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望ましい財務諸表の組み合わせは?

2020年7月8日(水)のMBA Essentialsのレポートです。

今回は、西山 茂先生による、
「アカウンティング~クイズとレクチャーで基礎を学ぶ」
です。

西山先生に関しましては、下記を参照ください。
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6060

今回は、アカウンティング、ということなのですが、自分がこのあたりが全くの素人なので、理解に時間がかかったのと、内容もざっくりとは合ってると思うのですが、細かいところで間違っているところがあると思います。もし、誤りなどあれば、ご指摘頂けるとありがたいです。

今回は、下記のような流れで講義が進んでいきました。

- 経営視点からの財務諸表の読み方
- 財務比率分析のポイント
- 望ましい財務諸表の組み合わせは?

財務諸表の読み方、からなので、かなり基礎的な内容なのだと思います。

一つ、最初にファイナンスとアカウンティングの考え方について説明がありました。

ファイナンス: 投資家(資本市場)が企業を評価するための考え方
アカウンティング: 企業の経営管理者が状況を把握し、外部へ報告するための考え方

要は、ファイナンスは投資家から見た視点、アカウンティングは主に経営者から見た視点、ということで立ち位置が異なる、というのが大きなポイントです。

また、アカウンティングには、下記の二種類があり、

財務会計: 外部への報告と分析
管理会計: 内部での経営管理のための数字の活用

このうちの財務会計が、今回のメインテーマである財務諸表の話です。財務諸表で、企業の経営管理者の視点と投資家の視点を合わせる、という形となります。

● 経営視点からの財務諸表の読み方
○ 貸借対照表(B/S: バランスシート)
貸借対照表はざっくり言うと、左側が決算時に会社が持っている資産、右側がその資産の元手、という形になっていて、総額で見ると、左側と右側が同額になっています。また、資産は上から順に、流動資産・有形固定資産・無形固定資産という形で上から現金化しやすい順に並んでいます。元手は上から順に流動負債・固定負債・純資産(≒株主資本)という形で早く返済しなければならない順に並んでいます(負債=借入金、です。また、純資産は返済の必要はありません)。

ここで、講義では下記の点を重要な点としてお話ししていました。

1. 安全なB/Sとは、現金化しやすい資産が多く(資産の上が多く)、返済が遅いもの(元手の下)が多い
2. 純資産/総資産の比率は、30%~40%が多い(=借入金の割合が60%~70%)
3. 一般事業会社では、資産は流動資産・有形固定資産・それ以外の割合がそれぞれ1/3ずつ程度というのが一般的
4. 無形固定資産、特にのれんは買収の痕跡を表す(のれんは買収でしか生まれないので、のれんがある=企業買収をした、ということ)

このように、B/Sを見ることで、その企業の状態をみることが出来ます。

○ 損益計算書(P/L: Profit and Loss statement)
損益計算書は一年間の活動報告書となっています。項目が多いので一つ一つは書きませんが、講義で話されていたポイントは下記です。

- 売上高: 売上規模です。一定の売上がないと事業として成り立たないため、見ておくことは重要です。
- 売上総利益: こちらは売上総利益"率"を確認します。要は、原価率がどのくらいかを見る、ということになります。
- 販売費及び一般管理費: こちらは内訳を確認し、研究開発費・広告宣伝費にどのくらいのコストをかけているのか、を見ます。
- 営業利益: 営業利益"率"を確認します。事業の付加価値、とも言えますが、企業の戦略によっても適切な数値は変わってくるので注意が必要です。

こちらの中身ですが、中身は業界・業種によってかなり特徴が出るものとなっています。

例えば、下記のような感じです。

トヨタは売上原価率が80%~90%
スーパーマーケットは売上原価率が75%くらい
製薬会社は売上原価率が20%~30%とかなり安い代わりに、研究開発費がかなり高い
化粧品メーカーは売上原価率が20%~30%とかなり安い代わりに、販売促進費用がかなり高い

