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アラサー女子、銭湯にハマる2

今日は改正湯に行くと心に決めていたので、定時退社をして急いで家へと帰った。
電車に乗り、早足で家へと向かう。家へ着くとすぐにスウェットへ着替えてから銭湯に持っていくセットを手に持ってすぐに外へ出た。

まだ完全に日が暮れていないのが嬉しい。夕焼けを眺めながら、ほっこりとした気持ちで改正湯へと急いだ。

改正湯へと着くとなんと本日は定休日と書かれていた。金曜日は定休日だった。
せっかく早く帰ってきたのに、自分のリサーチ不足を悔やんだ。
せっかく準備万端なので別の銭湯へと行くことにした。
ここから近い蒲田温泉へ行くことにした。蒲田温泉は年中無休なので安心して行ける。

早歩きで5分くらいで蒲田温泉へと着いた。とても近く感じる。
蒲田温泉は黒湯がメインの温泉で、スーパー銭湯顔負けで食事処もある。今日はお風呂に浸かってから食事処で夕食を取る事にした。

女湯の暖簾をくぐり、ロッカーに脱いだ服を詰め込んだ。昔ながらのレトロな雰囲気を味わいながら、浴室へと向かった。
浴室には家族連れが何組か居るが、そこまで賑やかな雰囲気でもないのでありがたい。

「蒲田温泉といえば漆黒に輝く黒湯だ」とワクワクしながらシャワーを浴びて、体を洗った。
今日のシャンプーとリンスは試供品で貰ったオーガニックのものを使った。匂いは控えめだが、ほのかに石鹸のような爽やかな香りがするのでとても気に入った。今度はボトルで買おうかと検討することにした。
トリートメントを付けると、最近買ったコームを髪に通した。トリートメントを塗った後に百均で購入したコームで髪をとかすと、トリートメントの浸透率が上がると聞いたので実行したが、効果がある気がする。
洗い流す時は、タライにお湯をためて流すだけにしている。シャワーで流すとトリートメントの成分が流れすぎてしまうとネットの記事に書いてあったので、実践している。しっとりしてくれるように感じている。

全身を洗い終えると、早速お風呂に向かった。
高温と低温の2種類の天然黒湯温泉、ジェットバスや電気風呂、水風呂、サウナがある。
自分のこだわりとしてお湯の温度が低い順に入るようにしているので、低音の黒湯へ入ることにした。
独特な黒湯の香りを両手に掬って嗅ぎながら、ゆっくりと浸かっていく。
ぬるま湯に長い時間入る方が血行促進にはいいと聞くが、小さい頃から熱めの湯に入るのが好きなのである。
1分くらい入ると、次はジェットバスに入った。
肩こりや腰痛、背中の痛みに悩まされることが多いので、ここぞとばかりにジェットバスで肩や腰にジェットを当てる。
「癒される〜。」
ついつい心の声が出てしまった。周りも各々楽しんでいるため、私の独り言には特に気にかける人も居ない。
その後は前回と同様に電気風呂に入り、太ももをマッサージしてのんびりと過ごした。

サウナが無料で入れることもあり、入ることにした。あまり長時間は入れないが、体が温まるので限界まで入ることにした。
サウナルームの中には人は居なかった。貸切状態で20分位のんびりと入った。
水風呂には怖くて入れないので、そのまま軽くシャワーを浴びることにした。流行りの整う感覚はイマイチ味わえないが、ゆくゆくは本格的なサウナに挑戦したいと思ってはいる。

やはり最後は高温の黒湯だと決めていたので、最後に入ることにした。好きな物は最後に残すタイプなのだ。
他の湯よりも温度が高いので、一気に体が温まる。今週の疲れが癒されている感覚があった。
「今週の疲れは今週のうちに取る。持ち越さない。」
呪文のように私は心の中で言った。
今週はクレーム対応で理不尽な思いを何度もして辛い日々だった。
私はなかなか人に愚痴ったり、助けを求めるのが苦手だ。だからこそ銭湯に行くことで辛いことを湯で洗い流して、リフレッシュするのである。
今週を振り返ってモヤモヤしてしまったが、温かい湯のお陰でなんだか心まで包まれているような感覚に陥った。これだから銭湯巡りは最高だ。
ふと時計を見ると1時間半近く経過していることに気付き、出ることにした。

お風呂から出て着替えを済ますと、扇風機で体を冷やした。
落ち着いたタイミングで髪を乾かす。
頭の中では、今日食べるご飯をどうしようか迷っていた。
蒲田温泉の2階にある食事処はメニューが豊富なので、今から悩んでいるのだった。その悩む時間も楽しいのである。

身支度を整えると、階段をあがり2階へと向かった。この施設は昭和レトロ感満載で、小旅行に来た気分が味わえる。
座敷に座ると、ここの人気メニューである釜飯とコーラを頼んだ。湯上りには飲み物を買う習慣があるが、今回はすぐにご飯を食べるので飲むのを我慢していた。
サウナにも入ったり、長湯したので無性にコーラを飲みたくなったのだった。

コーラと釜飯がすぐに来ると、瓶のコーラをコップに移した。トクトクトク…とコーラを注ぐ音が心地よくて堪能していた。
「やっぱり炭酸が1番!」と独り言を言いながら口へ運んだ。
瓶のコーラはやはり1番コーラらしい味がするような気がする。
そして、名物である釜飯を食べ始めた。アツアツで火傷しそうだったが、それくらい熱い方が美味しさが増すように感じる。

「お父さん、飲み過ぎ!帰るよ?」
隣の席の家族連れが話をして盛り上がっている。娘らしき女の子が、父親らしき男性の肩を叩いて帰るように促しているようだ。
「まだまだだろ〜なぁ?ハハハハハ!」
父親はベロベロに酔っ払っているが、まだお酒を飲み進めている。
母親と娘は呆れている様子だった。

私はお腹が空いているので、釜飯を無心で食べていると隣の席の父親が話しかけてきた。
「飲んでますかー?歌いませんかー?」
かなり声のボリュームが大きく、片手にはグラスを持っている。
「ねぇ、迷惑でしょ?辞めてよ!」
娘が怒りながら注意しているが、父親は気にしていない様子だった。
「大きな栗の木の下で〜あなたと私〜仲良く遊びましょう〜♪」
何故か童謡を大声で歌っている。
私は無視するわけにも行かないだろうと思い、手拍子をしてあげた。
「ノリが良いね〜!」
父親は喜んでいる様子だったが、家族は冷ややかな目で見ながら男性の肩を持ちあげた。
「ほら、帰るよ!いい加減にして!」
娘は思いの外力持ちで、父親をそのまま玄関へと連れていった。

「ごめんなさいね、騒がしくて。」
母親が私に謝ってきた。私は特に不快には感じていなかった。
「大丈夫ですよ。楽しくて良いですよね。お気をつけて。」
そう言うと、母親は困った顔で会釈して帰って行った。

隣の席の家族が帰ると、他のお客さん達がワイワイ話していることに気付いた。
下町のようなアットホームな雰囲気が楽しくて落ち着く。
残りの釜飯を食べながら、いつかは賑やかな家庭を築いて家族みんなで蒲田温泉へ行きたいと思った。

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