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ビッグイシュー編集部の端っこ席から③

ザラリ……。ここのところ、テレワークで出社日は減。数日ぶりに出社するといつも机の上がザラザラしている。窓際の席。換気のために開けた窓から、いろいろな粒がこの机の上に。拭くと、ティッシュは黄色くなる。黄砂? 近くには交通量の多い高速道路も伸びる。道路を挟んですぐ南側では、あの大きくて立派だった電通関西ビルが解体され、次に建つタワーマンションのための基礎工事がもう1年以上続いている。きっと、いろんなものが舞っているんだろう。騒音も耳の奥にまで響いてくるので、春先にノイズキャンセリング機能が付いたイヤホンを購入。これがびっくりするほどよい仕事をしてくれる(いろんな音がかき消されるのだけど、なぜか同僚Kさんの声だけはノイズキャンセルをかいくぐるのが面白い)。工事現場脇の看板には完成予定が令和6年とある。あと4年、この席には落ち着いて座れなさそうだ。

10月△日  ビッグイシューで新しく販売者になられる方は、まず先輩販売者さんとともに“実地研修”をする。他の仕事と同様、想像していたものと異なるかもしれないし、向き不向きもある。実際に販売を体験してみて気になったこと、考えたこと、困ったことを、同じ立場の販売者さんに気軽に尋ねられる機会でもある。今回、新人Aさんの研修パートナーになったのはBさん。研修が終わって事務所へ戻ってきたBさんは、「Aさんはね、声を出すほうが向いてると思うからそうアドバイスさせてもらったんですよ。Aさん、すごくがんばってた。大変な仕事だけど、続くといいな」と、とても温かい目をしてそう言った。
10月6日  一昨年、ビッグイシューの「ワンダフルライフ」というコーナーで取材させていただいた、東大阪で町工場を営みながら地域の職人さんたちをカメラに収め続けているKさん。そのKさんがボランティアスタッフをされている「ご来光カフェ」へ。毎年、初秋のこの1週間だけ淀屋橋・土佐堀川の向こうから日が昇り、その期間中の早朝だけ臨時の手作りカフェがオープンする。去年に続き今年もKさんのお顔を見に、朝4時15分に起き、4時45分に家を出て、5時の電車に乗った。この日の日の出は朝5時56分。現地には10分前ぐらいに到着。すでにたくさんのお客さんが東を向いてコーヒーを飲んでいる。朝焼けの美しさよ。私も知人Hさんと一緒に、コーヒーを注文し、東を見つめる。昇ってきた、昇ってきた。カフェの始まりの日は、土佐堀川の左端から日が昇り、最終日には右端のビルのふもとから日が昇る。太陽の周りを回っているんだなあ、私たち。Kさんのお元気そうなお顔を見られたのもうれしい。日の出後、しばらくお喋り。その後、Hさんが「寄付に」と託してくださった服と日用品を持って事務所へ。朝7時台。販売者さんたちは仕入れも終わり、それぞれの販売場所へ向かっていく。

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10月〇日  北摂のある駅前で販売しているCさんと久しぶりにお会いしたら、勢いよくこう報告してくださった。「こないだ、ある男性が10冊も買ってくださって。お話をさせていただいたら、その号でインタビューに答えてくださっていた先生でした!」。D先生、お心遣いをありがとうございます。ちなみに、Cさんは元板前。毎号、読者の方へのお手紙を書いていて、そこには季節のレシピも掲載している。ビッグイシューの過去の料理イベントでは、見事な包丁さばきはもちろん、「来た時よりも美しく」とシンクやコンロを綺麗に磨き、調理器具をすべて丁寧に洗って次の人が使いやすいよう定位置に整頓して戻すなど、厨房の片付け時に見せるプロの料理人の仕事に目を奪われた。
10月△日  大阪駅の近くで販売をしているEさんは、さらさらっと言葉や絵を描くのだけど、それが個性的で巧い。この日、事務所でお会いしたEさんはニコニコしながら何やら筆を動かして、その紙をひらりと翻して見せてくれた。おおっ、あまびえではないですか! 疫病退散、疫病退散。頂いた絵をしばらく編集部スペースに貼らせてもらいますね。
10月15日  ビッグイシュー363号発売。表紙はレディオヘッド。スペシャルインタビューは、レディオヘッドのエド・オブライエン。特集は「変われ、スポーツと社会」。リレーインタビューは、ブックデザイナーの祖父江 慎さん。11月の米大統領選について語るオリバー・ストーン監督、映画『わたしは金正男を殺してない』のライアン・ホワイト監督、彫刻家のはしもとみおさんのインタビューも。ウィスット・ポンニミットさん(タムくん)が描く漫画「マムアンちゃん」の連載もあります。ぜひ、全国約110ヵ所の路上に立つ販売者さんにお尋ねいただけるとうれしいです。


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