このように、P/Lを見ることによって、その企業がどの業界・業種に属すのかが予想出来たり、同業界・業種の業績の良い企業を見ることで、良い企業は何にどのくらいのコストをかけているか、ということを見ることが出来ます。

また、日本のP/Lでは経常利益がありますが、海外のP/Lでは経常利益の項目がなく、最近では営業利益がよく使われています。(理由としては、日本は銀行から借り入れて会社を運営することが多かったので、銀行への返済を加味した経常利益が重視されていましたが、海外では社債などで資金を調達することが多く、そこが重視されなかったため、と言われています)

○ キャッシュフロー(CF)計算書
キャッシュフロー計算書は、比較的新しい概念で、簡単に言うと「会社にどのくらい現金があるか」が分かるものになっています。損益計算書があるのになぜこれが必要になるのか、というと、会計上の利益(損益計算書上の利益)と手元の現金はイコールではないからです。要は、商品やサービスを売り上げてから現金になるまでにタイムラグがある、ということです。そうすると、会計上は黒字でも、このタイムラグの間に借入金の返済が来て、現金が尽きてしまい、倒産する、ということがあり得るからです(黒字倒産といいます)。よって、損益計算書とは別に、会社にある現金をベースとした、キャッシュフロー計算書が必要になる、ということです。

- 営業活動によるキャッシュフロー
こちらは、本業の利益により得た現金です。未回収のものは除きます。

- 投資活動によるキャッシュフロー
こちらは、固定資産・株・債権などの使った現金です。特に、将来への投資をした場合には固定資産の項目がマイナスになるケースが多いです(将来の投資として現金を使ったのでマイナスになる)。なお、不動産などの資産を売却した場合はプラスになります(現金が増えるので)。

- 財務活動によるキャッシュフロー
こちらは、借りて得た現金です。返した場合にはマイナスになります。

CF計算書を見ていくポイントとしては、下記です。

安定企業は、営業活動CFが大きなプラス、また、投資活動CFは投資を行なうのでマイナスとなり、財務活動CFは借入金を返済していくのでマイナスとなります。
成長企業は、営業活動CFがプラス(勿論状況によります)で、投資活動CFは投資を盛んに行なうので大きなマイナスとなります。また、投資を行なうための借り入れも行なうため、財務活動キャッシュフローもプラスとなります。
リストラをしている企業は、営業活動CFはプラス(勿論状況によります)で、投資活動CFは、投資を控えたリ資産売却により現金化を行なうことが多いので、0またはプラスとなります。また、財務活動CFは、借入金の返済に回すケースが多く、大きなマイナスとなります。

このように、CF計算書から企業の状態を見ることが出来ます。

● 財務比率分析のポイント
こちらでは、ROEを中心に、分析のポイントを説明して頂きました。

ROEは、自己資本利益率、すなわち

ROE = 自己資本利益率 = 当期純利益 / 自己資本
(注) 自己資本 = 純資産 - (非支配株主持分 + 新株予約権)

となります。要は、株主が投資した金額に対してどのくらいの純利益を上げられたか、ということです。純利益は配当などにも直結するので、株主にとっては重要な指標となります。

こちらを分解して考えるデュポンシステム、という考え方があります。

ROE = 当期純利益 / 自己資本 = (当期純利益 / 売上高) x (売上高 / 総資産) x (総資産 / 自己資本)

という風に、3つの掛け算に分解して考える、ということです。見て頂ければ分かるのですが、同じものを分母と分子に持ってきているだけなので、約分すると元のROEに戻ります。この分解は、下記のように捉えることが出来、そのそれぞれを上げていくことで、ROEを向上させることが出来る、ということです。それぞれについて簡単に見ていきます。

- 当期純利益 / 売上高: 売上高純利益率 = 収益性
こちらは見たままで、売上高に対する純利益率=(株主にとっての)収益性、ということになります。

- 売上高 / 総資産: 総資産回転率 = 効率性
こちらは、如何に資産を有効活用して売上につなげているか、という指標となります。効率的にお金を使っているか、ということです。

