ラーメン屋とわたし

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この記事は、noteのサークル「創作をまなびあう会」でお題を決めて書いた記事です。今回のお題は「#おいしいお店」
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今の生活になる前に、よく通っていたラーメン屋があった。系統は博多豚骨系。

当時の自分の活動範囲はいわば「ラーメン激戦区」とでも言えるような状態であった。醤油、塩、味噌、家系、つけ麺、挙句の果てに二郎インスパイア店まで立ち並ぶような状態。色々なお店へ日ごとに入店する中で、一番訪れたのが冒頭の博多豚骨系だった。

博多系の特徴はやはり極細麺とスープだろう。博多系のルーツからして「時間に余裕がない市場関係者の夕食や朝食としてすぐに提供できるように、短時間で茹で上がる細麺を採用した」というものらしく、硬めに茹でられた細麺をいかに美味しく提供できるかというところに焦点が当たる。
贔屓の店では通常の「やわらかめ、普通、かため」に加えて「バリカタ、ハリガネ」まで用意されていた。当時は基本的にバリカタかハリガネばかりを注文していたのだが、これは空腹を一刻も早く満たしてほしいという想いから提供時間の早い硬さを選択していた、というやや卑しい理由である。今思うと実にルーツに忠実なオーダー方法だと思う。

こうして出来上がったラーメンがカウンター越しにやってくる。着席から大体3分以内にはありつけたと思う。茹で時間が短いから当然ではあるのだが、あの周辺のどの店よりも早く提供されていたと思う。

麺にありつきたい気持ちを抑え、スープを一口すする。このスープが一番の売りと言っても過言ではない出来なのだ。博多系といえば濃厚な豚骨スープが想起されると思うのだが、その中でもこの店のはいっとう濃厚である。クリーミーという言葉が合うラーメンのスープを出す店が一体どれほどあるのだろうか。これが合わないという友人もいたが、私はこの―ともすれば甘さすらほのかに感じられる―スープがとても好きだった。

ほとんど刹那と呼んでも差し支えない速さで麺が消える。硬茹での麺が急速にスープを吸うため、とてつもない絡みの良さが箸を止めることを許さないのだ。完食。そして替え玉。
この店の麺の分量は他の店のそれに比べてやや少ない。大体0.7~0.8人前といったところだろう。そのボリューム感によって思わず替え玉へと誘われてしまう。ここで異なる硬さを選ぶことで飽きさせない工夫がされているとも言える。つまるところ良いお客さんである。
当時は食欲旺盛だったため、1度ならず2度替え玉をすることもよくあった。そんなことを何度も続けていくと、ある日替え玉と一緒に「いつもありがとうございます」という言葉が飛んできた。なんと常連として認知されていたのだ。こちらはなんとなくお店のスタッフの顔ぶれを把握していたものの、まさか把握されているとは思わずとても驚いたのをよく覚えている。替え玉の皿にはサービスの海苔が添えられていた。

その後は時々一杯目のラーメンにオマケが入っていることがあり、更にお店のことが好きになった。現金な限りではあるが、1日のうちで昼夜2回行くような凄まじい日もあったので許してほしい。そういえば昼の時間帯はライスサービスがあったのだが、米と麺と海苔がまた相性抜群だったなと思い出した。


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お題から連想された店のことを書いた。内容的にお店に迷惑がかかりそうということもあり、お店の名前は伏せる。タグの趣旨にそぐわないのは承知している。期待して読まれた方がいたら申し訳ございません。

執筆にあたり、久しぶりにお店の名前で検索をかけた。いくつものレビュー記事から当時と同じ品質で今も営業を続けていることが分かり嬉しくなった。一方で、時勢の影響なのか値上げがされていることも知った。素敵なお店なのでどうにか営業が続いてほしいなという気持ちでいっぱいである。近くまで行ったら久しぶりに寄りたいなと思った。当時ほど替え玉ができる自信はないが。



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