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大食いという仕事

今年の正月以来、ケーキを食べていない。ここのところ「とうもろこし食べたいな」とささやかに願う自分がちょっと可哀想でもある。栄華を極めた貴族が落ちぶれてしまった、みたいな気分なのだ。いや、わたしの人生、一度たりとも栄華は極めていないし、貴族でもないので、そもそもの例えがおかしいけれども。

病気をきっかけに、生活を見直すことになった。中でも睡眠と食事は改善が急務だった。それで「早寝早起き油抜き」である。揚げ物以外にも、生クリームやチョコレートなど糖分と脂肪分が多く含まれるもの、特にスイーツは栄養素とは関係ないから、食べる機会が激減した。それなのに、痩せない。苛立つ。

最近、オットがYouTubeで毎晩のように大食いを見ている。知らなかったが、YouTubeには何人もの若い女性が大食いのコンテンツをアップしている。中でも度肝を抜かれたのが「もぐもぐさくらチャンネル」の如月さくらだ。「んふふ♡」「おいしー」「あは♡」「好みの味!」と、合いの手を入れながら、巨大などんぶりに盛られたラーメンや、塔のようにそびえるパンケーキを平らげていく。6kgくらいの量なら米も麺も30分もあればペロリだ。ざるそばの大食いチャレンジをした直後に、「天丼ください♡」とか言う。ビールも生中だったら二口で空になる。底なしの胃袋を持っているのか、食道が異次元に繋がっているのか、とにかくあっという間に食べ物、飲み物が消えていく。

しかし、彼女は機械ではなさそうなので、臓器はフル稼働していると思われる。胃腸のほか、沈黙の臓器と呼ばれる膵臓、肝臓あたりが無理していないかハラハラする。10年、20年後、どうなっているのかが気がかりだ。「わたしはもう十分に食べたからいいの」と思っても、生きている限り、食べていく必要がある。食べたいものが食べられないのは、結構しんどいぞ。大食いは芸といえば芸なのだが、実際、映像の前後に「大食い・早食いは危険な行為です。真似しないでください」と注意書きが出るのだから、体を張った危険な仕事だ。

自分がケーキを食べられないことと、大食いYouTuberは別に関係がないのだけれど、老婆心ながら彼女たちの健康が気になって仕方がない。


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