②意志力は強くはならない?

こんにちは。今日は意志力のお話、その2です。

その1は「意志力は鍛えることができる」ということでした。方法は「やりたくないと思っていることをやる!」でした。(やりたくないことは当然やりたくないので、難易度の低い簡単なことからはじめましょう。)ということでした。

さて、以上のことを実際やってみればわかると思いますが、これまでやりたくなかったことが、意外にすんなりできてしまうことに気づくでしょう。と言っても何でもかんでもすんなりできてしまう、とか、やりたくないことが全く無くなる訳ではありません。魔法ではないので(笑)。でも、続けていると不思議なぐらい、だらしなかった自分が、コントロールできなかった自分が、自制できなかった自分が、なんとなく変わっていくのに気づくことでしょう。

でも、意志力も、学力、筋力や体力と同じ。鍛えるのを辞めてしまうと残念ながら元に戻ります。

ここで、勘違いをしてはいけないことがあります。それは「意志力は鍛えても強くはならない」ということです。意志力は強くはなりません。認識が変わっただけです。「やりたくない(面倒くさい)」ということが「やりたくない程でもない(面倒だと思わない)」ということに意識が変わっただけです。

人間は元々、意志が弱いようにできています。というより意志が弱い個体が生き残ってきました。目の前の食べ物の誘惑に負ける方が(食べ物に執着心がある方が)、サボる方が(カロリー消費を抑え、体力を温存する方が)、立場をわきまえず交尾する方が(子孫を多く残す方が)生存には有利だからです。意志が強く、自制できる方が生存に有利ならば、今頃人類は優れた個体ばかりになっているはずです。

そんなはずはない、トップレベルの人や一流の人、成功した人(ここではどのような人がそうであるかは述べませんが)は意志力が強いはずだ、と思われることでしょう。

でも、果たしてそうでしょうか?

トップレベルの人や一流の人、成功した人は、自分は意志が強いとは思っていません。意志が弱いことを自覚しているからこそ、誘惑には近づかないこと、環境を整えることに力を注いでいます。難易度を下げる努力をしています。

わかりやすく説明します。朝、きちんと起きるためにはどうしたらよいか?簡単ですよね、早く寝る、睡眠の質を上げる、です。「もっと眠りたい、起きたくない、だけど、強い意志力を使って起きる」というやり方には限界があります。人生を思うように生きている人は、そんなところに意志力を消費しません。意志力は体力と同じで、使うたびにどんどん消費していきます。使い切ると枯渇し、枯渇すると簡単に誘惑に負けてしまいます。ストレスがたまると誘惑に負けてしまいやすくなるのは、そういった理由からです。

心理学の実験で、3か月の禁煙にチャレンジさせ、そして、成功した人たちを事後調査し、「自分は意志が強いと思うか」、「3か月の禁煙で意志が強くなったと思うか」という質問をします。肯定的な回答をした、つまり「自分は意志力が強い、あるいは強くなった」と回答した人は、そうで無い人に比べて、格段に再び喫煙を始めてしまう人が多いそうです。つまり、意志力が強いという自惚れが禍するということです。人間は元来、意志が弱いのです。

やりたいこと(報酬系)を我慢する、やりたくないこと(苦痛系)をする、というのは前頭前皮質(社会脳)が担当していますが、新皮質よりも本能の方がはっきり言って強いです。

最後に、まとめ。

①意志を鍛えて認識を少しずつ変えること、②意志は強くない事実を受け入れ、環境を整え、難易度を下げること、これらのことを続けないと、人生を思うように生きるのは難しいと考えます。

次回は、その3。「いや、実際に意志力が強い人がいるよ!」です。

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