フォーク・デュオ“ものぐさ”結成40周年記念独占インタヴュー
2022年、姿としつぐと小高ヌッツォによるフォーク・デュオ“ものぐさ”がデビュー40周年を迎える。時代を駆け抜け、長く活動を続けてきたふたりにインタヴューを行い、40周年への感慨やバンド結成秘話をはじめとするエピソード、約8年ぶりとなる新曲「金玉さがし」への思いなどを存分に語ってもらった。
──デビュー40周年おめでとうございます。まず今の心境からお聞かせください。
姿:いろいろあったけれど、時間が経つのは早いですね。40年前に、日本全国のバス停を450箇所回るツアーをしたときはまさかこんなことになると思っていなかったですね。
ヌッツォ:あのツアーから“ものぐさ”としての活動が始まったんだから不思議な気持ちだよ。あのころはとにかくお金がなくて、カブトムシにピーナッツバターを塗って食べたりしていたなぁ(笑)。
──今まで応援してくれていたファンに対しては、どんな思いでいらっしゃいますか?
ヌッツォ:うーん……やっぱり色々伝えたいことはあるんだけど、なんかこういう場で言葉にするのは難しいな、って思う節もあって。
姿:だからこそ俺たちは音楽をやっているわけだからね。
ヌッツォ:でも、そうだな、ファンの皆さんにひとつだけ伝えたいことがあるとしたら、炊飯器のことだね。炊飯器はやっぱり6合炊きのものが一番いいと思う。
姿:黒釜のね。
ヌッツォ:なんていうか炊飯器っていうのは、どこまでいっても生活の一部なんですよね、結局。もちろん人それぞれ人生のストーリーってのがあると思うんだけど、炊飯器は結局そこになくてはならない存在だから。
姿:まぁ、そういう意味では本当の主役っていうのは、僕らでも、お客さんでもなくて、炊飯器なのかもしれないね。
──デビュー当時、“ものぐさ”を40年間続けていることを想像していましたか?
姿:してないですね。
ヌッツォ:うん、してない。
姿:ひょっとしたら明日解散することもあるかもしれないし、それはわかんないよね。
ヌッツォ:そうそう、いまこの場で地殻変動が起きて、俺とトーシー(ヌッツォは姿のことをこう呼ぶ)のちょうど中央に地割れがバーンってなって、俺たちが離れ離れになっちゃうことも、可能性としてはあるわけだし。
姿:それでも、自然は守っていきたいよね、やっぱり。
ヌッツォ:そうだね。それからお通しを頑なにカットしようとするチャレンジ精神も大事だと思ってます。
──“ものぐさ”はどのように結成されたのでしょうか?
姿:もともと僕らは、同じ中学で同じ部活だったんですよ。
ヌッツォ:そう、手品研究会。
姿:といってもそのときは全然親しくなくて、アレだよな、仲良くなったきっかけは小田切先輩の家に行ったときだよな。
ヌッツォ:そう、小田切先輩の家にみんなで泊まることになって、姿が、桃鉄で最下位だったやつのケツ毛をライターで燃やすってゲームを提案したんですよ。
姿:そしたら言い出しっぺの僕が負けちゃって(笑)。
ヌッツォ:で、着火役は俺だったんですけど、姿のアナルにジッポライターをかざして火をつけたらね、思いのほか燃え上がっちゃって。
姿:太ももの毛まで燃えちゃって。
ヌッツォ:お前、毛深かったもんな。指の第一関節が埋まるぐらい下半身毛だらけだったもん。
姿:そして、慌てて火を消そうと思って先輩の布団に倒れてゴロゴロ転がったら、火が燃え移っちゃって。
ヌッツォ:先輩の家が全焼。
姿:先輩の家が濃紺の闇の中に焼け落ちてゆくさまを、俺たちはふたり、黙って手を繋いで見つめてたんですよ。
ヌッツォ:そこから仲良くなったんです。で、二人ともヒップホップが好きってことがわかったんで、ブーンバップをやろうって話になって、サンプラーを買って曲を作り始めたんですよ。
姿:でも、修学旅行のバスが転倒して事故ったときにサンプラーの使い方を全部忘れたんですよ。
ヌッツォ:そしてリハビリ代わりに始めたフォークギターで、なんとなくフォーク・デュオになったっていう、そんな経緯がありますね。
──デビュー翌年の1984年には「エマニエル坊や音頭」が大ヒットし、80年代はかなり多忙だったと思います。そんな中、メンバー間で軋轢などが生じたことはありませんでしたか。
姿:よく殴り合っていたよ。
ヌッツォ:一時期はお互いの食事に毒を盛るところまでいっていたから。
姿:でもやっぱり、憎しみを突き抜けたところには、結局絆が待ってるから。
ヌッツォ:うん、それを感じていたいんだと思う。
──なるほど。実際に活動休止もありながら、2008年には完全復活。この頃の思い出はありますか?
姿:ローソンの『もち食感ロール』の販売はかなりショッキングでした。圧倒されましたね。かなり影響を受けました。
ヌッツォ:いとこの家の犬が子供を産んだんですよ。それも三匹。出産に立ち会ったんですけど、なんていうか、生命の神秘を感じました。それから書く歌詞も、やっぱり変わったし。
──春には待望の新曲『金玉さがし』も発売されますが、どんな意気込みがありますか?
ヌッツォ:グラミー賞のベストポルカ部門受賞を狙っています。
姿:それぐらいいい曲ができたつもりですね。バックもロサンゼルスの一流のカントリーミュージシャンが集まってくれたし。
——どんな人に聞いてほしいですか?
ヌッツォ:やっぱり、島田紳助さんに聴いてほしいな、って思いますね。
姿:それは僕も同感ですね。
——歌詞が非常に印象的というか、力強いメッセージ性を感じます。
ヌッツォ:やっぱり、金玉を探すことが一番の近道なんじゃないかって、この歳になってしみじみ思えたんですよね。
——B面の『チヨ子ちゃんの梅酒』では初のデトロイトテクノにも挑戦しています。
姿:プロデューサーの意向だけど、抵抗はなかったよ。
ヌッツォ:そう、やっぱり時代とともに生きていきたいから。フレッシュであり続けたい。フレッシュであるからこそ若者にも新しい音楽を届けることができる、そう思いながらやってきてますね。
(2022年2月14日 アパホテル西日暮里店スイートルームにて収録)
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