- 総資産 / 自己資本: 財務レバレッジ = 負債の有効活用
こちらは、要は負債(=借入金)をどのくらい入れているか、ということになります。投資家にとっては、借入金は他人の金なので、他人の金をどれだけうまく使えているか、ということです。ただし、借入金が多いと財務が不安定になるので、多ければ良い、というものでもないので注意が必要です。

ROEはこのように分解できるので、一概にROEが高い企業、といっても、デュポンシステムで分解したどれが高いのか、というのを見ていくことも大切になります。

● 望ましい財務諸表の組み合わせは?
結論から言うと、小さなB/S、大きなP/L・CF計算書ということです。少ない資産で大きな利益・キャッシュフローを生み出すことが重要、ということです。しかし、B/Sが小さすぎると財務が不安定になるため、最終的には、適切なB/Sという風に結論づいていました。

- 目指すべき貸借対照表(B/S)
こちらは、小さなB/Sということで、全体的に総資産は圧縮を目指し、効率の良い投資をしながらも、全体的なバランスを見て負債なども有効利用していく、という形になります。

(1) 運転資本の圧縮
こちらは、不要な資産などがあれば売却するなど、総資産の圧縮をしていく、という形となると思います。

(2) 投資効率・効果の上昇
こちらは、全体的な投資(設備投資など)に対する効率・効果を向上させていくことで、小さな資産で大きな利益を出せるように考えていく、という形です。

(3) 安全と株主価値の上昇を上手にバランスさせる
こちらは、負債(=借入金)に対する考え方ですが、規模を保つためにはある程度の借入金は必要ですが、そのバランスを見ていく必要があります(借入金が多すぎるのはダメ)。

(4) 遊休資産の有効活用
こちらは、有休資産があれば、有効活用することを考える、ということです。もしくは、売却出来るなら売却しても良いかもしれません。

全体としては、小さなB/Sという観点から見ると、やっていくべき施策が明確になると思いました。特に、投資や有休資産の有効活用は考えればアイディア次第でより効率よく使えるのではないかと思いました。

- 目指すべき損益計算書(P/L)
こちらは、大きなP/Lということで、営業利益と当期純利益を重視する形となり、各項目に対しては、下記のような視点で施策を打っていくことになります。

売上高: 延ばす(単価・数量)
売上原価: コストダウンにより減らす
販売費及び一般管理費: 投資効率を高める
営業外収益: 効率よい運用を目指す。ただし、あまり多くしすぎない。
営業外費用: 調達コストを引き下げる
特別利益・特別損失: 特別利益は期待せず、臨時の異常な特別損失はできるだけ避ける
法人税、住民税及び事業税: 節税

当たり前のことしか書いてないのですが、P/Lという視点で見ることで、このあたりが漏れなく見えてくる、というのがポイントだと思いました。

- 望ましいキャッシュフロー計算書
こちらは、大きなCF計算書、ということで、全体的に大きくしていくのですが、企業の成長ステージによって適切と思われる内容が異なるので、その企業の状況に合わせた目標が必要になると思いました。

営業活動からのCF: 安定成長を目指す
投資活動からのCF: 成長ステージに合わせた適切な投資や、フリーキャッシュフローのレベルの維持
財務活動からのCF: キャッシュが余れば株主還元を行なう。不足すれば、資本と負債でバランスよく調達

こちらも当たり前のことしか書いていないですが、一番のポイントは成長ステージに合わせてみていくことかな、と思いました。

● まとめ
今回は、B/S, P/L, CF計算書、ROEを中心に財務諸表の基本的なところを教わりました。自分としては、このあたりは全く素人なので、財務諸表の見方や見るべきポイントなどが分かって非常に良かったです。

西山先生、どうもありがとうございました。

長かったMBA Essentials(春)もこれで全8回の講義が終わりましたので、レポートも一旦終わりとなります。MBA Essentials(秋)がまた2020年10月14日(水)から始まりますので、また、その際にはまとめをレポートしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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