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せきせつ

雪が積もった。3年ぶりだとラジオで言っていた。たいした積雪ではないが、福岡は雪に弱い。ほとんどの人がスタッドレスタイヤを車に履かせてないし、チェーンを持っている人も多くはない。朝のラッシュ時のはずが、通勤ルートはどこも写真のような状態だった。乗用車はチラホラ。バスだけが後輪に巻いたチェーンでゴリゴリと路面を削りながら、ゆっくりと進んでいた。

職場に着く頃には、わたしは雪まみれで、布製のブーツを履いて来たことを悔やんだ。雪が張り付いて、黒のブーツが白くなっている。指先もつま先も冷えきっている。28℃に設定された教室の暖房は効き目が薄く、室内の温度計は11℃を示していた。

フリースクールでは、始業式が行われた。校長先生が話の最後に「福岡でこんなに雪が積もったのは久しぶりなんでしょう?雪だるまとか雪合戦とか、ぜひ楽しんで。」と言った。校長先生は長野県の出身だそうで、雪玉や雪だるまの上手な作り方を簡単に説明してくれた。今日、雪の中をなんとか登校したのは4人だった。彼らは校長先生の言葉に、かなり戸惑っていたようで、苦笑いをしながら2人が帰って行った。残った男子2人のうち、一人がしきりにもう一人を誘っている。「雪合戦しよう〜」「いーやーだー」「しようよ〜」「外に出たくない」「えー」「じゃあゲームやる?」「えー、外で遊ぼうよー」「室内で遊べることなら付き合うよ」「よし!それなら雪を取ってくる!!!」「おい待て!!!」中三男子ってこんな感じなのか。小学生みたいだ。
結局、雪合戦をしたい子の方は「じゃあもう帰るね」と言ってドアまで行ったが、未練たっぷりな様子で「本当にやらない?」と何度も聞いている。
「やだ。やらない」と断られて、渋々帰っていった。

仕事が終わって外に出ると、向かいの高校の女子生徒が雪合戦をしていた。ミニスカートの制服で、素足にハイソックス。寒かろうと思うが、彼女たちはきゃあきゃあと笑いながら雪玉を投げている。一人だけ、制服が真っ白になるほど雪玉を受けている子がいた。一瞬、いじめじゃないかとドキリとしたが、本人も思い切り投げ返して笑っていた。

家の近所では、小学生が二人、駐車場にしゃがみこんで何か話していた。車体に積もった雪がタイヤ付近で細いツララになって下がっている。それを一本ずつ、ポキリポキリと折りながら「ツララって、この折るときの音と、折れるときの感触がたまらんよね」と言っていた。そうか。そうなのか。わたしはこの歳になるまでツララを折ったことがないので、「勉強になります」と心の中で呟いて通り過ぎた。いつか機会があったらツララを折ってみたいものだ。

今夜もまだ、気象警報は解除されていない。さらに降って、雪がもっと積もるのか。雪は降らずに冷えるだけで、路面が凍結するのか。どちらにせよ、明日もまた、福岡は寒い。




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