーの「他人の関係」のパフォーマンスをしたときに、一青窈の「江戸ポルカ」がバーレスク向きの曲だということを言ったのだ。荒唐無稽で軽快なこの曲を解釈したのがサニーちゃん。ダンスというよりは多様な仕草でこの世界観を表現してみせた。「そう来るか」と思わされるパフォーマンス。もともといろんなイメージを頭の中に持っておかないと出てこないだろうなとサニーちゃんの奥行を感じたのだった。

しょうこさん以外の各々のパフォーマンスは、しょうこさんが完全にコントロールしていたというよりは、大枠だけ与えて後は個々に任せているという感じだった。そのためこの時間帯は色々な方向へとイメージが広がっていったような気がした。そして広がっていったイメージをまたまとめていくように今度はしょうこさんのパフォーマンスが始まる。「暗夜の心中立て」「I have nothing」。いずれも「極夜」でも演じられたものだ。正面から見た「暗夜の心中立て」に漂う緊張感。「こんなにも動きがなかったか?」と思う。1つ1つ丁寧に音とそこで表現すべき仕草が繰り出される。そして壮大な「I have nothing」へ。
このあたりのパフォーマンスを後で思い出している時に「そういえば照明はどうなっていただろう」とふと思った。見ている時に全くそこへ頭が及ばなかったのだけれど、気に止まらないくらいに最適な光が選ばれていたのではなかったのかなとここでもしょうこさんの細やかな配慮を感じたのだった。
ラストはメンバーみんな黒一色の衣装で登場する。黒コーデの招待客と一体になる瞬間である。実にいろいろな仕掛けが施されて見る人を巻き込むステージであったと思う。

終わった後もなごやかな時間が流れた。見学に来ていたバーレスクガールたちもかなり感じるものはあったのではなかろうか。
お店を出た後も、高揚感あるままにお客さんと連れ立っていろいろと話をする楽しい時間は続いた。そして気がつけばもう明るくなっていた。
最後に休憩として立ち寄った店は、これからまさに働きに行こうとする人達が朝食をとっていた。いつもなら自分もそちら側の人間なのだけど、この日ばかりは「今しがた、いいものを見てきたのですよ」と内心誇らしげであった。

最後に、この素敵な時間を作り上げてくれたしょうこさんに、そしてこの場を提供してくれたA氏に感謝したい。本当にありがとうございました。



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