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ハーバード公衆衛生大学院留学のデメリットまとめ【真実です】


現実的にハーバード留学を考えたとき、キラキラした面だけでなくデメリットも知る必要があります。

自分は実際留学しておりメリットの方が大きいと思いますが、それは人によります。

留学期は良い面が強調される記事ばかりですが、この記事には真実のデメリットを包み隠さず書きます。少し過激かもしれませんし、少なからず主観が混じっていますが、そこはご容赦を。

これを読んでも行きたいと思った方なら、おそらく、留学向いています。


真実①:MPHではone of them

「ハーバードMPH」って響きすごくないですか?
でも凄いのは響きだけで、実際は「one of them」です。

実に毎年1000人くらいの人が、ハーバードMPHまたはMScを取ります。

しかも、

・(アメリカで働く)臨床医は、パートタイム(の片手間)でMPHを取る人が多い
・4年生大学卒後すぐの子たち(22-3歳)が結構いて、彼らは大学の延長という認識(MScの話)
・ハーバード大学やスタンフォード大学、といった有名college出身の人はほとんどいない(MPHに意義を見出していないのかも)
・アメリカに移住したい人が足がかりに取る資格、という認識が一部ある

つまりMPH取ったからどうこう、ということは全く無いのです。残念ながら。

そして、ハーバードのMPHというのは、アメリカでの就活でもあまり強みになりません。
MPHは特殊なスキルがあることを示さないgeneralなdegreeなので、企業側からしても目立たない。
変な身分でない証明+ちょっと英語ができるアピール+公衆衛生の基礎がわかっている証明、にはなりますが、
one of themには変わりありません。
(対象を日本とすれば話は別です)

*なお、ハーバード卒業生としてのコネクションという意味では、非常に意味があります。私見ですが、アメリカではコネクションこそが就活の重要なファクターな印象があります。


真実②:疫学、統計は頑張れば自分で勉強できる程度の授業内容

統計や疫学を体系的に学ぶ、というのは真っ当な動機に思えますが、はっきり言ってそれを理由に留学する必要はないと思います。
例えば臨床医の方が臨床しながら勉強するのは、時間と気力的に無理なだけで、臨床を1年休めばハーバードでなくたって勉強できます。
あまたあるonline教材で良いし、そもそも教科書読めば、ほぼイコール授業内容です

そして実際授業をたくさん受けた感想として、「感動的だった授業」「数百万の価値があった授業」はなかったです。
日本の大学の授業と、根本はあまり変わりありません(当然質はアメリカの方がよいです)。
テストや宿題が強制されるのは勉強するきっかけとなり良かったですが、それもハーバードである必要性はない。

ということで、疫学と統計に絞れば、それを学ぶためハーバードに留学する必要性は、ほぼなし。

*ただ、一から自主勉強でMPHのレベルまで達するかと言われたら、それを達成できている人はみたことないので不明です。

*アメリカの大学院に留学する、という意味はあります。その分野の第一人者と直接コミュニケーションを取れる機会は貴重です。


真実③:MPH、MSc生は「お金を払ってくれているお客様」

修士生は1年間で700万くらい大学に支払います。
大学からすれば、大事なお客様です。
お客様として大事にされますが、所詮お客様。ハーバードを担う一人のメンバーとして扱われることを期待していると、期待はずれとなり得ます)。

誰しも学生がおわり、働き始めてたくさんの事を学びます。
働くために加速して成長する必要があるので、自分も周りも頑張るから。
大学院はそういう環境ではありません。

大学院が考えているお金の対価は、「MPHという学位」です。
できるなら大学院生活を謳歌してほしいと思っていますが、それは二次的なもの。
悪く言うと、「MPH生同士で仲良くやってくれよ」という放任主義です。

学位を与えること=きちんと授業をクリアさせて学位を取らせる事が大学のミッションです。
つまり、授業が落ちこぼれそうな生徒には手厚いサポートがあります(日本人がそういう事になることはまずありません)。

逆に、それ以上大学から期待するのは、期待しすぎです。やりたいことがあれば、自分で頑張るしかありません。


真実④:結構生活がギリギリ

ボストンは物価と家賃が高いです。
授業料もあいまって、特に家族で留学する場合、生活がギリギリになりえます。

子供の保育園の使用なんて信じられない程高額です。小さい子は1日100ドル以上かかります。
小学生になってしまえばPublic schoolで無料ですが。

自分は運良く600万程度の奨学金が取れたので、ギリギリ「1年間+卒後1年の生活」が送れましたが、それがなければ無理でした。財団には本当に感謝しています。


貯金が無くなっていくのは気持ちの良いものではありません。

人によってはかなりストレスかもしれません。


真実⑤:ボストン周囲で研究者として生きていくのはほとんど無理

⑤、⑥は「疫学、臨床研究を専門とする研究者のキャリア」を目指す方向けです。

ハーバードのMPHを取った後得られる「研究者」としてのポジションは、MDがあることが前提で、おそらく「無給研究員」でしょう。
もしくは、有給だけど研究の雑用を担う「コーディネーター」。
少なからずinternationalな学生は、卒後ポストが見つからず自分の国へ帰ります。

