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べしです

夢を見た。

わたしはMacBookを使って、なにか作業をしている。イラストを描いているとか、webでなにかを検索している、とかそういう感じ。
「あれ?ここ、どうするんだっけ?」とわたしが呟くと、何かのついでに寄った感じの菅田将暉が、わたしの手元を覗く。
「どれ、見せてみてください。あー、コレ、POPアップが要りますね」
と、言って、こっちを振り向いた。
「ほら、領収書、買った時の領収書、持ってます?」
「え」
「そこに、書いてあったでしょ。何日以内にPOPアップの申し込みをしなさいって」
「いや、ええと、そうだっけ?やってないけど…」
「あー、もったいない。ベシですね。それは…ちょ、貸してみてください」
と、わたしのマウスを取り上げ、サクサクと設定部分をチェックしていた。
「あー、ダメだこりゃ。入ってないっすね。あー、もう無理ですね」
そしてまた、くるっとわたしの方に顔を向けて、真顔で言った。
「ベシです」

えー、ぜんぜんダメ?とかなんとかわたしは呟きながらMacBookの画面を覗き込み、心の中では「領収書さえあれば、今からでも間に合うのでは?」と思っていた。

菅田将暉はまだ小さいわたしのムスメを相手に遊んでいた。ムスメは彼の膝によじ登り、キャッキャと笑いながら手を叩いて喜んでいる。
わたしは菅田将暉を部屋の隅に呼び出し、質問する。

「さっきあなた、わたしにベシです、って言ったよね」
「言いました」
「それって、バカです、とかムリです、という意味じゃない?」
「え、いや」
「でも、バカって言ったら、年上のわたしに失礼だから、ベシっていう言葉に置き換えて言ったんだよね」
「あー、それは…」
「で、わたしが知りたいのは、それがあなたのオリジナルなのか、それともZ世代の若い人たちの共通語なのか、それを教えて欲しいの」
「え?」
「そこを知らないと使えないじゃない?使わなくても、若い子たちの話を解読できないじゃない?」
「あー、でも、それはボクからは言えないですね」
そこをなんとか教えて欲しいと一歩前に踏み込んだら、場面が変わっていた。

わたしの口の中に、違和感がある。何が入っているんだろうと引っ張り出したら、舌と同じくらいの大きさと厚みに切られたコンニャクが、色のついた厚紙に貼り付けられていた。それはもう何週間も前から入っていたようで、紙はふにゃふにゃになっていて、こんにゃくも色が悪い。わたしは洗面所でそれをよく洗い、もう一度よく見ようと思った。すると洗面所では、ハンドソープのビンが倒れていて、細い口からトクトクと石鹸が絶え間なく出て来る。わー、もったいない、とビンを起こしてから、ちょっと考えて、コンニャクも手拭きの紙と一緒に丸めてゴミ箱に捨てた。

「こんにゃくが口の中に入ってたわ」と、職員室にいる若い男性の先生に話しかけたら、「ああ、何かの実験ですかね?」と言う。
わたしはこんな実験、何のためにやるんだろうかと考えたが、次の瞬間、ハッと気づく。
「二枚舌か」
そこで目が覚めた。口を開けっぱなしで寝ていたようで、口腔内がガビガビに乾燥していて、うがいをするまで口の中にもう一枚舌が入っているような感じだった。

今日も気温が上がりそうです。みなさまご自愛ください。

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