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にどねを

今朝、ドスドスと足音がして、部屋のドアをバーンと開ける気配がした。廊下の明かりが部屋に射し込んで眩しい。そして逆光でシルエットになったオットが、「おい!いつまで寝てるんだ!7時51分だぞ!起きんか!」と怒鳴った。「え!7時51分!」とわたしは反射的に答えた。まずい。ムスメは今日、部活に行くから7時に起こしてくれと言っていたのだ。

オットがそう言って部屋から出ていくと、わたしは頭を再び枕の上に落とした。そして、どうしよう困ったな、車で学校まで送るか?その前に朝ごはんの用意をしなければ。まいったなー、と思いながら、また寝てしまった。

はっ。わたしは寝過ごした上に、さらに二度寝してしまった。そう思って目を開けると、部屋が暗い。おや?なぜこんなに暗いのだ?と、枕元においたスマホを手に取る。5時45分だ。あれ?さっきオットから叩き起こされたのは夢だったの?あんなリアルに怒られたのに?

外は雨で、夜明けはまだ先のようだった。それでわたしは、また寝てしまった。

いかん!さっきのは夢じゃなくて、本当に目が覚めたんだった!と、夢の中で考えて、目を開けようとがんばった。開かない。次々に夢が展開する。
誰かが着替えを持たずに銭湯に行っただの、海岸の堤防脇にたくさんの長細い箱が散らばっていて、その箱に「角海老」と印刷してあるだの、バイクで何かを配達する人がカーブを曲がってこっちへくるだの、古く壊されそうになっているアパートに今さら部屋を借りようとしているだの、わたしじゃない誰かの走馬灯を代わりに見ているようだった。

ぶわ。水中から水面にやっと顔を出したような感じでわたしは息を吸った。やっと本格的に目が覚めた。雨はまだ止んでいなくて、時計は5時50分だった。えー、たった5分であんな走馬灯を見ていたのか。

明日も早い。もう寝よう。走馬灯は疲れるので、だれかにバトンタッチしたい。

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