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やすもの

メルカリで本を買うことが増えた。今まで、嫌な思いをしたことが一度もなかった。だから、油断していたのだ。きっと今回もちゃんと取引できると思っていた。

英和辞典。定価で買うと3,600円である。メルカリで500円の出品を見つけた。少々傷ありでも構わなかったが、「目立った傷なし」とあったので、即決。失敗の始まりは、うっかり「着払い」であることを見逃してしまったことだ。

購入を決めてポチッた後に、着払いだったと知る。うかつだったー。でもまあ、500円だものね。そんなもんだよね。送り方を指定しろとあるので、一番安い「宅急便コンパクト」を指定した。送料は660円である。相手も「かしこまりましたー」と書いている。

今日、仕事から戻って玄関先に置いてある包みを見て驚いた。送料は1,270円だ。しかも、宅急便コンパクトのパッケージではなく、封筒ペラ一枚である。辞書のカバーは角が潰れている。新しい傷だから、輸送中に潰れたのだろう。しかし、これをヤマト運輸に申し立てたところでどうなるってわけでもないだろう。これはあきらめた。

箱を開けるとタバコの匂いがした。宇多田ヒカルが歌うとなんかかっこいいんだけど、タバコのフレーバーは苦手である。くさい。プロフィールには「喫煙者ではありません」と書いてあった。出品した本人は喫煙者ではないかもしれないが、その辞書はどこからきたのか。ヘビースモーカーの部屋で燻蒸されていたのだろうか。ページの一枚一枚ににおいが染み込んでいる。

低評価をつけてやる、とカッとなった。と同時に、自分の浅はかな買い物を反省しつつ、メルカリの評価ページを開く。あれ?なんかおかしい。

出品者が名前を変えている。え?どういうこと?何か嫌な感じがする。

オットに「これどう思う?」と聞いたら、「もう関わらない方がいいんじゃない?相手はあなたの名前も住所も電話番号も知ってるんでしょ」と言う。

なるほどー。

その人の評価には、「残念だった」が2つある。中を見てみると、「タバコのにおいがしました」「新品同様と書いてありましたが、書き込みがあり、防水もされず濡れて届きました」とあった。購入前に読んでいなかった。

あー、甘かったなあ。自分が出品する時に、嘘とかいい加減なことをしてはいけないと思っているから、誰しもそういうものだと思い込んでいた。

さて、勉強するつもりで買った辞書だが、こんな嫌な気持ちでは、使いたくない。わたしは重曹を箱にふりかけ、辞書のページにはレモングラスの葉をガンガン挟んでみた。なんとかなるかなあ。ならないんだろうなあ。

安物買いの銭失い。おばあちゃんがよく言っていたのを思い出した。

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