初心者のためのガリフレイ香文

お題:瞬き・立ち止まる

瞬く者に明日はなく、立ち止まらせること能わず


注意:当記事にはドクター・フーのいくつかのエピソードにおける重大なネタバレが含まれております。ご了承ください。


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読者諸君は「ガリフレイ香文」という表現手法をご存じだろうか。
惑星ガリフレイで親しまれる文学形式であり、地球で言うところの「漢詩」や「ソネット」、「和歌」と呼ばれるものに近しい存在である。
筆者は初めて香文に触れた際に受けた衝撃が忘れられず、どうにか地球でも広められないかと考えていた。
ようやく日本語向けにチューンできたため、この場を借りて紹介しようと思う。


ガリフレイ香文のルールは以下の通りである。

①全部で25文字
→日本語に合うのは文節ではなく文字数だと思ったため、文字数で縛ることにした。ちなみに本家でどうなっているかを説明するのに必要な概念が日本語に足りていないため、実際にどうなっているかは各自で確かめていただきたい。

②区切り、文節の数に指定はない
→ここは本家通り。自由度を上げるために任意のタイミングで区切って良いことにしている。

③人名を出してはいけない
→人を描写する表現ではあるが、直接名前を出すのは無粋であるというのがガリフレイ星人の認識らしい。ここも本家の意向を尊重。

④時にまつわる言葉を入れる(時語)
→これは俳句における季語のようなものである。便宜上、時語と訳させてもらう。
通過儀礼でTime Voltexをのぞき見させる種族にとっての「時」の概念は、日本人にとっての「四季」のそれに通ずるものがあるのかもしれない。


制約事項は以上の通りである。
とはいえルールだけでは実態をつかみにくいという指摘もその通りであると思う。
今回は日本語で作られた香文を解説を交えながらいくつか紹介していこうと思う。


つないでいた手が離れたことでの、永遠の、お別れ (時語:永遠)

→2007年に起きたダーレクの侵略からドクターが地球を救った際に起きた、大きな、大きすぎる代償の話。これが誰の視点なのかは読者の想像に任せたい。

最後のハグは、次に進むために必要な、温もり (時語:最後)

→12代目ドクターが再生に向けた決意を固めるシーン。
ハグを嫌う12代目、という前提を踏まえると極めて象徴的な瞬間であると言えよう。

今の私の原点は、思い出せない君の言葉 (時語:今)

→これもまた12代目ドクターについての香文。
12代目に向けて、「彼女」は最後に言葉を贈る。そこから彼の新たな冒険が始まるのだ。

ごはんをあげたあのおじさんに明日も会えますように (時語:明日)

→11代目ドクターと初めて会ったアメリアの目線から。
5分ではなくてもきっとすぐに戻ってくるだろうと想像していた少女の夜を想像すると胸が痛くなる。


いかがだっただろうか。
さほど難しく考えずとも詠めることがご理解いただけただろうか。
本紙が諸氏の吟詠における参考となればこれほど幸いなことはない。

今後多くの香文が詠まれることを筆者として祈っていやまない。



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評論とショートショートの境界くらいの作品。後者でとるならメタフィクションを挟んでいるような解釈となる。

最後にこの形式のインスピレーション元と日本語における詩の在り方について紹介した記事を掲載して締めに代える。




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