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Zuppa@南池袋 高村光朗さん(昭63産)

南池袋公園のすぐ隣にあるカフェ、「Zuppa」。この店を経営するのは、池袋で代々続く和紙販売店、「紙のたかむら」の三代目代表、高村光朗さん。小鍋で提供されるこだわりのパンケーキが出されるこの居心地の良いカフェは、コロナ禍で経営不振になってしまった和食会席「Bakuの夢」の打開策として開店した。
 

立教生時代

立教大学時代の高村さんは、宅建の勉強をして、経営者の本をたくさん読んだという。そのおかげで、大学の勉強では分からなかった経営のことが分かる様になったそうだ。この時の勉強は、後に会社を継ぐことになった際に役立ったという。当時はお父様の会社で、「紙のたかむら」を経営する高村紙業株式会社を継ぐ気はなく、「独立して生きていくことばかりを考えていた」そう。大学卒業後は、注文住宅の営業職に就職。その後、お父様の会社を継いだ。継いだばかりの頃は、ご自身には仕事がなく、信託銀行に出向し不動産課部門にいたこともあるそう。



生まれ変わった「Bakuの夢」

小鍋で提供される、この少し風変わりなパンケーキは、「Bakuの夢」で使用していた小鍋を使って料理を提供したい、という高村さんのアイデアから誕生した。店舗は、コロナ禍で売り上げが伸びなかった和食会席「Bakuの夢」の店舗の一部を改装したスペースだ。店名の「Zuppa」は、イタリア語でスープという意味。本格的なイタリアスープが目玉になる店にしたい、という思いが込められている。高村さんの構想では、カフェはまずパンケーキのお店として親しんでもらい、その後本格的なイタリアスープを提供していく予定だそう。


もともと、和紙業界では2月と8月は売上が伸びづらく、高村紙業株式会社では、創業者の代から飲食店を経営していた。立教生の温かい繋がりが感じられ、インタビュー時にいただいていたコーヒーの様に心がホッとなった。
高村紙業株式会社では、カフェ経営は純喫茶「Baku」で経験があり初めてではなかったが、純喫茶ブームが終わり、「Baku」を閉店してからは、しばらくカフェ事業をしていなかったので、「Zuppa」は久しぶりの試みだった。居酒屋やカラオケ等の経営を経て行き着いた「Bakuの夢」を閉店するのは苦渋の決断ではあったが、居心地の良いカフェとして新たに生まれ変わらせることができたのだ。



「紙のたかむら」の経営者として

和紙販売店、「紙のたかむら」を経営し、カフェ「Zuppa」の経営も手掛ける高村さん。和紙についてもたっぷりと伺った。

和紙販売のこれから

和紙は日本の歴史の中で、アーカイブとしての役割を果たしてきた。古典の多くは和紙で残っている。和紙は、後世に情報を残すツールとして長年活躍してきた。
日本の歴史上で重要な役割を果たしてきた和紙を販売する高村さんの会社。創立当初は、
和紙ではなく家庭紙の売り上げが主だったという。2000年に原点回帰し、本格的に和紙の販売に力を入れ始めた。ペーパーレス化が進む中、洋紙の売り上げは落ちているが、和紙はこれからも残り続けるだろうと考えている。「紙のたかむら」が一般に幅広く和紙を売り出し始めた2000年は和紙ブームで、和紙を壁に貼る、インテリアとして使う等、和紙が日常に溶け込んでいた。高村さんは、このブームが再来すると考えているそうだ。しかし和紙を作る職人は減少しており、和紙そのものを残していくことが非常に大きな課題になっているという。その一方で、日本刀を拭う紙として和紙を使う業者に卸す等、特定の市場では現在でも非常に大きな需要が得られているそうだ。「和紙は生き残ると思います。」と嬉しそうに語る高村さんだった。
 

和紙との出会いというロマン

「紙のたかむら」では和紙そのものを販売し、使い方は購入者に自由に決めてもらうことにしている。自店で扱う和紙で絵本を制作した作家さんを店舗に招いてワークショップを行うなど、使い方の例を提示して、お客さんに実際に試してもらいながら好きな使い方を見つけてもらう工夫をしている。「気に入った和紙に出会った時にぜひお買い求めくださいとお伝えしています。」和紙を買うことは、それ自体がワクワクする、ロマンティックなものなのだ。
 

二つの異なる仕事の「楽しさ」

「Zuppa」と「紙のたかむら」では、飲食サービスと物品販売という性質上の大きな違いがあるが、高村さんはどちらの仕事もとても楽しんでいるそうだ。
「和紙は息をしている」「同じ紙はない」と高村さんは語る。店によって、それぞれ個性があり、同じ名前の商品でも一つ一つに違う可能性があるのが和紙の面白さ。
一方、飲食サービスでは、いつも同じ品質を提供する必要があるため、一回一回が勝負だという。料理が趣味でもある高村さんは、自ら新メニューの試作をして提案をすることもあるそう。
 

学生の皆様へ一言

「今何をするべきか、じっくり考えて過ごしてほしい。若いうちはやりたいことをやった方がいい。」と力強く語った。
限りある時間を大切に使っていろいろな経験をしてほしい。自分がやりたいこと、自分の身になることは何かを考えて行動してほしいという。ご自身も常にこのことを念頭に置いて行動しているという。
いつ人生が終わるか分からないからこそ今を大事にする。この考え方が高村さんを挑戦に導いているのではないだろうか。


(左から 学生ライター 藤木美咲、高村光朗さん、学生カメラマン 長田海音)


店舗情報

スープとオリジナルパンケーキ Zuppa
〒171-0022
 東京都豊島区南池袋2-22-1
 第三高村ビル 1階 minaikeZa内
 (JR山手線 池袋駅 東口  徒歩4分)

紙のたかむら
〒170-0013
 豊島区東池袋1-1-2