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はい!はーい!はいはいはいっっ!

会合は終盤に入っていた。そろそろ帰る支度をしようと、わたしはノートを閉じて、ペンをしまった。友だちはまだ、何かをノートに書き付けていて、集中している様子だった。ところが、一緒に連れてきていた息子くんが、長時間の沈黙にとうとう耐えられなくなってきた。「聞いて聞いて!ぼくの話を聞いて!ねえねえねえねえ!」さっきから全身で、わたしたち大人に、そうアピールしている。

犬っぽいな。犬を飼ったことはないけれど、この感じ。小学5年生だが、見た目が幼くて3年生くらいなイメージ。犬に例えられると友だちも気を悪くするかもしれないから黙っていた。でも、無邪気で、全力で、ブルンブルンと尻尾を振るような感じが、たまらなくかわいい。言うことも、大人びた雰囲気を出したいらしくて、「ああ、〇〇さんのことね」と、話に割って入ろうとする。「ねえお母さん、明日、運動会だから、あとでちょっとソーラン節の練習していい?」と突然言い出す。

「明日、ソーラン節やるの?」と水を向けたら、「ああ、そうなんですよ。あとでちょっと、ざっと流して練習しておこうかと。」と、これまた大人っぽさを演出。「へえ!明日、本番なんだね。」とわたしが言えば、「いえ、特に緊張はしていません。」とくる。「もういいって、わかったって。うるさいって。」と友だちは話を遮ろうとするが、「まあ、なんというか、一番前なんで、目立つから、ちょっと練習くらいは。」と続ける。そう、彼は小柄なのだ。口から放たれることばと、その体格とくりっとした目の愛らしさが、ますますアンバランスに思えて、妙に微笑ましい。

会合が終わって、彼らの家の前まで一緒に歩いた。「じゃあ、明日、がんばってね!」とエールを送ったら、「はい!よかったら見にきてください!」と、やる気がみなぎっていた。きっと、家族のアイドルなのだろう。なんの疑いもなく、ぼくに愛情を注いでくれるんですよね、という自信。

いいなあ。いいよね。世界中の愛が、自分に向けられていると、望めば誰でもそうしてくれるという自信。世界中のすべての子どもが、そういう時期を過ごせたらいいなと思う。

一本の動画を思い出した。
平和が続きますように。平和が訪れますように。平和を作れますように。


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