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M協・ドラムコーのマーチング、ここが凄い


マーチングを布教したい!!!!

「マーチングを布教したい!!!」というのは、マーチング経験者ならあるあるの感情である。
なぜこんなに素晴らしいエンターテイメントなのに、知名度が低いジャンルなのか。そして、どうしたら素晴らしさを伝えることができるのか。

私なりに「マーチングのここが凄い!」というポイントを書いてみるので、マーチングを知らない人もこの機会に目を通していただけるととても嬉しい。

なお、私はマーチング協会(通称M協)の団体にのみ所属したことがあり、吹奏楽連盟のマーチング、ステージマーチング、パレードコンテストに対しての知見が弱すぎることをご了承いただきたい。
よって、この記事に登場するマーチングという単語は
「(M協・ドラムコースタイルの)マーチング」ということになる。


マーチングに対するイメージ

この記事を読んでいる方にマーチング未経験者はどれくらいいるかわからないが、
恐らくマーチングの知識がない人のイメージって

・動きながら演奏する吹奏楽?
・パレードするやつ?
・軍楽隊的な?
・鼓笛隊的な?

まあそんなもんでしょう。
マーチングバンドの種類や定義はたくさんあり、上記の印象も間違ってはない。

・あゝ、ジャズの源流だね。

というイメージを抱く方は別の意味で鋭いので、仲良くなりたい。

・んん?靴のこと?

いやそれはドクターマーチンだわ。
はい。

・笑コラのでしょ。所さんのでしょ。マーチングの旅でしょ。
この言葉がどれだけ多くのマーチングプレイヤーを苦しめモヤモヤさせたことか!!!!

一般大衆が観ることができるマーチングバンドといえば、お祭りやイベントのパレードではないだろうか。
警察音楽隊や消防音楽隊がスーザでマーチをする硬派な本格派から、
地元学校の吹奏楽部がM8とかスクールバンド用輸入譜面とかを使いながら「初めて行進をしてみた!!」、ってやつまでいろいろある。

が、しかしー!
パレードなんてマーチング活動のほんの一部で、本格的な活動は別にある!!

偏見を承知で、失礼を承知で、でもわかりやすく言うと
パレードとかイベント用のマーチングって活動全体の「おまけ!」で「片手間」である!!!

広いフロアを全力で駆け回って爆音轟音で圧倒させるショーを作っているのに、
あまりにもそれを披露する場がなさすぎて、知られていない。
一部分のおまけ要素しか知られていない。

と言うことで、マーチングの本質的な活動の魅力を
音楽的観点から気づいたことを書いてみる。

マーチングのここが凄い!

集団美とか青春だとか、人間ドラマがあって、、、とか、
それはいわゆる「所さんのマーチングの旅」で作られたイメージだ。
いまだに「笑コラ」の知名度が高すぎて、マーチングというと「ああ、所さんのね」と言われる。
別に否定はしないし、番組を観ている人に何の罪もないのはわかっているが。
まず基本的に吹連の学校がほとんどであり、集団美とか青春だとか、人間ドラマに焦点を当てすぎて、マーチングの魅力が湾曲されて伝えられているのだ。

どうせ非音楽的で泥臭い体育活動だと思ってるんでしょ!!
(偏見持っていそうな人に対しての偏見)

爆音

M協のマーチングを初めて観た人は、その音量にとても驚くに違いない。
とにかく爆音である。

その大きな理由は、爆音にならざるを得ない編成にある。
マーチングバンドは、とにかく人数が多い。
大編成バンドだと、120人以上所属している団体もある
そして、そのうち管楽器だけで70~80人以上在籍していることもある
その規模で言ったら、大所帯の吹奏楽団と同じくらいかと思うかもしれない。
しかし、多くの団体は金管楽器のみで構成されており、さらにごく一部の格式あるバンドは音の通りの良い「ビューグル」で構成されているのだ。
それは爆音にならざるを得ない。