まれに、ボスがグラントを取ったなどのタイミングが合って、研究しながら給料がもらえるポジションを見つける方がいますが、例外的です。
しかもその後、研究員→助教というポジションを得るのは、このルートではほぼ不可能です(いることにはいますが)。

一つの理由は、ハーバードの関連病院が世界的に有名な研究機関であることです。
世界から集まっているので、必然的に競争が激しくなります。
例えば私が所属するBrigham and Women’s病院の予防医療科において、疫学のassistant professor(助教)は、ほとんどがfirstでNew England Journal of Medicine、JAMAに研究発表しています。しかもアメリカ人。中途半端な業績のアジア人が食い込むことは無理です。

また、ここには同病院の循環器フェロー達が研究目的で所属しています。キラキラに聞こえますが、実情はかなり厳しいです。例えば、

・疫学や統計を知っていることが前提なので、どうしても知識が中途半端な臨床フェローたちは、毎回の発表でボコボコにされています。学会のポスター発表が引き下げになった例もありました。

・彼らの中には、臨床→研究にシフトしたく頑張る人もいますが、ほとんど無理です。友人の一人(アメリカ人)は、循環器フェローシップの後、完全な無給研究員+MGHで外来バイト、という生活を送っています。。

少なくとも日本人がボストン周囲で臨床研究、疫学研究を仕事とするには、ハーバード含む有名校でのPhDを取得すること、もしくはハーバード関連病院で臨床のフェローシップを終えることが必要条件です(十分では決してありません)。


真実⑥:研究が苦痛になる

臨床研究は、日本でのびのびと(自由に)やっていれば楽しいです。
なかなかインパクトの高い雑誌に載るのは難しいですが、たくさん書けるし、時々良い雑誌に載ると嬉しい。周りからも褒められる。

でも、その趣味を仕事としてやってる人達のスタンスは異なります。
少なくとも自分の周りのハーバードの疫学科に所属するファカルティー達は、「科学に貢献しない研究は発表する価値なし」という価値観を持っています。
(疫学や臨床研究で「科学に貢献する」というのは少し漠然とした概念ですが、簡単に言えば質の高い研究ということです)

例えばハーバードのコホートを使った研究を行う際、以下のプロセスを踏襲します。
・指導教官と研究課題を詰める(preliminary analysisを行う)
・proposalを提出、ミーティングで発表
・解析、論文を書き上げる
・共著者のreivew、それを反映する
・resultをミーティングで発表
・codingのreview、論文に記載されている数字のチェック、記載するグラントのチェック
・ようやくsubmit

そもそも研究のproposalを出すハードルが高い上、一つの論文を書くまでの工程(review process)が長い(一旦submitすれば高確率でacceptされるので、そこは良いですが)。

そしてacceptされるにしても、「凄いね!(尊敬の眼差し)」となるのはNEJMやLancetレベルだと思っています。JAMAを持ってるポスドクは、割とそこら中にいます。

本当の研究をやってる感があってよいですが、研究の楽しみは間違いなく減っています。それが研究なんでしょうが。


真実⑦:ハーバード卒となってもキャリアを変えるのは容易でない

これは一般的な話です。
実際、1年の大学院生活を経て、キャリアを全く変えてしまうのは、中々難しいのです。

特に、ハーバードにいると、コンサルのトップ企業、GAFA、世界銀行やゲイツ財団などで働くキラキラ卒業生が目に付き、誘惑されます。
しかしそういう所へ就職するのは、当然かなり難しいです。かなりの準備期間やコネクションが必要で、一般的に1年間の学生生活で準備できるものではありません。
*そもそも、アメリカで就職先を見つけること自体が、アメリカ人以外ではかなり困難。

もし本当に完全なキャリアチェンジを考えて留学する場合は、留学前から入念に準備し、卒後もOPTを使ってアメリカ滞在時間を伸ばす必要がありそうです。

(繰り返しですが、目線を完全に日本国内におけば、ハードルは低くなります)


真実⑧:他の州にあまり魅力を感じなくなる

次は住む場所の話です。

アメリカの中でボストンはかなり特殊な町です。半年間くらい暮らすとわかってきますが、裕福で余裕のある人が多く、治安も良い。皆割とサバサバしている。教育や食事も良い。日系スーパーもある。
ニューヨークみたいにゴミゴミしていない。きれい。
冬は寒いですが、総じてかなり良い都市です。
*日本でいうと横浜に近い印象です。

最初の留学先がボストンだと、その他のアメリカ都市も全然魅力を感じなくなってしまいます。
(このあたりは個人差があるかもしれませんが)
唯一引越しの対象となるのは、カリフォルニアの一部の町くらいかな、という感じ。暮らしのレベルを下げるのは、異国では中々難しいです。
(あんまり他の都市を知らないだけかも知れないですが)

つまり、ボストンが良いけどポジションが無い問題に直面してしまいます。
これは、多くの卒業生にとって、実際切実な問題です。


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いかがでしたでしょうか。
これを読んでもメリットが大きいと思う方は、留学向いてます。
ではまた。


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