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腱板機能低下に関係する神経障害

腱板損傷の治療を行うとき、超音波エコーなどの画像上の損傷は軽度でも、思ったより腱板機能訓練の効果が得られないことはないでしょうか?
そんな時は、神経障害が隠れているかもしれません。
筋力を改善するには、筋力訓練が必要です。ただし、筋を支配する神経に障害があれば、効果は得られません。当たり前ではありますが、ここを見逃してしまうことが多いのが現状です。今日はこの問題に関してお話ししていきます。


まず腱板筋(rotator cuff)の確認から。

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋 の4つ

棘上筋、棘下筋は肩甲上神経
小円筋は腋窩神経
肩甲下筋は肩甲下神経
それぞれC5,6支配となります

末梢神経単独での障害が起きれば、障害をうけた神経が支配する筋の機能不全が生じます。

・肩甲上神経(棘上筋、棘下筋)
肩甲上神経は肩甲切痕、棘窩切根で絞扼が起きやすいとされており、主にはガングリオン(腫瘤)の形成が一般的とされています。ただし肩甲骨のアライメント不全による神経の牽引ストレスも大きく関与するため、絞扼による影響を受けやすい神経だと考えられます。
肩甲切痕による絞扼では、棘上筋、棘下筋ともに麻痺が生じる
棘窩切痕による絞扼では、棘下筋のみ麻痺が生じる
同部触診での圧痛を見ることで神経感受性の評価になります。その際は、筋腹ではなく、神経部分での触診し、左右を比較しましょう。

・腋窩神経(小円筋)
腋窩神経はQuadri lateral space(QLS):上腕骨・上腕三頭筋・小円筋・大円筋で囲まれた部位で絞扼されやすく、障害されると小円筋と三角筋の筋力低下をきたします。また肩外側の感覚支配があるため、同部の感覚鈍麻を見ることで評価が可能です。

肩甲下神経単独での絞扼はあまり報告されていないので今回は省略します

次にもっと近位での障害、頸椎由来の可能性も視野にいれる必要があります。今まで述べた末梢神経は全てC5,6領域になります。それぞれ単独の神経領域の機能低下だけでなく、複合的に機能低下を起こしている場合、C5,6神経根での障害の可能性があります。

特に腱板筋だけでなく、肘屈曲(二頭筋)や手関節背屈(前腕伸筋群)などの低下もあれば、可能性が高まります。 
さらにその場合、肩周囲だけでなく上腕、前腕に広がる感覚障害、また反射の減弱もみられる可能性があります。

神経を評価する際は 筋力、感覚、反射をセットで見るようにしましょう

最後に、
絞扼がおきた部位によってアプローチ方法が変わってきます。
腕神経叢の図を思い出してみて、実際どこで絞扼が起きているかをしっかり仮説を立てて治療を行うと面白いです。神経障害が原因であれば、残念ながら筋へのアプローチだけでは満足した効果が得られません。絞扼による神経障害をしっかり理解しておくことが大事ですね。
以上、少しでもご参考になればと思います。
ありがとうございました。コメントお待ちしています。


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