見出し画像

だいきち

中学生たちと一緒に初詣に行った。松の内ももう明けてしまって、今更ながらではあるが、スッキリと晴れた気持ちのいい日に初詣ができてよかった。

わたしはここ数年、おみくじを引かないでいたのだが、みんながワイワイ盛り上がっていたので、ええい、と思い切って引いてみた。結果は「大吉」。大吉を引いてみると、なんだか嬉しかった。

一方、「凶」を引き当ててしまった子がいた。もしこれが漫画だったら、「ガーン」という大きな文字が頭から落ちてきて、顔にタテの線画がシャッと入り、目が真っ白になっているだろう。まさに彼はそんな佇まいで、テンションが下がり切って目の焦点も合わないくらいの落ち込みようだった。ついさっきまで、「今年はいい年になるように、色々と頑張りたい」と言っていたのに、出鼻をくじかれた気持ちだろう。

「境内に設けられた紐に、おみくじを結えたらいいよ。よくない運は置いて帰ろう。」と、言われてようやく「そうだね…」と気を持ち直して結び始めた。「あっ」と声がして振り向くと、彼は破れた紙切れを両手に一枚ずつ持っていた。おみくじの結び目を強く引っ張りすぎて、ビリッと二つに裂けたのだった。「なにからなにまで…不吉な…」と落ち込んでいる。

わたしは自分が大吉だったからと浮かれてはいられない。「どんまい」と小さく声をかける。「ああ、はい」と彼もまた小さく頷いた。

彼を見て、おみくじくらい何回でも引き直していいんじゃないか、と思っていたら、強者がいた。一人の女の子がおみくじを三種類買っていた。普通のやつと、恋みくじと、干支みくじだ。そんなに?と思ったが、彼女は真剣である。そして境内の紐には結えず、財布の中にしまっていた。その財布がぷっくり膨らんでいるので、なにが入っているの?と聞いたら、「これは金運のお守り、これは佐賀の神社のおみくじ、これは開運の石、これは干支のお守り、これはお正月に引いたおみくじ」と、お金よりも開運アイテムやよかったおみくじがぎゅうぎゅうに入っているのだった。

「運も実力のうち」とか言うけれども、彼女は「実力も運のうち」を体現しているのだな、と思った。

今年はどんな年になるのか、結局は自分次第だと思うんだけど、でもなんとなく「大吉」の魔法の粉でパッと明るくなりそうな気がする。



サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。