さらに、バッテリーは極限まで粒立たせるためにパリッパリのヘッドにしているスネア、テナー、ベースが複数いる。
吹奏楽だったらどんなに大編成でも1人、稀に2人でスネアをやるのが限度ではないか。しかし、マーチングではスネアだけで10人以上いることもある。
この人数でリムショットを決めるともの凄い爽快な爆音になる。

さらに、ピットには大量のシンバルや、銅鑼もあり、轟音を生み出しているのだ。
しかし、それをさらに上回る管楽器とバッテリーがいるバンドの中では、轟音ではなくスパイスにしかならない。
さらにティンパニなど通常の爆音楽器はもはやかき消されることが多くある。
ニールセンもびっくりだ。

これだけの爆音編成がなぜ成立するかというと、
吹奏楽とは異なり、反響板があるホールで演奏をせず、体育館、アリーナ、屋外で演奏することを想定してショーが作られているからだ。
ごく稀にイベントに参加する際、反響板があるホールで演奏することもあるが、普通にうるさくなる。(仕方ない)
「爆音」でよければミキサーのフェーダーをあげまくって、アンプのつまみを撚りまくれば良いと思うだろう。
しかし、日本ではPA設備や電子楽器を用いることはM協の大会では禁止されているため、生楽器で爆音を生み出さないといけないのだ。
(これはルールによる弊害であるが大きなメリットでもある。)

ありとあらゆる音楽ジャンル、音楽編成があるが、
控えめに言って、生楽器で生み出される最大の音圧を誇る編成なのではないか?
さらに、アンプを通さないため、各楽器からそれぞれの音が鳴り、立体的な音響が構築されるのは大きな特徴である。
しかも、それぞれの奏者は縦横無尽に動き回っており、唯一無二の音響空間を楽しめるのだ!

金管楽器が大量にいるとこういう音響になる

これは魅せれるウォーミングアップだ。
1:10ごろから圧が強い展開になるので要注目だ。
こういう音が作られるのだ。

編成の次に、求められている音楽性が爆音であるということも大きな理由だ。

ハッキリ言って、マーチングのショーが評価されるためには
爆音であることが大前提である。
アンサンブル性よりも爆音性の方が優先される。

ある程度の音量が鳴るようになってから、音質をコントロールしていくものである。

いや、感情的にはアンサンブルや音質を整えないと意味ないだろ?
と思うかもしれない。
だが、パンクだってメタルだって「シャウト」しなければ始まらないように、
身体中のエネルギーを楽器に込めて叫ばないとマーチングは始まらないのだ!

吹奏楽やオーケストラではアンサンブルの和を乱す行為だという理由で即退場になりそうな爆音といえば伝わるだろうか。そもそもの音量の基準が異なるといばわかりやすい。
一般的な吹奏楽でのffがマーチングのmfくらいだと想像すれば良いかと思う。

そして、ショーの作り手はさらなる爆音を求めるため、譜面にfffどころかfffffffffffffffff、さらにはf×♾️という表記をする。狂気だ。
正直、f×5とf×12の違いなんてない。最大の音量であることは間違いないが、もう気分とかテンションで何とかするしかない。

つまりどういうことか、もう言葉では説明し尽くしたため、
これぞ爆音という映像を見せる。

これはみんな大好き1996年のMadison Scoutsのショーのオープニングだ。
この曲はアルトゥーロ・サンドバルという高音高速爆音系トランペット奏者の代表曲である。
爆音の醍醐味が伝わっただろうか!?

