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2020年秋 いつ誰が自宅待機になっても教育を継続できる方法の模索 ―フィンランドのある高校の場合

フィンランドの学校では、8月半ばから新年度が始まります。2020年8月も例年と同じく対面教育が始まりましたが、いつもと違うのは、新型コロナウイルスの感染対策で、自宅待機になる教師や生徒がいることです。

娘が通う高校でも授業は全て対面教育で始まったのですが、既に2週間で、「自宅待機中の教師が、学校にいる生徒に向けて遠隔授業」、「学校の授業を自宅待機中の生徒に向けてストリーミング」など、様々な授業形態が発生しました。いつ誰が自宅待機になっても教育を継続できる方法を模索しているのです。

急に授業形態が変わっても生徒が対応できる理由

娘が習っている教師が「PCR検査の結果が分かるまで自宅待機」となったときには、教室で遠隔授業を受けるよう生徒たちに伝えられたのは、授業当日の朝でした。それでも混乱なく移行できた理由は、二つあります。

一つは、フィンランドの高校では、生徒全員が自分のノートブックPCを授業で使うので、急に教室で遠隔授業を受けることになっても準備が整っていることです。

もう一つは、学校と生徒、保護者をつなぐ電子システムWilmaの存在です。普通のブラウザとスマートフォンアプリで使えるので、教師は自宅からでも生徒に向けて授業に関する連絡をつたえられますし、生徒はどこにいても教師や学校からの連絡をチェックできます。

様々な授業形態は、上手く行っているのか

自宅待機をしている教師がTeamsを使って遠隔授業をしているケースでは、学校に来ている生徒は教室で、自宅待機の生徒は家で授業を受けています。学校近くのカフェで授業を受けている猛者もいるそうです。

教師から見れば、全ての生徒と遠隔授業でつながる形なので、2020年春の遠隔授業期間につちかったノウハウを用いて、授業はスムースに進んでいるようです。

一方で、教師が教室にいる生徒に向けて授業をしている様子を自宅待機の生徒向けにTeamsやMeetを使ってストリーミングするハイブリッド型授業の方は、まだ発展途上のようです。もともと教師には授業をストリーミングする義務はないので、するかしないかは教師次第です。

とはいえ、生徒のうち1/3が自宅待機になっている授業もあり、ストリーミングで生徒の学びたい気持ちに応えようようという教師もいます。これほど多くの生徒が自宅待機になるのは、寒くなって、風邪の症状が出る生徒が増えたからです。

これまでストリーミングを試みた授業では、まだ慣れないためか、教師の動きや話し方が教室にいる生徒向けになってしまい、ストリーミングで見ている生徒には聞こえにくかったそうです。

教師一人で限られた機材を使って、教室にいる生徒とストリーミングを見ている生徒に並行して対応するのは、大変でしょう。ストリーミングに向いたカメラとマイクが整備されると、まだ少しは楽になるかもしれませんが。

ストリームがなくとも、その日の授業の範囲と宿題は、電子システムWilmaを見れば分かるようになっています。以前から、小・中学校でも高校でも教師は授業で扱ったテーマと宿題をWilmaに書くことになっているからです。宿題の提出もTeamsなどオンラインで行うことが多いので、自分で教科書を見て学習し、宿題をこなすのも可能です。

事態に応じて授業形態は常に変わる

上で述べた「学校で受ける遠隔教育」「対面教育とストリーミングの併用」などの例は、人口18万の地方都市で一日当たりの感染者が0~24人、この学校で感染者はまだ出ていないという時点です。

同じ市内でも、感染者が出た高校は、周囲でも感染が相次いだこともあり、期限を決めて全面的に遠隔教育に切り替えました。一方で、学校で感染者が出ても、自宅隔離者は教師も生徒も遠隔教育を行い、他は対面教育を続けると分けている学校もあります。

事態は常に変わっているので、遠隔教育と対面教育の間の切り替え、併用のハイブリッドなど、様々な授業形態を使い分けて対応していくことになるのでしょう。

さいごに

日本でもフィンランドでも、学校の先生方は刻々と変わる事態に対応しながら教育をする日々をすごされていて、頭が下がります。できるだけ対面教育の良さを維持しつつ感染を防ぐのは、本当に大変な仕事だと思います。

自宅待機になる理由は、濃厚接触者になるだけではなく、風邪の症状があって、新型コロナウイルス感染か否かはっきりするまで自宅で待機する場合もあります。フィンランドは日本より一足早く秋になり、風邪が増える時期を経験しています。フィンランドの学校の経験が、日本の先生方の何らかのヒントになれば幸いです。

















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