見出し画像

クサイいいニオイ

洗濯物は、基本的に部屋干しする。一年間で外に干す時期は、7月半ばから9月末あたりまでの3ヶ月程度で、あとは家の中にぶら下がった洗濯物と一緒に暮らしている。オットがかなりの花粉症持ちであること、福岡は黄砂がひどいこと、夏場は光化学オキシダントの影響もあること、冬場は日照時間が短くて十分に乾かないこと、などがその理由である。

さて、部屋干しの難点は「ニオイ」だ。「生乾き臭」については、こまめな換気とエアコンや扇風機によっての速乾でクリアできる。部屋干しでもにおわない洗剤も販売されているから、どうしてもの時はそれを使うことにしている。ここでの問題は「いいニオイ」である。

ムスメが学校から三週間に一度、給食配膳用のエプロンを持ち帰る。エプロンはワンサイズで、かなり大きい。中学生ともなると、大きな子は身長が170cmを超えるので、それをカバーするためだ。ムスメが着るとひざ下くらいまであるようなビッグサイズ。そのエプロンがすごいニオイを発する。各種柔軟剤のミックス。ニオイのつきやすい素材なのかもしれないが、とにかく強烈なニオイが染み込んでいる。何年もかけて、週に一度ずつ、いろんな種類の柔軟剤や洗剤のニオイを含みながら、熟成されているのだ。同時に入れた他の洗濯物にもニオイが移るほどの威力だ。そのエプロンにアイロンをかける時など、鼻が曲がりそうになる。

クラス懇談会の時に、隣に座った人から柔軟剤であろうニオイがした。鼻腔の奥にツンとしみる。目がしぱしぱする。「柔軟剤、使ってます?」と聞いたら「あら、わかります?わたし、◯ウ◯ーの香りが大好きで!」とにこやかに答えてくれた。そうですかー。海外の柔軟剤は独特の香りですもんね、と返したら、「そうでしょ!」と満面の笑みだった。お好みの香りを否定するわけにもいかない。しかし、これが給食エプロンのあのニオイの一部なのだと確信した。

どうして洗っても洗ってもニオイは落ちないのか。「香りが長続きする効果」は、「広告宣伝に偽りなし」だ。他のものと分けて洗っても、エプロンそのもののニオイが消えていないのだから、部屋にはそのニオイが残る。これは結構つらい。

消えないニオイのことで思い出したことがある。
学生の時「古着屋さんでいいもの見つけた」と嬉しそうにそのジャケットを着てきた友だちがいた。確かにイギリス製のいいもので、スタイリッシュに決まっていた。しかし、どうも変なニオイがする。どうも脇あたりからだ。彼は『全国染み抜きコンテスト1位受賞』の店に持ち込んで相談したら、「わたしもいろいろと研究をしているのですが、ワキガはまだ成功していません」と言われたそうだ。そして、そこには香水のようなものがたっぷりと含ませてあったらしく、ジャケットの持ち主は「ニオイを持ってニオイを制す作戦」だったと思われる。人工的な香りと体臭があいまって、かなり複雑な構造になっていたのだろう。

ニオイのよしあしは、個人差が大きい。わたしがいいと思う「ティーツリー」や「ミント」の香りも、ムスメやオットは「クサイ」「変なニオイ」と言う。だから、そっとしておくほかないのかもしれない。

さて、そろそろ給食エプロンが乾く。これからアイロンをかけることを考えると憂鬱である。


サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。