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勝利の女神に一目惚れした

私の趣味は、美術館巡りだ。
気になる展覧会があれば、週末予定を空けて足を運ぶ。
学割を使えるのは、大学生の特権だ。

先日、東京駅近くにあるアーティゾン美術館へ行ってきた。
アーティゾン美術館は、最新IT技術を取り入れている先端的な美術館だ。
大きなビルは洗練されていながらも、明るくて優しい印象を受ける。
しかも、大学生は無料なのだからありがたい。

今まで、「その時しか見られない」という限定的な特別感に惹かれ、企画展しか見てこなかった。
私にとっては、はじめての常設展だ。

壁は真っ白で、作品がよく映える。
館内も明るくて、美術館特有の厳かな雰囲気は強くなく、リラックスして見ることが出来た。
展示に関する説明が少ないのも、その理由だと思う。(説明はとても学びになるので好きだが、全部読んでいると疲れてしまう、私だけだろうか…)

まず、所蔵作品の幅の広さに驚いた。
縦にというよりは、横に広い。
印象派からピカソ、現代アートまでの西洋絵画だけでなく、日本作品はなんと屏風絵から黒田清輝などまで。
本当に幅広くて、6階から4階まで3階にわたる展示も全く飽きなかった。

大好きなルノワールやマネ、セザンヌにも会えた。
とても楽しかった。

そんな中でも、私が一番に惹かれたのが、
クリスチャン・ダニエル・ラウホの「勝利の女神」

普通の展示室内ではない、ロビーのような場所に佇むこの作品は、他の作品とは違う、異彩の光を放っていた。

荘厳なディテールと真っ白に大きく伸びる白い翼。
その大きさは、「勝利の女神」であることを物語る力強さがあり、圧巻の技術だった。

だけど、

どうして、こんなに柔らかく優しい表情をしているのだろう。

私にはどうしても、それが勝利の女神には見えなかった。
民衆を勝利に導くというより、勝利に向かう民を優しく包み込むような、そんな表情に見えたからだ。

女神の、力強くも優しいその佇まいに、魅了されてしまった。

“美しい”

その言葉が、今までで一番しっくりきた。
心から自然と、その言葉が溢れていた。

今にも飛び立ちそうな、そんな白い翼をたずさえ、はるか彼方を見つめる女神。
その姿はどこか儚く、でもたしかに存在していて、美しかった。

ほんの一瞬見ただけで、私は、この女神像に一目惚れしてしまった。
そして、時間の許すかぎりずっと見つめていた。


美術館に行くと、時々思いもよらぬ作品との出会いがある。
そんな瞬間に出会えると、とても嬉しく、心が満たされる。
少しづつ、自分の宝物が増えていく、そんな感覚。
次はどんな作品に出会えるだろう。
そんな期待が、私をまた、次の美術館へ向かわせる。

次はどこへ行こうかなと、わくわくしながら考えている。


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