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あとあじ

うたた寝をしていて夢を見た。

わたしは雨上がりの住宅街にいる。砂利の敷かれた駐車場にいて、道を挟んで反対側には市営住宅のような集合住宅が建っている。その建物の駐車場では、大きな岩を掘り出そうとしているようで、わたしの身長くらいある大岩が地面に埋まった状態だ。岩の下の方まで掘ってあるが、岩そのものは、半分以上が地面の下だ。

その穴のところで黄色い何かがチョロチョロと動き回っている。なんだろうと覗き込んでみると、岩の最下部のところまで掘った穴があり、ぬかるんだ赤土と岩の間に子どもが挟まっていた。男の子だ。その子はソフビのアヒルのようなツルッとした感じで、全体に真っ黄色だった。髪は頭と一体化しており、全体が同じ色だ。その体に、同色のVネックのベストを着ている。

その穴には雨水が溜まっていて、仰向けに寝た状態の子どもの顔まで水に浸かっている。まずい。溺れそうだ。
声も出せず、口をぱくぱくさせながら息ができずにいる子どもは、岩の下に体が入り込んでいるのと、赤土が滑るのでもがいても上がって来れない。岩と土の間に挟まっているが、子どもがどんどん潜っていくのでもしかしたら、その穴はもっと深いのかもしれない。そこに入り込んでしまったら、もうわたしは助けることができない。

穴は狭く、わたしが中に入っていくことはできない。わたしは体を地面に伏せ、左手だけを穴の中に突っ込み、指先の感覚だけで子どもの襟元をつかむ。ベストの毛糸の感触があって、「今だ!」と引っ張り上げる。うまいこと救出できたが、大量の水を飲んでいるようだ。子どもはとても小さく、軽かった。身長が30センチくらいしかなく、体も本当にビニル製みたいだったが、体温があった。頭を少し下げた状態で背後から抱き抱えるようにしてお腹を圧迫する。水が口からバーッと出てくる。背中をさすってやると、ゲホゲホと咳をして、息を吹き返した。

だが、まだまだ水が出てくるのでわたしは両手のひらで、お腹と背中側から同時にやさしく押した。口から泡と一緒に水が出てくる。手が滑って頭から落としそうになったので、素早く足首を掴んだ。子どもを逆さに吊るしている形になってしまった。すると子どもがもがき始めた。ぶらんぶらんと体を揺すり、わたしは落とすまいと足首を持つ手に力が入る。突然、子どもが低い声で「はいどうも〜!」と言った。その声はおっさんそのものだった。その言い方はドッキリを仕掛けて種明かしをする、という感じで「お前、騙されたな」と嘲笑されたように感じた。命を救ったのに、馬鹿にされた、と思った。

ムカッとしたわたしは、その手を緩めまいとしたが、子どもの動きの方が力強く、ツルッと両手からすり抜けていった。そしてシュッとすごいスピードで、どこかへ飛んでいってしまった。最後にこちらをチラッと見たが、目が尋常じゃなく邪悪だった。わたしはものすごく大きな声で叫んだ。しかし、声が出せず、キーとかキャーみたいな息だけが長く漏れた。

そこで目が覚めた。後味が悪い夢は、「何か意味があるのだろうか」と不安になる。あの黄色い子どもは何を表しているんだろうか。

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