見出し画像

オン・ザ・ピッチ


 いまでこそ当たり前になっていることではあるが、広い範囲でデザインという言葉が使われるようになったのは、おそらく近代以降のことで、実生活の中までその概念が浸透したことまでを考えると、実はつい昨日今日という話なのかもしれない。

 デザインと言われると、お絵かき的な、今でもうっすらと遊びの匂いが残っているような言葉に聞こえる。デザイナーと呼ばれる人たちには、多少なりとも芸術への造詣があり、美意識の高いイメージを持つ。

 そもそも芸術なんてものは、知もない、スキルもないような僕たちにはまるで縁遠いことだったはずだ。それが、おそらくは自分の人生に身に余るほどの選択肢ができて以来、すべての選択肢はデザインされ、僕たちは自分の選択がいつでも芸術的であると思い込むようにしている。

 例えばアートとデザインの違いという議題は、無機質なほどに建物が立ち並ぶような丸の内の信号待ちで隣から聞こえてくるほどに身の回りの関心事になった。

 この答えの1つは、アートは問題提議であり、デザインは問題解決だという。

 そういわれてみると、サッカーはアートなんだなと思う。

 11vs11のオン・ザ・ピッチで動くボールや人の流れは、初めて見る人には全く理解できない世界だろう。最近では、選手をGPSで追いかけてその動きを分析する図がよく見られるようになったが、まるでジャクソン・ポロックのNumberシリーズにしか見えない。もしくはペヤングソース焼きそばにマヨネーズをかけたときの画だとか、とにかくピッチの上はこの上なく複雑で混沌としている。

 選手たちがその場その場で判断したプレーにはもちろん意図はあるが、90分間あそこで一体何が起きていたのかを正確に把握するにはもう少し多くの時間と脳みそを要する。

 結局のところ、ボールという物質を介して個人と個人、それぞれの思惑が重なっていくところには社会ができている。

 世界で今何が起きているかなんてことは、ピッチを見ればすべてわかると言ってもいい。

 ピッチに立てば、世界がどう動いているかをフィールドを伝って感じることができる。サッカーはいつでも僕たちに問題を突きつけている。

 僕たちはそれを必死に受け取らなければいけない。

 だからこそ、僕たちはどんなサッカーをしたいかを考え、戦略や戦術を立て、またいつものピッチに向かう。

 そこに正解はないが、少なくともゴールを決めてゲームに勝つことは正解に最も近いといえる。僕たちが望む未来を思い描き、人生を自分のものにし、デザインするのだ。

 最後の笛が鳴らされるまでゲームを放棄してはいけないし、たとえそれが負けた日の後だとしても、ピッチを降りることはないだろう。

 答えを焦る必要はない。切り替えてまた前へ進もう。

 サッカーに愛される国、スペインには誰もが口にする決まり文句がある。


 Partido a partido.


 一戦一戦、である。

 

  

 

#サッカー
#FOOTBALL
#ピッチ
#世界  

スペイン1部でプロサッカー選手になることを目指してます。 応援してくださいって言うのはダサいので、文章気に入ってくれたらスキか拡散お願いします! それ以外にも、仕事の話でも遊びの話でもお待ちしてます!