ただ残念ながら、あまりにも爆音なのと、立体的な音響すぎるため、録音録画されたものは全てが控えめになってしまう。
生で観たらもっと凄まじいことになってる!!!
みんなマーチングのライブ観に行こうね。


スピード

「マーチング」というくらいだからマーチのテンポで構成されているのかと思うだろう?
「星条旗よ永遠なれ」とか「ワシントンポスト」とか「アルセナール」とか「軍艦行進曲」とか、、、、BPM110〜130くらいのテンポ感こそマーチのテンポだ。

しかし、M協のマーチングといえば、
(もちろんショーによって例外はたくさんある)
BPM160以上が基本であると言っても過言ではない!
また、エンディングやパーカッションフィーチャーではBPM180~200にまで達する。

逆に130くらいで進行されると、「のんびりして、もさっとしているなぁ〜」って感覚になる。

(吹連マーチングのショーは割と150以下のテンポで構成されることが多いと思う。
その結果、何となく煮えきらない、生ぬるい雰囲気になる気がしませんか。)

どうしてここまでスピードを求めるのか、推測してみる。

マーチングのショーは基本的に大会の時間制限の基準日合わせて構成されることが多い。国内だと約8分、DCIだと約12分になる。
この限られた時間の中でたくさんの情報量を詰め込まないといけない。
その結果必然的にテンポをあげれば、物理的な音符の数やコンテの数、展開の数が増えることから高速化が進んでいったのではないか。

また、単純に速いテンポで音が詰め込まれると興奮する。
ある団体が速いショーをやると、それに影響されて他の団体も速くなる、
昭和のマーチングはそこまで速くなかったが、年々高速化していることから、高速化は伝播するのであろう。

ところで「一定のテンポ」には、聴き手をリズムに乗らせるという役割がある。マーチなら歩かせるように、クラブなら踊らせるように、ポップスならみんなで歌えるように、といった効果がある。
しかし、マーチングのショーにはそのような効果は必要としない。
乗らせる必要も一緒に歌わせる必要もない。
まるで短編映画を見ているように、フロアで起こっている出来事を「作品」とし、分厚い芸術を作るのだ。そして観客は、観客は目まぐるしく変化する情報を鑑賞し、浸り、溺れ、没入する。
その結果、さまざまなテンポや要素を詰め込んでいるのだと感じる。

あと、速いテンポは純粋に興奮する。テンションが上がる。溺れたい人が速さを求めるのは必然なのかもしれない。


アレンジ

M協マーチングの最も優れている特徴なのに、中々語られない魅力が「アレンジ」である。アレンジ芸術だ。

基本的に、マーチングのオリジナル曲はほとんど存在しない。
大体は既存曲の編曲で構成される。
しかも、団体ごとにオーダーメイドでアレンジされるのだ。

多くのマーチング団体には専属のアレンジャーがおり、団体に合わせて譜面を作成する。つまり、唯一無二のアレンジが団体ごとに存在するのだ。
そしてショーや団体のコンセプトに合うように原曲が「魔改造」されるのだ。
これが吹奏楽との大きな違いだ。

吹奏楽も管弦楽作品などを吹奏楽編曲して演奏することがよくある。
また、既存の吹奏楽曲も大会の制限時間に合わせてカットすることもある。
しかし、たびたび論争になるのが、その編曲の仕方やカットの仕方であり、
余計な音を付け加えたり、テンポをいじりすぎるとたちまち悪評がたつ。
原曲をなるべくそのまま再現することが評価される風潮なのだ。

しかしM協は違う!!!魔改造だ!!!
さまざまな曲のさまざまなフレーズを自由に詰め込んで、唯一無二の音楽を構成するのだ!

そのうち「このアレンジがすごいぜ」シリーズもやりたい。

あと、マーチングを鑑賞するとき、原曲を意識するとより面白く噛み砕けると思う。
「え、この曲がこんな感じになるの!?」と、さらなる驚きを感じることができるはずだ。

ところでマーチングの大会のプログラムにアレンジャーの名前って滅多に記載されていない。それどころか、多くの団体(特に学校)ではホームページなどを見てもアレンジャーの名前が見当たらないし、
顧問や部長の挨拶はあってもアレンジャーの挨拶はない。
もっとM協さんはアレンジャーという職業をリスペクトした方が絶対いいのにな。


長文になりましたが
私はマーチングの音楽的魅力として
爆音、スピード、アレンジ
の3つをもっともっとわかりやすく語っていきたい。

お読みいただきありがとうございました。






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