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中学2年生の冬

昨日は冬休みの最終日。うちにムスメの友だちがふたり来て「高校進学どうする?」の話をしていた。部活の先輩たちの受験が目前なので、自分たちもそろそろ考えないと、と思っているらしい。 

ひとりがスマホで高校の口コミサイトを検索しながら「ぎゃー、ここの高校はダメ!評価がひどい」とか言っている。もうひとりは、「名前さえ書けば合格する学校がいい」と、おそらく市内でいちばん偏差値が低い学校を希望する。「あたし、バカやもん」と言うのだ。

わたしは思わず口を挟んでしまった。バカじゃないよ。バカなもんか。勉強の仕方がまだわからないだけだよ。「えー、でも数学とか全然わからないです。どんなに教えてもらっても、何を説明されているのか全然わからない」

あー、それは基礎でつまづいているからだよ。小学校の時のドリルをやってみたらいいよ。どこでつまづいているかわかったら、そこから復習すればいい。「できるようになりますかねえ。あたし、本当にすっごいバカですよ〜」と表情が暗い。いやいや、今、成績が低いなら、それは伸びしろが大きいっていうことだよ。勉強したら成績は上がる。そしたら、その先の選択肢は増えていくよ。

スマホ検索の子は成績が良いのだが「あたしのお父さんは、今の世の中、大学くらい出てないと、ろくな仕事に就けないって言いよった」と真剣な顔で言う。「ろくな仕事って何よ」ともうひとりが聞く。「うーん。一流企業ってこと?ねえ、一流企業ってどんな会社ですか?」と、話をわたしの方に振られた。大企業なら説明しやすい。でも一流となると難しい。大企業が必ずしも優良企業とは限らない。どちらかというとブラックなイメージが強くて、それを「ろくな仕事」のカテゴリに入れてしまっていいのか悩む。一流と言われる会社に入ったとしても、過労死や精神的な病気に追い込まれる人にはなってもらいたくない。

それよりも、どんな仕事をしたいとか、こんな大人になりたいとか、やってみたいこととかないの?と聞いてみた。ふたりは「うーん。わかんないです。」「まだ考えられないし」と唸るばかり。『13歳のハローワーク』を見せたら、ひとりは「あたし、美容の仕事には興味があるんですけどー、これ見たら手先が器用じゃないとダメみたいです」とあきらめモード。もうひとりは「うーん。多すぎてぜんぜん思いつかん!」と投げ気味。

「やっぱ高校は制服が可愛いところがいいよね」「うん。でも女子校はイヤ。怖いし」「通学が遠いのも困るよね。体力的にきついし、交通費が高い」「私立はお金かかるし」と、話がどんどん離れていく。

ちなみに、うちのムスメはその時なにをしていたかというと、この冬休みの課題にまったく手をつけておらず、それを必死でゴリゴリ書きまくっていたのだった。時々、ふたりの話に加わろうとしては「あんたは宿題をやれ」とたしなめられている。まるでコントみたいだ。ああ、この3人が同じ高校だったら楽しいだろうに、と思うが、3人の学力はバラバラだ。進学は学力でふるいにかけられるだけでなく、家庭の経済力や保護者の理解なども関わってくる。

あと1年で卒業だ。3人の環境がそれぞれに変わってしまったらと思うと、なんだかキュッと切なくなってしまった。そしてわが家のムスメは宿題を完成させることなく、今日の始業式に出かけて行った。ああもう…。



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