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とびこむ

目が覚めて、ああ、夢か、とホッとする。

そこは温泉地のようで、坂道の両側に民家があるのだが、ポツポツと旅館も並んでいる。源泉掛け流し、というのか露天風呂にお湯がどんどん流れ込んでいる。

坂道の端から見下ろすと、ちょうど露天風呂が見えた。わたしはそこから飛び降りてみようと思った。高さは3メートルくらいある。道と温泉の間には小さな川があり、その幅は2メートルくらいだ。わたしの足でもなんとか川を飛び越えられるのではないか、と考えていると隣に先輩のスギノさんがいた。「危ないよ、やめときな」と言われるが、「いや、なんとかなると思います」と振り切って飛び降りた。温泉に飛び込んだのだから、当然といえば当然だが、バッシャアアアアアアンとしぶきを上げて、わたしはずぶ濡れになった。

スギノさんはほらね、言わんこっちゃない、という感じでバスタオルを巻いていつの間にかお風呂の端に座っている。「足湯してから入ろうと思って」と言う。なるほど。

お風呂を上がって外に出ると、友だちのミホちゃんがいた。「や、久しぶり」と声をかけると、「シッ。今、浮気調査をしているところだから」と唇に人差し指を当てて言う。えー、いつの間に探偵になったの?と聞けば、「いや、ちょっといろいろあってね。ほら、出てきた!隠れて!」物陰に体を寄せて見てみると、あれは芸人だな。テレビで見たことのある人。有名人を追いかけるとは、なかなか腕のいい探偵なのだなミホちゃんは。

「こっち」と腕を引っ張られて、民家の中に入る。そこはごちゃごちゃした居間で、ゴミなのかインテリアなのかわからない置き物がたくさん並んでいた。その中からミホちゃんはこれが証拠ね、と言いながら一つの人形を持ってきた。木の仏様のような、七福神の寿老人のような彫り物なのだが、体はくり抜かれており、その中にビニル製の女の子の人形が押し込まれていた。さらにそれを緑色の液体が流し込まれ、それが漏れないように、プラスチックの板がキッチリとはめ込まれていた。

一言でいえば、印象は「気味悪い」。これイカゲーム?「なんの証拠?」と聞くとミホちゃんは「あの人が犯人よ」と指差す。そこにはさっきの芸人とは別の男性が立っていた。

わたしはどうしたら解決するんだろうかと考える。何を解決すればいいのすらわからないのに、何を解決しようと言うのだろう。

わたしは未解決のまま、またしても風呂に飛び込もうとしていた。

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