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川崎から熱海まで24時間不眠で歩いた話~第ニ章~

9時間ほど寝たおかげで驚くほど身体が軽い。これは本当に前回を超えられるような予感がしていた。
まずはしっかり朝食を摂る事が大切だ。今回は私がいただくのは、友人G特製のプロテインパンケーキです。
普通のパンケーキの小麦粉がプロテインパウダーに置き換わっただけの代物なのだが、UberEatsに引けを取らない素晴らしいものだった。

Gの作ったプロテインパンケーキ

はい、優勝確定ですね。男の料理はガサツで汚いという固定観念を根本から覆す一作だ。見た目はもちろんのこと、味と栄養価も申し分ない。高たんぱく低脂質を金科玉条とする我々トレーニーからするとこれ以上の食事は無い。
身体全体に染みわたる栄養、そしてパンケーキに隠れるように入っていた餅を噛み締めながら、熱海でやりたいことや今回のチャレンジについての計画を熱く語り合った。

腹ごしらえも済んだところで、タイトルにもあるスタート地点、川崎駅へ向かった。
この時点でGは膝が痛えなどといきなり不安を煽る一言を漏らしやがったが、どうすることもできないので薄ら笑いを投げかけてやった。聞けば一昨日めちゃくちゃ脚トレで追い込んでいたらしい。何やっとんねん…

さて、川崎駅に着いた。
コロナ禍とはいえ久方ぶりの制限フリーなお盆休みである。午前9時にもかかわらず駅は結構混んでいた。オシャレに着飾った女性。これから帰省するのであろう家族。部活の試合に向かうのであろう学生。様々な人が行き交う中、デカいリュックを背負った私と、ただ単にデカいGが闊歩していく。Gはほぼ手ぶらだから周りから見たら何のコンビか見当もつかないだろう。
川崎駅のグリーンの看板。ここがスタート地点である。まるで青信号のように見えたのは私だけだろうか。ただの無機質な看板。されど看板。私たちのくだらないチャレンジを暖かく応援してくれているように見えた。待ってろよ、JR熱海駅の看板…

まずは横浜を目指して歩いた。まだまだ都会なので見どころはたくさんある。意外なほど川崎は閑静な住宅地であったので、住んでみるのもありかもしれない。まあそんな家賃を払えるほどの金は持っていないのだが。
スタートした矢先、Gは今回のチャレンジをInstagramに投稿していた。Instagramを一切やらない私はまあ好きにしたらいいという心境だったのだが、Gが推敲をしっかりするもんだから長いのである。こんなデカいマッチョが歩きスマホをしたら殺人兵器と化すので、私がGのすぐ前を歩き、危険回避の役割を担った。
24時間不眠で歩くという最中にもInstagramは手放せないのか。SNS社会が生み出した化け物とはこのことである。

ようやくGの推敲が終わり、投稿が済んだ。やれやれ…
栄養と休養をしっかりとったことが功を奏し、横浜までの道のりは実に順調だった。半年以上会っていなかったGとは話題に事欠くことなく、あれやこれや話しまくった。仕事の事、筋トレの事、そして恋愛の事…
その時私は付き合って2か月の彼女がおり、存分にのろけさせてもらった。彼女のいないGからするとうっとおしい事この上なかったかもしれないが、Gのインスタ推敲に付き合ってやったのだ。これぐらいは許されるだろう。
まあこのチャレンジの10日後にLINEで一方的にフラれるという憂き目に遭うのだが、それはまた別のお話っ!☆

普段京都に住んでいるため、横浜周辺の高層ビルが印象的だった。これぞ都会。摩天楼と呼ぶにふさわしい建造物が乱立する様は古都とは違う趣があった。その間をうねうねと蛇のような首都高が走っている。そんな超先進的な景色を
「歩く」
という原始的な行為で流していく。太陽は薄雲を被っており、日差しは柔らかい。身体にぶつかったビル風が汗を冷やし、後方へと流れていく感覚が爽快だった。

関節に負担をかけないよう、太ももの筋肉を意識しながら歩く。この日の為に会得した疲れない歩き方だ。筋肉を意識しながら動かすというのはマッチョの得意技。Gもすぐに歩行に取り入れ、私たちは筋肉の声を聞きながら歩いた。

「そろそろ栄養入れた方が良くない?」

そんな筋肉、もとい身体の声が聞こえたのはみなとみらいを通過したあたりである。ここで一度昼食を摂る事にした。本来ならばあまり長時間座っての食事は避けたいところだが、まだ序盤なので大丈夫と判断し、ラーメン屋へ入った。適当に入った店だったが、後から調べると食べログ3.5越えの人気店だった。
汗もかなりかいていたし、迷惑客の烙印を押されることを懸念したが、けっこう空いていたのでその心配はなさそうだと勝手に自己判断した。
ここのラーメンがまあ美味かったのである。あっさりしたスープと麺が運動後の身体に染みわたった。
これで塩分とエネルギー補給はばっちりである。
Gは相変わらずラーメンの映えを気にしてスマホをこねくりまわしている。またインスタにあげるのだろうか。やはりこいつ、SNS中毒である。

というド偏見もそこそこに、ラーメン屋を出た。私たちが出るころには段々と混み始めていた。良いタイミングだったのだろう。
やはりというか、Gはラーメンの感想をインスタにアップするための推敲タイムに入った。ラーメンの感想で書くことってそんなにある?
食レポがド下手な私はこう思うのだが、一旦推敲を始めたGは喋らなくなる。仕方無いのでまた私は先頭に立ち、危機回避を担う監視役となった。

まだまだ先は長い。Gも道中インスタには飽きてくるだろうと考えていた。しかし、このインスタが旅の鍵を握る事になっていたとは、この時私は知る由も無かった。

〜第三章へ続く〜



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