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地下鉄10分で別れの空港

転勤族が「福岡は二度泣く」と言う。「福岡へ」と転勤を言い渡されて、九州へ左遷かと泣き、しかし福岡から異動となった時、福岡から離れたくない、と泣くのだそうだ。本当にそうなのかなあ。

わたしが20代の頃、都市伝説を聞いた。

東京では家賃が高いので同棲率が高いが、福岡は物価もそこそこで、若い女性が一人暮らしをしやすい。だから、独身の男女比が男<女である。

福岡は支社・支店が多く、転勤族が多い。単身赴任の男性も多い。

単身赴任の男性は、夜や休日がヒマである。

会社や飲み屋で、独身女性と単身赴任男性のカップルができる。
そんなわけで、不倫率が高い。


ここまでが都市伝説。周囲を見回してもそんな人はいなかったように思う。でも、そういう人は立場をオープンにしないから、本当のことはわからない。当時、「福岡に転勤してきた独身の男性は、女性を選び放題だ」と聞いたことがある。確かにわたしの周りは自分を含め、幅広い年齢層の独身の女性ばかりだった。しかし、「選び放題」とはバカにしている。女性はモノじゃない。男尊女卑の発想だと、独身女性は「選ばれてない状態」なのかもしれないが、実のところは男性を「相手にしていなかった」だけではないか?女性が仕事をして一人で暮らすことがそう難しくない街だ。仕事で上を目指したり、留学や自分磨きのために海外へ行ったり、そういうことにエネルギーを注いでいる人が多かった。もちろん「どこかにいい人いないかしら」と言ってはいたが、誰でもいいというわけではない。ましてや「選ばれたい」なんていう発想など、当事者にはなかった。…だから都市伝説か。

ところで、福岡空港は全国でも数少ない都市圏の空港だ。天神から地下鉄で10分もあれば着く。見送りに来られても、あっけないほどあっさりと、「じゃあ」となる。逆に見送りに行った方も、10分後には都心の雑踏の中にいて、すぐに日常に戻ってしまうから、別れの余韻は味わいにくいかもしれない。今は、SNSなどで繋がっていれば「いつでも会える」感覚が強いから、訳ありだろうがなかろうが、空港は特に悲しい別れの場所ではない気もする。

なんでこんな話を書いているかというと、『列島縦断・47都道府県 自由律俳句の旅』という企画に参加したからだ。その土地の名物を織り込んで自由律俳句を詠むのだが、福岡は名物が多すぎて、どれを詠もうかと迷った。そしていくつか詠んでみて「明太子」をテーマに投句してみたものの、自分のレベルの低さに凹んだ。他の都道府県の句は、どれも穏やかで美しく、北海道から沖縄まで、全国を旅する感じで楽しく読んだ。後日、音声化されるそうなので、それも楽しみ。

しかし、せっかくいくつか詠んだから、ついでにそれをテーマに書いてみるか、と思う。今日からしばらく、「福岡名物」の話がちょいちょい出て来ると思う。





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