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「コットンパール」 Ep.10


 テスト期間も終わりいよいよ2日間の文化祭が始まった。私たちのクラスのカフェでは、パンケーキ、クレープ、カップケーキの販売とコーヒーや紅茶などを提供する事になっている。私は、クラスの中心グループの人たちが決めた内容に従い動く。
 服装も、彼らの意見でクラスみんなでお揃いのオリジナルTシャツを作った。Tシャツは、パステルピンクで、クラスで絵の上手い子が描いた絵やカフェの名前が、胸元や背中に描かれている。私は、制服のスカートの上にそのTシャツを合わせたスタイルで、ウェイターをやる予定だ。

 シフト制になっていて、私は沙耶と同じシフトで、1日目の今日は、いつもより早く登校し朝から準備をしている。
「杏、Tシャツ似合ってるね。杏、いつも髪下ろしてるから、今日はアップにしようよ〜。私やってあげる〜。」
張り切っている沙耶が言いながら、早速私の髪に触れる。
「別にいつも通りでもいいんだけど。」
「そんな事言わないの! お揃いにしよっ!」
沙耶に言われるがままに、髪型がセットされていく。
沙耶は、最初にコテで軽く髪を巻き、あっという間にお団子ヘアが完成した。鏡を見ると後れ毛の出し方も上手で、沙耶の技術にただただ関心してしまう。
「ありがとう。」
「どういたしまして!」
「せっかくだから楽しもうね。」
「そうだね。」
沙耶が楽しそうなのにつられて、私も少しだけ楽しい気持ちになってきた。
それから、私たちは準備を始めて、調理組もコーヒーの準備や、注文が入ったらすぐに用意できるように下準備を始めた。

 少しずつお客さんも入り、お昼頃には一度満席にもなった。
終了時間になるまで、お客さんは途切れる事なく来て、わりと忙しい1日目だった。それもあり、他のクラスの模擬店や出し物はあまり見られなかった。

 時々、遠くで見かけた晴人は、おばけ屋敷の役なのか執事の姿で、顔や手に血のりを付けていた。血まみれではあったけど…、執事のコスプレが良く似合っていてかっこいい。晴人は、クラスの人たちに頼られていて、おばけ屋敷の運営で忙しそうだった。一度だけ、廊下ですれ違ったけど、手を振るくらいで話はできなかった。

 「明日は、隣のクラスのおばけ屋敷行きたいね。準備にかなり時間かけてたし、けっこう怖いらしいよ! 途中リタイアする人続出だって!」
沙耶が言う。
「そうだね。明日は色々回りたいね。てか、沙耶、怖いの苦手じゃなかったっけ?」
「苦手だけど〜、たかが文化祭の出し物だし…? それに冷静な杏がいれば多分大丈夫だよ!!」
「えー、さっきけっこう怖いって言ったじゃん! それに私も別に怖いの得意じゃないよー?」


 この高校に特に思い入れはないけれど、沙耶と同じクラスになれて、友達になれて、こうして笑い合えている時間がとても楽しく感じた。
沙耶と一緒に過ごした文化祭。
きっと将来思い返した時に暖かい思い出として心に残ってるんだろうな、とそんな気がした。

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