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酒膳一文@浅草 平川良信さん(昭57・観)

江戸の風情が息づく浅草に店を構える「浅草酒膳 一文本店」。立教大学の卒業生である平川良信さん(昭57・観)はご両親が創業したこの風情あるお店を経営している。今回は大学時代のことやお店のこだわりについてお話を伺った。

―もともと描いていた夢―


平川さんが立教大学の観光学科に進学した理由は、ペンションの経営という夢があったからだ。幼い頃からスキーに親しむ中で、将来はスキーを教えがてらペンションを経営したいと考えていた。しかし、ご両親が浅草でお店を始めることとなり、平川さんは急遽お店の手伝いをすることに。料理や仕入れなど、一から学びながら学業との両立に励んだ。

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名前の候補を考えていたほど、ペンションの経営は憧れだった

―ユニークな木札での会計―

ここ「浅草酒膳 一文本店」では、食事を始める前に現金を木札に変えるという創業当初からのシステムがある。当時の浅草地区はメニューに値段が表記されていない飲食店が多かったそう。そこで始めたのがこのシステムである。木札でのやり取りによっていくら使ったのかが分かりやすくなった。この明朗会計に対するお客さんの反応の多くは好意的だが、外国人観光客の方などには木札を使わず後払いで対応しているそう。
(現在はコロナの影響で木札への換金は行っていない。)

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「一文」の文字が目を引く外観

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店内はゆっくりくつろげる落ち着いた雰囲気

―料理へのこだわり―


平川さんの料理へのこだわりは食材だけでなく、水や調味料にも及ぶ。化学調味料などは一切使わず、天然物の魚や有機・減農薬の江戸野菜を中心に使うなど、こだわりが詰まっている。平川さんは1級船舶免許を取得しており、釣りに出かけることもあるそう。釣った魚はその日のうちにお店に出している。また、食に携わるにあたってソムリエや利き酒師、野菜ソムリエの資格なども取得した。美味しいものをお客さんに提供したいという姿勢がとても伝わってきた。
 さらにこのお店の名物である江戸ねぎま鍋についてお話を伺った。ねぎま鍋とは昆布と椎茸からとった精進ベースの出汁に、まぐろのカマトロという部位と江戸野菜を入れて作る鍋である。冷蔵技術が未発達だった江戸時代、カマトロの部位は捨てられていたそうで、何とか活用しようと江戸庶民が考案したのがこのねぎま鍋である。筋っぽい部位であるカマトロの脂が鍋の中で程よく抜けて、千住葱に絡む。食べるうちに主役がまぐろからねぎへと変化する鍋だ。「こちらが、うちの名物でございます!」と、ねぎま鍋の歴史から美味しさまで熱心に語ってくださった。

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水や調味料にもこだわった料理はぜひ一度味わいたい

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名物のねぎま鍋はほとんどのお客様が注文するそう


―お店を継ぐことへの思い―


じつは、平川さんの双子の息子さんたちも、現在立教大学観光学部に在学している。今回のインタビュー後半では、長男の良太郎さんにもお話を伺うことができた。良太郎さんは大学で観光を学びながらお店の手伝いにも出ており、将来的にはお店を継ぐことを考えているそう。「浅草で商いをしていく上では観光との関係がとても深いと思ったので、観光学部を選びました」と語った。また、「コロナ禍で浅草を訪れる人が減っている状況を目の当たりにして不安はないのか」と聞いたところ、「こういうことがあっても乗り越えられるようにしないといけないのが商いなんだな、と実感しました。コロナ後に向けて考え直していかないといけない面も多くあると気づくことが出来ました」と頼もしい姿を見せてくれた。

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仲良し親子で、取材も和気あいあいと進行した

―校友会に向けてのメッセージ―


「コロナ前には多くの立教関係者にお越しいただいていました。落ち着いてきたら、またお店に足を運んでほしいですね」と平川さん。立教大学を卒業したという誇りをもってしっかりと商いをさせて頂きたい、と力強い言葉も添えてくださった。

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学生との4ショット
左から:平川良太郎さん、平川良信さん、
前田凜之介さん(学生カメラマン)、三浦陶子さん(学生ライター)


浅草 酒膳一文 (〒111-0032 東京都台東区浅草3丁目12−6)