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MUSIC

音楽には縁のない家庭に育ち、自分も特に音楽に傾倒することもなく大人になった。どこか音楽は遠い存在で、ラジオから流れてくる音楽だけが、わたしの日常にあった。好きなアーティストも「音楽」という括りではなく、「詞の世界」が好きだからという理由でファンになることが多かった。

ムスメが中学生になって吹奏楽部に入った時から、何かがシフトした。生で聴く機会が増えたことが大きいと思う。音楽の持つメッセージの力は圧倒的だ。たとえそれが中学生のブラスバンドであっても、心にずしんと響く。言葉では表せない感情が次々と生まれる。もしかしたら「詞の世界」は素敵だけれど、そこにメロディがなければ、ある一定の範囲以上のことは表せないのかもしれない。言葉という概念に縛られず、想像力には限りがないことをメロディは教えてくれる。

部活で2年半クラリネットを吹いたムスメだが、楽器はリコーダーしか吹いたことのない未経験者だった。でもいつのまにか吹けるようになって「クラリネットを吹くのが楽しい」と言うので、ああこれが音楽というものか、となんとなく理解できるようになった。

先週末、ムスメの中学生活最後の演奏会があった。「あのね!後輩の子と、ぴったりと合わせることができたよ!すごくない?」と嬉しそうに話していた。いや、ぴったり合わせられんやったら演奏どころやなかろうもん、と言ったら「後輩と合わせるのがどれだけ大変かわからんのか」という趣旨のことを訴えた。つまり、このコロナ禍において、練習時間がわずかしかない中で、技術力の差を埋めた後輩の努力、阿吽の呼吸ができる信頼関係の構築、そして一緒に演奏をコンプリートできた高揚感が、どれだけ素晴らしいものかと滔々と語った。…そんなボキャブラリーはないので言葉にはできなかったが、「いやいや、だから、すごいことなんだってば!」とジタバタするムスメの目がそう訴えていた。

ちなみに今、オットの中では「エレファントカシマシ」が大流行中である。「えー、今さらエレカシ?」と驚いたが、ムスメの部活によって影響されたわたし同様、彼の中でも何かが変わったようだ。

(余談ですが、全国から選抜された中高生の「吹奏楽スーパーバンドフェスティバル2020」はクラシック音楽専門配信サービス Tutti で11月1日から有料配信されますってよ)


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