またもや

夢を見ていた。起きた時は、なにもかも明確に覚えていた。そして約14時間経った今、思い出せるのは、断片である。

一番印象に残っているのは、母とトイレだ。トイレのドアを開けると、そこには何もなかった。ただグリーンのビニルタイルが貼られた床に、小さな穴が一つ開いているだけだ。便器がない。
とっさに出た言葉は「お母さああん!!」だった。ニュアンスとしては、迷惑そうな、呆れたような、そんな声が出た。

母は、なぜかまだ若く、だけどすごく疲れているようだ。別の部屋の床に寝そべって、「なんかきついんで、やりかけたけど、まだ掃除が終わってなくて」と言う。そうだった。母という人は、潔癖症のために家が片付かない、そんな人だ。やる時は徹底的にやるが、少しでも納得がいかないとあきらめて放り出してしまう。だから、トイレも分解してしまったのだ。便器ごと外して、丸洗いをしようとしたのだろう。そして、たぶんもうあきらめている。

しかし、あんなものをどこで洗うというのだ。わたしは風呂場のドアを開けた。「うっ」と声が出る。なんと、そこにはめちゃくちゃに汚い便器が横倒しになっていて、それを洗っていたであろうトイレブラシが、これまた汚れきった状態で置かれていた。その汚れがなんか変だなと思ってよく見ると、それは汚物ではなく、海藻のようなものが貼り付いているのだった。
なぜ海藻が?しかし、それは茶色く干からびていて、キレイとは言えない代物だった。

わたしは一緒にいた男性に、「どうしよう」と言った。その人はオットのようであり、そうじゃない人のようでもあったが、「困ったな」と言ったきり、じっと黙ってそこに立っていた。あかんわ。自分で決めなくちゃ、とわたしは思い直し、洗って元に戻すしかないのだと思い至る。

「もういいよ、お母さんは休んでてー。わたしが洗っておくから!」と母に声をかけると、寝転んだまま体を半分起こすような感じでこっちに向かって「うーん。ごめんね。ありがとう」と言って、もたげた頭をコトン、と床につけた。そこにはなぜかタライのように大きな、白い磁器のお茶碗が転がっていて、その中にはうっすらとお茶が残っていた。そのお茶の中に、母は頭を落としたので、ぺちゃん、と音がして髪が濡れたようだった。あーあ。わたしはガッカリする。

次に思い出せる場面は、わたしはツルツルすべる傾斜のついた床で、下敷きのようなプラスチックの板の上に背中を乗せて、仰向けの状態でスルスルと滑っているところだ。ボブスレーとかリュージュとか、そういう感じだけれど、コースもなければ器具もない。ただ自分の背中がプラスチックの板と一緒になだらかな傾斜の床を縦横無尽に滑っていく。滑るメリットはなんなのかぜんぜんわからないが、わたしは滑るしかない。気づけばわたしは、その滑り界のエースといった感じの男性の脇を通り抜けるように滑っている。一旦は離れていくが、また磁石に引き付けられるように近づいていき、ぶつかることなくその脇をすり抜けて離れていく。自分で滑る方向を決められない。板の上に乗っかっているしかないのだ。

そのエースはずいぶんとかっこいい人で、近づくたびになんだか恐れ多い気持ちになる。わたしなんか、と思う。わたしなんかがこんなかっこいい人のそばにいては申し訳ない、とか思う。自分が醜くて、惨めで、恥ずかしい。でも、自分の意志とは関係なく、わたしはその人のそばに滑っていく。しかしまた、スーッと離れていくので、「ああやっぱりな」とガッカリする反面、ホッとしている自分もいる。わたしと彼はつり合いが取れない、と比較している。

そんなこんなで、意味も脈絡もない夢を見ていた。目が覚めたときにものすごく疲れていた。疲れをとるために寝ていたはずなのにな、とガチガチに凝った肩をさすりながら起き上がった。憂鬱な1日の始まりであった。

今日はゆっくり眠りたい。

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