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ちゃんみな, 小袋成彬, butaji, Lute, Gucci Prince… | 新譜ピックアップ (2021.10)

こんにちは、リホです。

10月にリリースされた楽曲やアルバムから、おすすめ作品をピックアップしてご紹介します。月次で記事を書いているので、過去分も読んでいただけると嬉しいです。

前月分はこちら。

ちゃんみな - ハレンチ

ちゃんみなのサードアルバム『ハレンチ』がリリースされました。

ちゃんみなは今年EP『美人』でもその楽曲と過激な内容が注目されていましたが(過去記事参照)、今回リリースされたアルバムではさらに、その表現力の幅に驚きました。

3曲目「君からの贈り物」や4曲目の表題曲「ハレンチ」はアップテンポなダンスチューン。キャッチーなメロディを上手く乗せる器用さが光ります。意外だったのが9曲目「想像力」で、これは珍しくポエトリーリーディング的なスタイルになっており、自身の過去を語るリリックの内容が真っ直ぐ伝わってくる楽曲です。

全体としては恋愛を謳った楽曲が目立つのですが、その合間にルッキズムやキャンセルカルチャーなど、有名になることと引き換えにちゃんみな自身が戦ってきたものへの反抗、想いなどが感じられます。ただ不満や文句をリリックに込めるというわけではなく、楽曲として一段階進化した形で表現されていました。そんなアーティストとしての姿勢が非常に格好良いなと思うのです。

また、「ハレンチ」という言葉に関して、"日本語であるが外国語のようでもあり、どこから来たかよくわからない感じが自分の過去と共通点を感じる"、といったことをインタビューで話していたのも印象的でした。

小袋成彬 - Strides

小袋成彬のサードアルバム『Strides』がリリースされました。

1曲目「Work」はMVも出ていますが、働くとは、といったところを考えさせられる、結構インパクトのある内容でした。また「Butter」が特に好みで、とても美しい楽曲です。言葉と言葉の間にちょっとした余白を生む歌い方や、他の楽曲もそうですが、日本語と英語を行き来しつつ韻を踏んでいくリリックが非常に心地良かったです。BTSに続き、また最高な「Butter」が生まれてしまった…と思いました。

度々ヒップホップへの関心を示している姿がみられますが、ヒップホップの曲を作る/ラップをするのではなく、自身のスタイルの中でヒップホップの要素を取り込むのが上手いなと思います。

小袋成彬は、作品を出すたびに称賛される一方で、SNS等の発言が度々波紋も呼んでいるアーティストでもあります。ただ、ラジオを聴いているとよくわかるのですが、アーティストでありながら同じくらい政治や社会に対する想いが強く、性格的に政治家的な一面がある人だなとよく感じます。イギリスへの移住についても、そのあたり思うところもあったのでしょう。

今回でいうと「Work」の歌詞に登場する一節に対してある政治家を揶揄した表現がされており、Twitterでは否定的な感想も目立ちましたが(先日の衆院選の結果を受けるとなんとも笑えない状況になってしまいましたが…)、毎回期待以上の音楽を届けてくれる才能には驚かされます。これからも応援したいアーティストです。

butaji - RIGHT TIME

butajiがアルバム『RIGHT TIME』をリリースしました。

今年、徐々にコロナが落ち着いてきて規制が緩和された頃に、久しぶりにいったライブで知り、一気にハマってしまったアーティストです。話題になったドラマ、「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌「Presence」では作曲・作詞でSTUTSと共作したことでも注目されました。

butajiについて調べていくうちに、彼がバイセクシュアルであり、そのことをカミングアウトしているということを知りました。それを踏まえて楽曲を聴くと、ただ男女の恋愛について謳った内容ではなく、もっと広い範囲の人に向けた、背中を押してくれるような優しさを感じます。前述の「Presence」でも、リリースされているアルバムの中にbutaji歌唱バージョンがあるのですが、松たか子が歌うのとは全く歌詞が違って聞こえるのでこちらもおすすめします。

また、アルバムの中でも好きな曲が「acception」なのですが、友人のお子さんが亡くなった際に作った曲だということで、もはや恋愛という観点を超えて死生観や愛という壮大なテーマを感じました。きっと、自身も辛いことや苦しいことが山程あったのだろうなと推察しますが、他者を包み込み、肯定してくれるような想いが楽曲の隅々から感じられて、非常に励まされました。

STUTSとの共作も相性の良さというか二人の人の良さが感じられます。「YOU NEVER KNOW」や「I'm here」に関しては、気分を盛り上げながらもどこか切なくなるようなメロディが印象的です。また、「トーチ」は同日にリリースした折坂悠太のアルバム、『心理』にも同名の曲が含まれており、聴き比べるのも面白いです。


Lute - Gold Mouf

J.Cole率いるDreamvilleに所属するラッパー、Luteがアルバム『Gold Mouf』をリリースしました。スタジオ・アルバムとしては、2017年以来、2枚目のアルバムとのことです。

全体的に、ソウルやR&B、ジャズも彷彿とさせるビート、Luteの語りかけるようなラップと、Dreamvilleの盟友たち含め多数の客演アーティストによるボーカルのバランスが申し分なく、アルバム通して非常に心地良い作品でした。何度も繰り返し聴きたくなるアルバムとは、こういう音楽なのだろうなと思います。

特に、BJ the Chicago Kid参加の6曲目「Changes」はボーカルが際立つ1曲。またWESTSIDE BOOGIE参加の10曲目「Flossin'」は、浮遊感のあるビートと思わず歌いたくなるフックに体が揺れてしまう、好みの楽曲でした。

リリックは必ずしも明るい内容だけでなく、内省的だったり人生の難しさを嘆くような一節も読み取れました。また、YouTubeでは、「Gold Mouf Chronicles」と題されたLuteのライフスタイルに迫る動画が展開されています。彼のキャラクターを知ることができる良いシリーズではないかと思います。

Gucci Prince - HEROES

ヒップホップクルー、Normcore BoyzのメンバーGucci PrinceがEP『HEROES』をリリースしました。

本作は8曲21分というコンパクトな内容でありながら、G-FUNKやドリル、UKガラージといった個人的にも非常に好みな要素が感じられ、バランスの良いアルバムだなという印象がありました。

国内のヒップホップはまだまだトラップをベースとしたラッパーが多いので、"UKガラージは自分の中でしっくり来るって感じですね。"と語る彼は非常に頼もしく思えました。わたしもしっくり来ていますので、もっとUKガラージ調の楽曲が増えると嬉しいです。

そんな、UKガラージの「Bacon Part.Ⅱ」はぜひおすすめしたい楽曲ですが、DABOが参加している「GAP」もオールドスクールなG-FUNKといった曲調でGucci Prince、DABO各々の声質が映える曲です。

その他の注目楽曲 / プレイリスト

その他、10月によく聴いていた曲をまとめています。ダメレコメンバーが再集結したEPの発表や、P-VINEとPPKS9が若手をフックアップしたコンピレーションも良かったです。


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