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ハクション大魔王?

わが家には、朝からくしゃみを爆発的に連発する人がいる。5連発くらいが通常で、それを起きてから出勤するまでの30分間に3セットから4セット。
帰宅後から就寝までの数時間の間にも、5セットから10セット。

オットは重度の花粉症だ。アレルギーのせいで、目も鼻も耳も痒く、くしゃみが止まらない。発熱して寝汗をかくので、寝具がびしょびしょの上、寝まきもシーツもすごいニオイだ。かといって外気を入れると花粉も呼び込むため、家の換気も頻繁にはできず、洗濯物は部屋干しだ。

気の毒ではあるが、わたしにはどうしようもない。なにしろ、オットは発症以来30年超、さまざまな対処法を試してみたが、どれも効果がなかったり、副作用がひどかったりで納得がいかず、もう何も信じられない状態なのだ。今さらわたしが「アレがいいらしいよ」「コレはどうかしら」と何を勧めても、「いらん」「無駄」と一蹴される。このやりとりは結婚当初から何度繰り返されたかしれない。そのたびに好意を踏みにじられた気持ちになるが、本人にしてみれば「余計なお世話」であり「わかったような口をきくな」と、体調不良に増して苛立ちしか感じないのだろう。これでは良い関係性をキープできないので、花粉症に関してはわたしの方から身を引いた。知らん知らんもう知らん。傍観者に徹する。

しかし、同居している限り、その光景は毎年見なければならない。それはそれは気の毒すぎてこちらの心労もハンパではない。それを「お前には関係ないことだ」という態度で来られたら、もう慰謝料を請求してもいいと思う。花粉症者同居訴訟。こちらからは、花粉がひどい期間(2月と3月)の2ヶ月間、バカンスを要求する。最悪、オットが花粉の影響のない地域に転居する、でもいい。いまどき、リモート勤務も当たり前の世の中である。なんとかなるだろう。出張へは現地から出発し、帰還していただきたい。

先日も、鼻をズビズビ言わせながら「目玉を取り出して洗いたい」と言う。ちょうどわたしが横でたこ焼きを焼いていたから、「ここに出してくれたら、加熱殺菌してあげますよ」と竹串で鉄板のくぼみをツンツンしてみたところ、不機嫌さが増していた。

2ヶ月間限定とはいえ、こちらが鬱になりそうである。さらにここ数年、気候変動の影響だろうが、温暖化が進んで花粉が舞う期間が長くなっていると感じる。今朝もくしゃみをしながら居間に入ってきたオットに、感情を込めず「ほーんと、大変よねえ〜」と棒読み口調で言ったら、「ハクション大魔王になった」と力なく笑った。

違うよオット。ハクション大魔王はくしゃみをするんじゃなくて、カンちゃんのくしゃみでツボから出てくるんだ。そして次のくしゃみでツボに戻る。
だからもし、うちにハクション大魔王のツボがあったとしても、あなたのくしゃみで出てきて「呼ばれて飛び出…」とか言ってるとすぐにツボに戻らなければならない。そしてまたくしゃみで呼ばれて「…てジャジャジャ…」でまたツボに戻って「…ジャーン」で出てきて、またすぐツボに吸い込まれる。これを繰り返すのだから、ハクション大魔王もたまったもんじゃない。速攻で内側から栓をされてオフライン状態だ。

オットがハクション大魔王に似ているのは、体型とハンバーグ好きなところ。あの鷹揚さがあれば、花粉症ともうまく付き合っていけるかもしれないが、そこは似ていない。





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